1/72 Mini-Car Collection-2


 前回、ホンウェルの1/72スケール・ミニカーについてちょっと書いてから、2年の月日が流れました。

 その2年間に、1/72スケールミニカーをめぐる状況はずいぶん変わりました。当時1/72スケールを開発していたのはホンウェル一社だけでしたが、その後、同じ中国のリアルトイとヤトミンの二社が参入し、新製品開発は驚くほど加速化しました。

 ホンウェルが最初このスケールのミニカーを開発し始めたときには、技術力もまだそれほどではなく、1/72で本当に行くのかどうかもやや曖昧のようでした。初期作品のベンツCクラスはダイキャストの肉厚も厚く、全体的に明らかに大きめで、一クラス上の1/64スケールといっても通用しそうでした。実際、このベンツCクラスを含むホンウェル黎明期の作品(ポルシェ928など)は、発売当初スケール表示もなされておらず、かなりおもちゃ的な売られ方をしていたようです。

(左端が最初期のCクラス。一番小さいはずなのに、すぐ右のSクラスやCLKなどよりも明らかに一回り以上大きい^^;)

 だいたいミニカーのスケールは、1/18や1/43、1/64など独自のものが多く、他の模型、たとえば航空機やAFVと共通するようなものがほとんどありませんでした。そんなところに1/72という航空機標準のスケールを持ち込んだわけですから、外野がいろいろうるさかったことは想像に難くありません。

 実際、今でもミニカー専門のコレクターのページでは、1/64ならよかったのに、とか、どうして1/87にしなかったのか、とかいうブーイングがときどき聞こえてきます。ホンウェルが1/72で行こう、と決めてからも、いろいろ紆余曲折があったことでしょう。

 ←の写真では、上から1/43のシトロエンDS19、その下が1/64のバック・トゥ・ザ・フューチャー・デロリアン。その下の二台が1/72の新型ミニクーパー(左)とBMW Z8(右)、一番下が1/87のトラバント(左)とシトロエン2CV(右)です。

 1/43は言うまでもありませんが、1/64もアメリカなどではHot WheelやJhonny Lightningシリーズなど、小スケールのミニカーでは一般的なスケールです。また、1/87はもともとHOゲージの鉄道模型のスケールで、その情景用ストラクチャとして開発されたようです。

 そんななかで、これまでなかった1/72スケールでのミニカー開発を始めたわけですから、当初はさまざまな試行錯誤があったようです。メルセデスベンツCクラスのあやふやなスケールも、その辺に端を発しているのでしょう。

 しかし、第二世代のベンツEクラスやBMW325iツーリングワゴンになると、すでにスケールも正確になっており、ダイキャストの肉厚もぐっと薄く、このスケールにふさわしいものになりました。このあたりでホンウェルの姿勢ははっきりしてきたようです。

 その次のベンツAクラスあたりになると、ヘッドライトにクリアパーツを使ったり、ホイールが専用のものになったりして、シリーズのスタイルが明確になってきます。

 驚異的だったのはやはりその価格設定で、1/43スケールのミニカーが中国生産によって2.000円台まで下がってきたとは言うものの、それとは一桁違う、わずか170円から250円というお値段には、あっけにとられたファンも多かったようです。

 ヨーロッパのOEM先シュコー社の影響力のせいか、ホンウェルの作るモデルはすべてがヨーロッパ車(そのほとんどがドイツ車)で、日本車の姿はまったく皆無でしたが、No.26のトヨタRAV4からしばらくトヨタ車が連続しました。これには、同じころ日本のフルタ製菓がはじめた「アールタイプカーチョコ」の影響が大きかったのかもしれません。

 また、この時期の製品から、ドアの窓ガラスが半開き状態だったモールドを改め、全閉もしくは全開となりました。

(トヨタRAV4とランドクルーザー.ようやく出た日本車)

(三菱パジェロとトヨタハリアー。こちらの出来もなかなか)

 しばらくの間このスケールでは、ホンウェルの製品が唯一のものでしたが、2002年になるとやはり中国の玩具メーカー、リアルトイ社が参入します。ホンウェルが主にヨーロッパを市場としているのに比べ、リアルトイは日本のおもちゃメーカーや模型メーカーと提携し、日本市場向けの製品を展開しました。昨年からカプセルトイ市場に登場したエポック社の「カプセルエムテック」シリーズや、模型メーカーヨーデルの「ダイキャストリアルモデルシリーズ」「ダイキャストリアル・Xモデルシリーズ」はいずれもリアルトイ社の製品です。ホンウェルのシリーズを意識したと思われる1/72スケールのミニカーで、その出来はほとんどホンウェルに迫る高品質です。ホンウェルとの一番の違いは、何しろ日本市場向けなので、日本車がその過半数を占めている、ということです。ホンウェルに対する唯一の不満は日本車が少ない、ということでしたので、リアルトイのこの方針は歓迎されました。

 まず、カプセルエムテックシリーズから数点。ごらんのように、いずれもホンウェルと見分けがつかないほど繊細なモールドで、全体形のデッサンもなかなかよく、値段もひとつ200円と、十分ホンウェルに対抗できる価格設定でした。

 問題はなにしろガチャなので、思い通りのアイテムがなかなか出てこず、全部をそろえるのにけっこうなお金がかかってしまう、ということでしょうか。とは言っても1/43で同じ数のミニカーを集めることを考えれば、遥かに安く上がるのですが。

 このシリーズは第5弾までがガチャポン専用として、また、それとは別にセブンイレブン限定のガチャボックスという店頭販売形式(もちろんブラインド^^;)で第2弾まで出ています。

 ←ガチャにはお約束のシークレット。奥は第3弾のシークレット、個人タクシー。手前は第4弾のシークレット、クラウンパトカーです。

 実はいずれも省力化のためか、実物といくぶん違った塗装になっていたので、手を加えてあります。まず、個人タクシーのボディの帯は青一色ではなく、上下に細く赤い線が入っているので、赤のベタデカールを極細に切って追加してあります。

 一方のパトカーは、塗装マスクに白いクラウンのものを流用したらしく、黒い部分の塗り分け線が全然違っていたので、プラモデル用のカラーでレタッチしてあります。僕はもともとモデラーなので、こうした作業は得意中の得意だったりします^^;

 一方こちらは模型メーカーヨーデルの「ダイキャスト・リアルモデルシリーズ」および「ダイキャスト・リアルXモデルシリーズ」のミニカー(→)

 なにしろ同じ金型を使っているので、仕上がりは上のカプセルエムテックとほぼ同じなのですが、Newワーゲンのように、リアウインドウに熱線のプリントが入ったり、ラリー仕様車のような複雑なボディカラーの車が増えるなど、細かいところで差別化を図っているようです。カプセルエムテックと違って一個ずつきれいなアクリルケースに入っているためか、お値段はやや高めの一個250円に設定されています。

 リアルトイが参入したころ、ホンウェルからは第三期とも呼べる新製品群がリリースされましたが、以前に比べて車種選択がかなり幅広くなり、その出来も、製品によってはドアの内張りまで再現されるなど、いっそう精密になってきます。また、VWビートルやVWバンなど以前製品化したものを、新金型で再び製品化する、という動きも目立ちます。ビートルは、旧金型製品もけして悪い出来ではなかったのですが、新金型のものはあらゆる点で旧作を凌駕するすばらしいモデルになりました。

(いすヾビークロス。1/72とは思えないディテール)

(新シリーズのキャラバン付きミニ。こちらもディテールがすごい)

(左が旧金型、右が新金型のVWビートル。ぐっと繊細になった)

(左が旧金型、右が新金型のVWバン。天窓が透明化された)

 こちらはやはり2003年の新製品、ミニクーパーレーシング(とパッケージには書いてありますが、これはラリーカーですよね)12種類。

 全長4センチちょっとのミニモデルですが、目を見張るようなタンポ印刷技術により、ボディに貼られたステッカーなどを完璧に再現しています。これくらい小さくなると、デカールではニスの厚みが目立ってしまうものですが、塗装面に直接印刷するタンポ印刷では、もともとニスに相当するフィルムがないので、とても自然に見えます。

 これくらいのスケールになると、プラモデルよりもむしろミニカーの方が精密感のある仕上がりになるようです。

(左から、スカニア・パネルトラック、スカニア・セメントミキサー、メルセデスベンツ自動車運搬車とメルセデスベンツSクラス)

 また、同じころ1/72のトラック(トランスポート・ビークル)シリーズも始まりました。運転席のあるキャブ部分がダイキャスト製で、シャシーやその他のパーツ、タイヤなどはプラ製ですが、ごらんのようにかなりの精度を持っています。車体裏もそこそこモールドされており、ドライブシャフトなどしっかり再現されています。日本では、これらは今のところ単体で販売されているのは見たことがありませんが、モリガングという輸入業者が上の写真の四台すべてをひとつにパッケージングして販売しています。その定価が何と1.380円という安さ!! さらに、トイザらスでは999円というびっくり価格が付けられておりました。一台平均でほぼ250円という、出来からは考えられないお値段です。

(メルセデスベンツ・アクトロス消防車とメルセデスベンツ・アクトロスはしご車)

 上はトランスポート・ビークルと同時に発売されたエマージェンシー・ビークル・セットです。これ以外に警視庁のパトカー(なぜかBMW-M3^^;)消防庁の消防指揮車(メルセデス・ビト)そして救急車(これもビト)の5台セットで定価1.580円、トイザらス価格ではこれもやはり999円でした。一台あたりほぼ200円ということになります。

 パトカーや救急車はあまりにも現実離れしているので(メルセデスの救急車は実在しますが、ビトではありません)ここには載せませんでしたが、実は上の二台もよく見るとメルセデス製であり、たぶん日本では使われていないと思います。それでもここで取り上げたのは、何よりその模型としての出来の良さをお見せしたかったからです。写真を見ればお判りの通り、詳細な塗りはとてもこれが200円クラスの商品とは思えません。

 レスキュー車は、後部二枚のシャッターが開いた状態でモールドされており、内部の備品や引出しなどがきれいに塗り分けられています。これが機械によるものなのか、手作業なのかは判りませんが、もし手作業だとしたら、大変な技術の持ち主だと思います。先日、偶然にも本物のレスキュー車の横を通りかかったのですが、消火用ノズルの位置や、屋根の上に乗った梯子、開いたシャッターの中の引出しの色など、かなり忠実に再現していたのが判りました。もちろんキャブ部分はメルセデスではなく、日野製でしたが。

 一方のはしご車は、←の写真を見ればお判りの通り、実物同様に梯子が伸ばせます。また、角度も基部の巧みな設計により確実に決まります。なにしろ、伸ばすと全長30センチにもなる梯子をきっちり保持してしまうのですから、見事なものです。このあたりの構造はもちろん本物とは異なりますが、雰囲気という点では最高です。

 ドイツではこれら以外にも、ゴミ収集車やタンカーも出ているようですので、いずれは手に入れたいと思います(その後、ゴミ収集車は入手できたので、ここに載せておきました)

 そして←が、ドイツのシュコー社を通じて発売されているホンウェルの最新作、BMW Z8です。

 とにかくディテールの再現度が尋常でなく凄い。手前の百円玉がまるで特殊撮影みたいですが、もちろんそんな技術はありません^^;

 これまでの製品では、コクピット内部は成型色のままでしたが、今回から詳細に塗り分けられ、特にシートの塗り分けは見事のひとことです。メーターパネルなどもきれいに塗り分けられています。

 ドイツ経由で輸入されているためか、従来のホンウェル製品より少しお高めですが、それでもわずか380円です^^;

(フロントグリルはさすがに印刷^^;)

(メーターパネルの塗り分けが・・)

(この角度からも格好いいです)

 2003年夏、第三のメーカー、香港のヤトミン社が1/72スケールカーモデルの市場に加わりました。現段階ではまだ第一期の数点が発売されただけですが、ものによってはリアルトイ社製品をもしのぐ品質を見せており、将来が期待できそうなメーカーです。ただ、製品供給がやや不安定なのが残念です。

(ヤトミンのカーモデル。あまり評価の高くなかったメーカーらしいが、1/72シリーズに限ってはホンウェルに迫る素晴らしい出来)

(VWのスーパーカーW12.エンジンルームまで再現している)

(1/72スケール初のイタ車。アルファ156シリーズと147)

 番外編として、カプセルトイとしてガチャポン販売機で売られているユージンの「頭文字D」シリーズをご紹介します。日本が舞台のマンガだけに、登場する車もすべて日本の大衆車で、ホンウェルなどの製品とはほとんどバッティングしていません。スプリンター・トレノ(右端)やトヨタ・アルテッツァ(左から2台目)みたいな地味な車は、こんなことでもないかぎりモデル化されそうもありませんから、そういう意味では貴重なシリーズです。

(一応ちゃんと1/72スケールを守っているため、左端のカプチーノは情けないほど小さくなってしまった。残念ながら出来もチープ^^;)

 ただ、ミニカーメーカの作った製品がすべてダイキャスト製なのに比べ、こちらはボディがPVC(ポリ塩化ビニル)で作られており、第6弾はシャシーがダイキャスト製だったので、それなりの重みがあったのですが、第7弾ではボディ/シャシーともにPVC製になり、非常に軽くなってしまいました。加えて、事後変形と見られるボディのゆがみも目立ち、ホイールの作りもおざなりで、残念ながらあまり高品質とはいえません。同価格帯の「カプセルエムテック」と比べて、明らかに数段落ちる出来です。ただし、透明PVC樹脂でウインドウごと一体成型しているので、ピラーなどはかなり細く再現でき、また、当然ながら透明パーツとのすき間も皆無です。

 一方こちらはタイムスリップ・グリコ第1弾と第3弾のクルマたち、スバル360初期型とトヨタS800。

 スバルの方は、フェンダーにかなり目立つパーティングラインがあったので、一度塗装をはがして削り落としたあと、あらためてベージュやブルーグレーといったオリジナルの塗装に近い色に塗り直しました。レモンイエローは純正か否か判りませんが、僕の住んでいる町を走り回っている黄色いスバルがいるので、近い色に塗ってみたものです。もっとも、その車は初期型ではありませんでしたが。

 トヨタS800の方はなにもせず、手に入れたままの状態です。透明な成型色の上にそのまま塗装してあるため、やや透けてしまったのが残念です。

 さて、以上が1/72カーモデルの現状ですが、このスケールの将来についてちょっと考えてみます。

 今の1/72カーモデルに不足しているのは、やはり歴史だと思います。まあ、始まって間もないスケールですからある程度は仕方がないと思いますが、過去の名車シリーズみたいなものも始めて欲しいものです。「頭文字D」のユージンが「ノスタルジックカー列伝」というシリーズを始めるそうなので、期待しています。予価300円ということなので、よもや「頭文字D」みたいなPVCボディにはならないと思いますが・・・。

 それから、どういうわけかスポーツカー、というよりはエキゾチックカーが圧倒的に不足しています。いわゆるスーパーカーらしい車種といったら、ポルシェ911GT2くらいのものです。ランボルギーニもフェラーリもないスケールなんて、やっぱり寂しいですよね。フェラーリに関しては、マテル社が版権を所有しているのでいろいろ難しいのでしょうが、頑張って欲しいものです。個人的には、VW W12で素晴らしい技術を見せてくれたヤトミンにスーパーカーを手がけて欲しいですね。

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