反面教師


PART I 傲慢と嘲笑

 ネットを見渡していると、ときどき「こいつ馬鹿なんじゃなかろうか?」と思われるサイトに遭遇する。たいていの場合、一笑に付すだけで終るのだが、それが目に余ると感じた時、「それは違うんじゃないの?」という意味を込めて反論ページを作っている。それが、「ある世界観」シリーズや、バイブルバプテストへの反論ページなのだが、そういうページを書くときいちばん気にかけているのは、相手に対してどのレベルなら非礼にならないか、という「限度」である。

 もともと相手は馬鹿なことを書いているのだから、それを正そうとすれば馬鹿ポイント(笑)を指摘せざるを得ず、その過程において多かれ少なかれ相手の名誉を汚す可能性はある。しかし、極端に愚かなオピニオンに対してポーカーフェイスを気取るのはかえって不自然だし、程度問題ではあるが、一定の節度を守りつつ、相手を嗤うのも仕方ないことだろう。愚かなことを「愚かしい」と読者に納得させるためのテクニックとして、嗤うことは有効な武器になるのだ。

 しかし、その匙加減はけっこう難しい。文章の感じ方は人それぞれであり、ある人には気の効いた表現でも、別の人には不快に感じられることもある。事実関係だけをお役所仕事のように淡々と綴れば、読者に曲解される恐れはかなり減少するだろうが、誰がそんな文章を読みたがるか、という別の問題も生じる。正直、万人に誤解されない表現だが、箸にも棒にもかからないつまらないものよりも、一部の人の不興を買おうが、多くの人に支持される「面白い」表現の方が価値があると思っているので、ある程度感情に訴える表現をこれからも控えるつもりはない。

 個人的には、いちばん肝心なのは肴にした相手への敬意なのだろうと思う。たとえどんなにアホらしい主張であろうとも、その人の尊厳を侵すレベルにまで自分を貶めてはならないと思うのだ。そうした気持ちが読者に伝われば、表面上はどれほど罵倒しようとも、非礼とまでは映らないのではないだろうか。

 さて、下の文章は、僕がとあるSNSで日記としてアップしたものである。

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直線的な温暖化説はプロパガンダ

 よく、この調子で温暖化が続いたら地球は、などという言説が未だに叫ばれていますが、ちょっと地質学をかじった人間から見れば、そんなのはナンセンス。単なる政治的発言に過ぎないことは明白です。

 人類史の中でも小氷河期は何度も訪れていますし、その原因が太陽活動に求められることも常識。詳しくは↓で^^;

 http://movie.geocities.jp/tom_kasa55/column217.html

 怖いのは、人類の経済活動全般がこの仮設を前提として組まれてしまっていることで、温暖化のメッキが剥げてしまったときの影響は計り知れません。

 http://movie.geocities.jp/tom_kasa55/column218.html

 人類が次に訪れる小氷河期を無事乗り越えられるか否か、このことの方が架空の「温暖化」防止より遥かに大問題だと思うのですが、今の各国首脳たちの近視眼的発想には、残念ながらそれに対する処方箋の糸口すら見つけることはかなわないようです。

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 たまたま温暖化関連のニュースがアップされたので、以前から考えていた地球温暖化に対する疑問を、かいつまんで書いた日記である。

 さて、問題の人物もこのコメント欄に登場してくる。彼の最初のカキコは以下の通り。武士の情けで(笑)とりあえずハンドルネームは仮名とさせていただいた。

 T(Y)2011年09月02日 10:38

 ミランコビッチ周期だと,今が寒冷化するはずなのに暖かいから,人間活動のせいで,温暖化してるっていう仮説になるのかと。

 無理矢理政治にからめたがるのはナンセンス。

 ・・・ミランコビッチ周期とは、地球の公転軌道の離心率の周期的変化、自転軸の傾きの周期的変化、自転軸の歳差運動によって日射量の変動を説明する理論で、いくつかの周期が認められ、定期的に訪れる氷河期の周期を合理的に説明する理論として広く知られている。しかしその周期はいずれも数万年であり、最後の氷河期が終ってわずか一万年しか経っていない現在、この理論で再び氷河期の襲来が予言されているという話は聞いたことがない。念のため、いくつかの用語を組み合わせてググッてみたが、やはりそんな説はまったくヒットせず、少なくとも本格的な氷河期の再来はこの理論では予言されていなかった。

 次に気になったのは、いわゆる小氷期(小氷河期)について。ミランコビッチ周期は数万年周期の本格的な氷河期についてのものではあるが、それより小規模な、平均気温にして1℃ほど低下する期間が数十年も続く小氷期についても、軌道離心率や歳差運動から説明することができるのか、と思っていろいろ調べてみた。しかしこちらについてもそのような説は見つけることができず、結局コメントを寄せたT(Y)君の思い違いであろうと判断した。

 二行目については、この時点ではさして気にも留めなかったのだが、後半になって実はこれこそが、彼のもっとも強調したい点だったことが明らかになってくる。

 T(Y)2011年09月02日 20:10

 > TOMさん

 ソースは(笑)?
 陰謀論はおやめなさいな〜

 ・・・この時点で、彼がこの議論について素人であることが確定^^;

 およそ温暖化論議に関係したことのある人間で、上記のことに関しソースは(笑)?と聞いてくること自体、無知であることを表明しているようなものだ。なぜなら、日記にしろリンク先のコラムの内容にしろ、温暖化に関して一家言ある人間なら、知らないはずはないネタばかりだからである。当たり前の話だが、僕は当コラムを書くとき、すべてデータ類の裏を取っている。いちいちソースを記入しないのはこれが論文ではなく、基本的に「軽いコラム」を目指しているからだ。Wikiみたいに末尾に長々と参照リストを掲載しても煩わしいだけだし、どうせ誰も読まない。いたずらにサーバー容量を浪費するだけのことである。リンクもできるだけ張っていない。どうせ一年も経てばリンク切れになってしまって、使い物にならないからね。

 T(Y)君には、よほどミランコビッチ周期に関する初歩的ミスにツッコミ入れてやろうかと思ったけど、ここで逃げられちゃせっかくの人材がもったいないので、じっとこらえた。もちろん、地球温暖化に疑問を表明することなど陰謀論でも何でもないことはいうまでもない。現実にたくさんの高名な科学者が反論を展開している。たとえば、オーロラの研究では第一人者のアラスカ大学国際北極圏研究センター所長、赤祖父俊一氏の「温暖化防止で世界のリーダーシップは取れない」など(あっ、つい外部リンク張っちゃった^^;)

 T(Y)2011年09月02日 22:12

 > TOMさん

 基本的には日射量が地球環境を支配してるが,二酸化炭素を含めた温室効果ガスが気候に影響している.地質学やるならお分かりでしょう(苦笑)?陸上の化学風化と二酸化炭素の関係とか言っても分からないんだろうな〜

 てか,あなたは気候について専門家ではないんだから,イメージだけのソースもない陰謀論に走るのは良くないですよ〜

 ・・・これは、こちらの意見に対する返事。いきなりイメージだけのソースもない陰謀論などと断定しているところを見ると、T(Y)君、ソースについて自分で調べてみるという発想を、まったく持ち合わせていない人物らしい(ちょっとググってみれば、簡単に見つかるレベルのソースである)ふつう、どんなに馬鹿らしく見える意見でも、反論するからにはいちおう調べてみるのが科学者としての態度だと思うのだが。てゆーか、論争の最中に問題のネタを一度もググらずに勝てると思っているとしたら、思い上がりのレベルを超えて単なる馬鹿である。世の中、そんなに甘くないよ。

 T(Y)2011年09月02日 23:27

 > TOMさん

 全然違いますよ(苦笑)
 二酸化炭素の気候への影響を語るなら,バーナーのGEOCURBくらい知っててください.それも知らないで正しいとか正しくないとか論じることは出来ないしね.

 あなたの弱いおつむで考えたイメージ論には辟易です.

 ・・・全然違いますよ(苦笑)というのは、その前に僕が陸上の化学風化と二酸化炭素の関係に関して書き込んだ「二酸化炭素を介した地球上の有機炭素や無機炭素の循環のことなんだろうけど、ごく大雑把に言えば、地球史は空気中の二酸化炭素の定着の歴史である、と解釈しちゃいけないんでしょうかね? 」という文章への評価。全然違うも何も、こちらはある人が同じような質問を専門家にして得た回答を参照して書いてるんだけどね。いわば否定しようのない模範解答なんだけど、どうもT(Y)君、自分が予測していたのと違う答を出されると、途端に理解できなくなるタイプらしい。ちなみに「地球史は空気中の二酸化炭素の定着の歴史である」という言葉自体、GEOCARB III (いちいちツッコミ入れるのも面倒だが、GEOCURBではなくGEOCARBが正しい綴り。なにしろCARBはcarbonの略なんだから。自分で基本と言っておきながらその意味もわかっておらず、まともに綴ることすらできないって、いったいどんな専門家?)を見て書いたんだけど(てゆーか、あのグラフ見てなきゃ書けないでしょ、こんなこと)これだけツッコミどころが多いと、わざとやってるんじゃないかと勘ぐりたくすらなる。

 ところで、弱いおつむという表現はさすがに釘を刺さないといけない、と思ったので、調子に乗ってると訴訟もあり得る、と匂わせたところ、すぐさまレスでぷっ(笑)などと余裕をかましていたが、その後こうした表現がまったく姿を消したところを見ると、T(Y)君、内心ではけっこうビビッていたらしい。いい加減でアク禁にしてくれないか、と思っていたんだろうけど、そうは問屋が卸さないんだな(^_^)

 T(Y)2011年09月02日 23:53

 > TOMさん

 ゲオカーブ(笑)
 発音はジオカーブですよ.長期的な炭素循環モデルとしては,むしろ定説です.今はGEOCURBは三世代くらいまで出てて,単純な炭素循環だけじゃなくて,硫黄循環まで考えてます.

 結局,あなたはこういう基本も分かってないのに,温暖化懐疑説を言ってますが,無知をさらしてるだけですね(苦笑)めちゃめちゃ耳学問な素人過ぎて恥ずかしいっスよ(笑)

 ・・・僕は基本的に縦書き文化の中で育った人間なので、文中にそのまま英単語を挟むことを好ましく思わない。そこで、GEOCARBをゲオカーブと日本語表記に置換えたら、さっそくこのツッコミ^^; もちろんジオカーブでも間違いではないのだが、この当時ジオカーブでググっても1件もヒットしなかった(現在は1件だけヒットする)ので、恐竜関係の図書「恐竜はなぜ鳥に進化したのか」(ピーター・ウォード著 文芸春秋刊)で採用されていた「ゲオカーブ」を使っただけの話(GEOをドイツ語読みするとゲオになる。たとえば、ゲオポリティクスなど)鬼の首でもとったような勝ち誇り方だが、同じ場所でまたもGEOCURB\(@o@)/ 一度だけならタイプミスとも考えられるけど(AとUのキーの位置からして、難しいと思うけどね)二度続けば確定だ。まさにぶっ(笑)である^^;

 T(Y)2011年09月03日 08:46

 持論(笑)持論っていうのはTOMさんですねw
 僕のは国際会議等でコンセンサスが得られていることを述べているだけ.

 TOMさんは専門の研究もされていないただの一般人.
 聞くに値しないのはどちらですかね(苦笑)

 反論できないのとモラルとか言い出すのは,議論もできない馬鹿の言うことです

 ・・・とうとう本音が出ました。国際会議等でコンセンサスが得られているのひとことが最重要ポイント。要するに自分はあっち(IPCC)の側に属している「専門家」だということこそ、T(Y)君にとって一番肝心だったのね。ミランコビッチ周期もろくに理解しておらず、陸上の化学風化と二酸化炭素の関係の模範解答にダメ出しし、GEOCARBの綴りすらマトモに書けない人間が「専門家」を語るとは。あ、この場合「騙る」と書くべきか^^;

 その正体は、覚えたばかりの専門用語を、よく理解もできずやたら使いたがる初級レベルのオタクらしいが、経歴を見るといろいろ輝かしいことが書かれていてビックリ\(@o@)/ まあ間違いなくウソだろうが、万が一本当だとしたら、日本のアカデミズムに先はなさそうだorz。

 WR2011年09月03日 08:53

 高学歴で古気候の研究者と、一般人では、話合わなくてしょうがなくない?オレもそういうことあるし。

 例えば、うがい薬を使わないうがいの方が効果あるんでしょ?って言われてビックリした。
 学術論文は確かに存在するんだが、統計がおかしかったりして、とてもじゃないけど信じられない。当然コンセンサスも得られていない。そういうのって一般人には分からなんですよ。

 >>T(Y)さん

 ウェブサイト拝見しました。面白い研究なさってますね。
 お馬鹿な陰謀論者やアカデミックに触れたことない人を相手にするのは大変でしょうが、頑張ってください。お若いのに業績もいっぱいあるし、ぜひ頑張ってくださいね!

 ・・・ここで登場、謎の人物WR君。これまでの流れでT(Y)君に賛同する人物が現れるとは正直驚いた。しかし、いろいろ調べていくとこの人物、どうやらT(Y)君の一人二役らしいことがわかった。自分で自分を褒めそやす姿はかなり痛い、てゆーか痛々しいね(;o;) 確かこのSNSでは、二重アカウントは禁止されていたはずなのだが・・・このあともふたり?の掛け合い漫才が延々続く(^_^)

 T(Y)2011年09月04日 22:45

 > WRさん

 まぁ世間では相手にされない一般人だからね.
 こういうとこでしか,いきがれないのだよ(笑)

 WR2011年09月04日 22:50

 > T(Y)さん

 ネットってそういう人多いですもんねw
 医師とか叩くやつもたいてい現実世界だとパンピーの負け組っていうw

 T(Y)2011年09月04日 22:57

 > WRさん

 分かります(笑)
 名前残せないパンピーって嫌いなんですよね〜

 WR2011年09月04日 22:58

 > T(Y)さん

 そこまでは言わないがw
 ネット弁慶って恥ずかしいですよねw

 T(Y)2011年09月04日 23:00

 > WRさん

 だって生きてる価値無いじゃないですか(笑)

 WR2011年09月05日 01:03

 笠原俊夫さん、やっぱりぜんぜん専門家でもないただの妄想人でしたねw
 ネット弁慶もここまで来るとひどいもんです。

 ・・・一介の研究者が「勝ち組」(ここではそうは書いていないけど、一般人をパンピーの負け組と書いている以上、研究者を「勝ち組」と思ってることは確実だろう。T(Y)君、「研究者」という存在にそうとう憧れを抱いていることは確かなようだ)とは恐れ入った。仕事柄、僕も大勢の「勝ち組」といっていい人たちを存じ上げているが、ただの一人として自分を「勝ち組」などと言っている馬鹿はいなかったし、そんなことは考えてもいないだろう。この独り芝居がまさにT(Y)君自らの弱いおつむで考えた「勝ち組」エリートのイメージなんだろうけど、もうちょっと説得力のある表現ができなかったのかな。これじゃショートコントだよ(笑)

 WR君=T(Y)君、最後っぺのつもりか、ラストに僕の本名を書いて来たが、本名を知られてこちらがビビるとでも思ったのかな。残念ながら、僕はずっと昔から本名で仕事をしてきたので、全然困らないんだけど。このサイトにもちゃんと本名を記しているしね。SNSで僕のページを見ればここへのリンクが張ってあり、僕の名前もおおかたここから仕入れたのだろうが、そんな努力をする暇があるのなら、もう少し真剣に僕の日記のソースでも捜せば、これほどの恥をかかずに済んだかもしれなかったのに。もちろん、こっちもT(Y)君=WR君の本名は掴んでいるのだが、敢えて公開はしない。それが目的のコラムでもないし。

 それにしてもネット弁慶とは面白い表現だ。T(Y)君も、実生活ではまさかこれほど酷い言動をしているとは思えないから、まさに彼の方こそこの称号にふさわしいだろうね。トンデモな方が他人を批判しようとして、結果的に自己批判になっちゃってる例は以前にもあったが、まさに歴史は繰り返す?(笑)

 このあと、さすがに新しいネタも尽きたようなので(てゆーか、地球温暖化についてのまともな話は結局ひとことも無しだった^^; もしホンモノの古気候学者だったら、中世ローマ帝国時代の温暖期や17世紀頃の小氷期、そしてそれらを完全無視して描かれたマイケル・マンのホッケースティック曲線についても、ぜひお伺いしたかったところなんだけど、専門家ぶった数々のお言葉も全部メッキが剥げちゃったし、ホントこの人、わざわざ恥をかくために出てきたとしか思えないねww)証拠保全のためお望み通りアクセス禁止にしたあと、今こうして肴にしているわけである。

 しかし、T(Y)君の自分自身の知識量への絶対的自信と、その裏返しとしか見えない相手を見下した態度は、別の意味でちょっぴり冷や汗ものであったのも確かだ。他のコラムで自分が書き散らしたことも、他人から見たらこう見えていたのかもしれないと思うと、背筋が寒くなったものである。まあ、内心はどうでも、表面的にここまで礼を失った表現はしていないつもりではあるが^^;

 つらつら思うに、T(Y)君が僕に抱いていた感情と、「ある世界観」に登場していただいたT氏、およびA氏、それから例のバイブルバプテストの牧師さんに対して僕が抱いていた感情とは、やはりどこかの部分で共通すると思う。それは「誤った考え方」に対する気持ちとしては自然なものだろうと思うが、それを生のまま出してしまうようでは、人間として練れていないことを自ら告白するようなものだ。

 上記T(Y)君はいささか極端な例ではあるが、ああいう気持ちは間違いなく自分の中にもある、ということをしっかり肝に銘じておくためにも、貴重な反面教師であった。


PART2 熟慮は足りているか

 PART1のT(Y)君にも言えることであるが、あるジャンルの専門家を自認する人間が陥りやすいのが「専門馬鹿」と呼ばれる状態だ。「ある一定の事柄に対してのみ異常な興味と執着心と知識を持っているが、他の事に関してはからっきし無知、無関心な人のこと」と定義されるが、PART1の日記のタイトルに使わせていただいた「直線的な温暖化説」、つまり、今世紀末まで上昇する二酸化炭素濃度と温暖化の関連を示すグラフを作ったIPCCの御用学者など、その典型であろう。

 ↓は、上の日記に対して温暖化を肯定していると思われる方からのコメントである。例によってハンドルネームは仮名とさせていただいた。

 通りすがりA 2011年09月02日 11:30

(直線的なグラフを描いて)温暖化を主張してるのは、ちょっと地質学をかじったどころじゃない学者なわけだが…

 ・・・だからこそ怖いのである。僕の言っている「ちょっと地質学をかじった」とは、二番目のリンク先で触れられている石油の枯渇年数のことである。そもそも、現在の「温暖化」が二酸化炭素のせいかどうかも怪しいものだが、百歩譲って温暖化の元凶が二酸化炭素だとしても、化石燃料の可採年数を考慮すれば、このようなグラフは成立し得ない。現在考えられている石油の枯渇年数は平均値にしてせいぜい70年ほど(2000年当時の分析より計算)根拠となる数字にはその立脚した理論により多少のぱらつきがあるが、もっとも楽観的なものでさえ、今世紀半ば以降、生産量の急激な低下を予測している(ソースはこちらなど)。

 要するに、温暖化論議があろうとなかろうと、これまでのように石油を湯水のごとく浪費することは、やりたくても不可能になるのだ。同じ化石燃料である石炭や天然ガスがそのすべてを代替する、なんてことは不可能だし、こちらの資源量もいうまでもなく有限である(天然ガスの可採年数は石油と大差なく、石炭はそれより多いものの、今後産出量を数倍に伸ばして石油や天然ガスの分まで代替するのは難しい)燃やすものがなくなれば、どのみち二酸化炭素の排出量は低下せざるを得ない。21世紀末まで直線的に温暖化が進むなどということは、どう考えてもありえないのである。

 すなわち、少なくとも今世紀後半に関するこのグラフの示す数値は無意味なのである。それを知りながらこのグラフを発表したのなら、これはもう科学ではなく政治的プロパガンダに過ぎないし、知らなかったのなら典型的な専門馬鹿と謗られてもいたしかたなかろう。

 下に掲げた文章もまた、そうした傾向を示す典型例といえる。これは、福島原発事故以降の脱原発の傾向に反発して書いたと思われる、詩のような日記である。PART1と同じSNSにアップされていたものだ。筆者氏は現職のエンジニア、つまり本職の科学畑の人間である。僕自身、科学の側に組する人間であり、基本的な部分では彼の哲学に賛同できなくもないのだが、その結論は完全に誤りであり、また、途中の推論も、いかにも専門馬鹿らしい無知と誤謬のオンパレードだ。それでは、この主張のどこがおかしいのか、具体的に見ていこう。

 たった一度の失敗じゃないか。

 人類史で見ても三度目じゃないか。

 今すべき事は原発を捨てることでも食物にガイガーカウンター当てることでもない。

 この事故からとにかく情報を引き出すこと。そして、次の事故に備えること。

 失敗を繰り返しながら、未知を既知にしていく作業こそが文明の有り様だし、そうすることが出来たから人類はここまでやって来れたんじゃないか。

 ・・・現実に汚染が起きている以上、食品にガイガーカウンター当てることは必要だろう・・・というようなツッコミは置いといて、考え方としてはまあ王道だね。しかし、その基本姿勢は次の一文で早くもおかしな方向に捩れていく。

 原子力は人類が十万年の時を経てようやく手に入れた新しい「火」だ。

 火を忌避した猿人は滅び、火を恐れず使いこなす方法を模索した人類が生き延びた。

 今使いこなせないからと言ってヒステリックに捨ててしまうのは全く猿人と変わらない。

 考えても見て欲しい、人類は火を手に入れてそれなりに使いこなすまでに十万年かかった。十万年経った今でもくだらない原因で火事を起こす。

 原子力は手に入れてまだ五十年。しかも、その間事故はたったの三回。優秀な成績だ。

 現代において五十年間一度も事故を起こさなかったシステムが存在しただろうか。

 ・・・火と原子力とを結びつけ、一緒くたに論ずるのは筆者氏のみならず、原発推進派の方々に共通する傾向のようだ。確かに「エネルギー」という観点からはそういえないこともないが、だからといって同列視することはあまりに情緒的であり、本質を見誤ることにもなる。この人も、火事と今回の原発事故とを同じレベルで語ろうとしているようだ。

 町を焼き尽くすほどの規模の大きな火災では、時に数百、数千の犠牲者が出てしまうことも稀ではない。この百年間のうちに日本国内で起きた大火では、2万戸以上を焼失し、3.000人近い焼死者を出した1934年の函館大火が有名だ。一方、今回の福島第一原発では、少なくとも直接的な犠牲者は今のところゼロである。しかし、だからといって函館大火より今回の原発事故のほうが規模が「小さい」などと評価する人はおそらくいないだろう。そう、両者を同列に比較することなど不可能なのである。被害のありようがまったく比較できないのだから。しかるに、なぜか推進派の方々はなにかというと「火」のたとえ話を持ち出す。おかしな話である。

 また、他のシステムに比べ絶対的な安全性を保障しなければならない原発において、五十年間に三回の事故を起こしたことが優秀な成績といえるかどうかも疑問だろう。たとえば、東海道新幹線は東京オリンピックの年に開通したので、まもなく開通50周年だが、現在までのところ乗客が死亡するような大きな事故は一度も起こしていない。もちろん、細かいトラブルは何度となく起きてはいるが、それは原発も同じこと。メジャートラブルは一度もないと言っていい。筆者氏、新幹線のことなどまったく忘れているのか、あるいは「鉄道」という大きなくくりでしか見ていないのか^^;

 原子力が脆弱なシステムで運用されていると嘆くのであれば、事故を教訓に強化されるべきであって、システムの放棄は思考停止以外の何ものでもない。

 「原子力は過ぎた技術」などと世迷言を吐く連中に言いたい。

 その技術を創りだしたのは紛れもなく人間であって、史上人類が創りだしたものが人類に制御できなかった例は存在しない。従って原子力も必ず制御できる。

 ・・・この論理、一見筋が通っているようで、どこかおかしい。いかに脆弱なシステムであろうと放棄することは思考停止を意味し、許されないとは一体誰が決めたのだ?理系の驕りここに極まれり、である。

 ちょっと技術史をかじれば、制御できず放り出された「新技術」などいくらもある。それら淘汰されたものは現存せず、忘れ去られているだけのこと。原子力で言えば、原子力爆撃機なんて米ソで競争試作されていたんだよ。当然のごとく実用化はされなかったけれど、それらが中止された原因が、現在の原子炉の持つ本質的な問題とまったく共通していることは注目に値する。

 そもそも、人類を含めあらゆる生物は日々生存競争に晒されている。ライオンが自らの爪を「過ぎたものだ」と言って捨てるだろうか? 鷲が自らの翼を「過ぎたものだ」と言って捨てるだろうか?

 彼らはそうすることが生存競争を生き抜く上で有利だったからこそ、そのように進化した。つまり彼らには鋭い爪や大きな翼が必要だったからだ。

 ・・・ライオンが獲物を仕留める時、確かにその前足は大きな役割を持つ。ネコ科の動物はイヌ科と違って手首をひねることが可能であり、獲物の体を効果的に掴むことができる。そして、出し入れ可能な爪はそのとき有力な武器になる。

 しかし、ライオンの最終兵器はあくまでもその牙である。彼らは獲物に致命傷を与える時、爪ではなく牙を使うのだから。そして、究極まで牙を進化させたライオンに近縁の猛獣、スミロドン(サーベルタイガー)はその牙ゆえに新しい時代に適応できず、滅び去った。一方、身の丈に合ったほどほどの牙を選択したライオンの祖先は、その子孫を現在まで生き延びさせることに成功した。

 鷲などの猛禽類を例に挙げれば、翼を失った猛禽類、ディアトリマなんてのも新生代には登場している。もちろん、彼らの食性にとって翼は不要だったので捨て去ったのだ。ディアトリマは絶滅動物だから進化の失敗例である、などと早とちりしてはいけない。現代においても、たとえばダチョウは翼を「過ぎたものだ」として捨て去っている。ダチョウに限らず、翼を退化させ飛べなくなった鳥の例には事欠かない。この人、生物をたとえに出すならもう少し勉強しないと、かえって墓穴を掘ることになってしまうのだが。

 ちなみに、こうして「人類の進歩」と「生物の進化」とをからめて説明しようとする手法を社会ダーウィニズムと呼ぶが、「進歩」と「進化」とは一見似通って見えるものの、その本質はまったく別物であり、あらぬ誤解を招く危険を常に有している。特に今回の筆者氏のように、生物学的知識があやふやな者が振りかざした場合、単に滑稽なだけでは済まない事態を引き起こしかねず、注意が必要である。

 人類も同じだ。巨大なエネルギーが必要だったから、巨大なエネルギーを生み出す装置を作った。そして、その恩恵を受けて人類はこの五十年で爆発的に進歩した。

 ・・・原子力を平和利用するようになって確かにほぼ半世紀ではあるが、われわれはその恩恵を受けてこの五十年で爆発的に進歩したのか?化石燃料の恩恵、というなら僕も諸手を挙げて賛成だが、少なくとも今の原子力が人類の発展に、筆者氏の主張ほど寄与しているとは思えない。エネルギーという観点からは、単に代替可能な燃料のひとつに過ぎない。もちろん、核物質そのものの利用が科学技術の進展に長足の進歩をもたらしたことは言うまでもないが、それはいわゆる(原子力の)巨大なエネルギーの利用とは次元の異なる話である。

 私見では、原子力の発見が人類にもたらした最大の功績は、そんなことよりも「冷戦」だろうと思う。「冷戦」というと誰しもが悪いイメージを持つだろうが、実際に殺戮兵器を繰り出して血みどろの戦いをするよりは遥かにマシである。核兵器の使用について、米ソが了解しあっていたのはMAD(相互確証破壊)つまり、どちらか一方の国が核兵器を使用した際に、もう一方がそれを察知し報復を行うことにより、一方が核兵器を使えば最終的に双方が必ず破滅するという考え方である。これにより核による先制攻撃は事実上不可能となり、結果的に世界的規模の戦争は回避された。もし第二次世界大戦終結後、核兵器がこの世になければ、第三次世界大戦は不可避であったろう。そのことにより人類が滅亡するようなことはなかっただろうが、数百万単位の犠牲者が出たであろうことは想像に難くない。

 ちょっと話が脱線してしまったようだm(__)m 筆者氏の日記を続けよう。

 自ら進んで進歩、進化を止めることこそ生物の摂理に反する。

 そもそも、世界に存在している物質を自分の為に使ってはならない、と誰が決めた?

 考えてみて欲しい。

 人類は生存競争という巨大なゲームの1プレイヤーにすぎない。世界という「場」にあるアイテムを使ってはならないと誰が決めた?

 「場」にある以上、それがどんなに危険だろうが、どんなに卑怯だろうが使っても構わないのだ。

 何しろ勝たなければならない。そして、勝ち続けなければならない。

 ・・・筆者氏、もはや社会ダーウィニズムと進化論の見分けもつかなくなっているようだ^^;

 生存競争などという意味不明瞭な概念を持ち出して、結局何が言いたいのか?そもそもこの想定の中で、人類は何と生存競争をしているのか?あまりに観念的で具体性に欠け、結局のところどうどう巡りに終っているとしか言いようがない。「場」にあるアイテムが原子力を指し、誰かがそれを使ってはならないと決めたとしたら、その理由は簡単、彼自身の生存のためである。生存競争などという概念を持ち出すなら、重要なのは進歩がどうしたとかの御託よりも、まず自らが「生存」することであろう。そして、「生存」という最も大切な条件をスポイルする可能性がある要素は容赦なく切り捨てる、というのが、結局は生存競争に打ち勝つ最低条件であろう。

 この種の社会ダーウィニズム的発想を積極的に繰り広げたのは、ほかならぬナチスである。ヒトラーはユダヤ人を自らと同じ人類とすら認めていなかった。まさに、生存競争において打ち勝つべき敵として捉え、実際ホロコーストを断行した。筆者氏の発想もそれに近い。生存競争の相手を他民族とするだけで、ほぼナチスと同じ結論へとたどりつける。もしもナチスが核兵器を手に入れていたなら、まさにそれがどんなに危険だろうが、どんなに卑怯だろうが使っても構わないのだという理屈で、躊躇なく敵国に投下していたであろう。もちろん筆者氏が指しているのは核兵器ではなくあくまで原子力なのだろうが、論理としては同じことである。

 結果「場」が焼け野原になろうが不毛の土地になろうが、そんなことは関係ない。ただ、そのような「場」になったときに、人類がそれに対応した「手札」を持っていればいいのだ。

 それこそが進化であり進歩であり、人類が十万年掛けてやってきたことでもあるのだ。

 今、原子力を放棄することは、人類や生物が連綿と続けてきた競争を否定することでもある。

 そして、競争を放棄した時、生物としての人類も衰退を迎える。

 原子力反対派はそのことを今一度よく考えたほうがいいと思う。

 ・・・結果「場」が焼け野原になろうが不毛の土地になろうが、そんなことは関係ないとはこの場合何を意味するのかよく判らないが、原子力災害のことを言っているのだとしたら、その無責任さはいささか度を越している。SFではよく、核汚染のため地上に住めなくなった人類が、地下に潜って細々と生存している、といった設定を見かけるが、こうした状況を想定しているのだろうか。そして、そうなってまでも人類は原子力を手放すべきではない、と言いたいのだろうか。今、原子力を放棄することは、人類や生物が連綿と続けてきた競争を否定することでもある。そして、競争を放棄した時、生物としての人類も衰退を迎えると言い切っているからには、そういうことなのだろう。確かに、原発賛成派はこのことをいま一度、よく考えた方がいいだろうね。せっかく、妄信的イデオロギーが人々をどんな地点に導くか、ご丁寧にもシミュレーションしてくれているのだから。

 もちろん、現実には自らの「生存」に対して不都合な技術を放擲することが「進歩」を止めることにはならない。ここで無理やりに「進化」という概念を持ち出すなら、そもそも生物の進化は同時多発的にさまざまな方向で起き、その時の条件にいちばん適合したものが生き残る(適者生存)のである。ここからこっちへ進むことだけが進化、後戻りは退化、というような、一直線上で起こる現象ではない。原子力を選択したことにより、逆にみずからの種としての寿命を縮めてしまうことだって大いにあり得る。袋小路に迷い込み、退化への道しか残されないテクノロジーに固執するよりも、別の路線を歩んで新たな「進化」を目指す方がよほど建設的であり、「種」としての生存戦略にも適合する判断ではなかろうか。

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 さて、全体を読み通した結果、この人の科学観がいかなるものか、おおよそ理解できたかと思う。科学を信じるのはいいが、肝心の立論の根拠に誤りが多く、結果として科学とは程遠い場所へと着地してしまっている。短絡と極論とを繰り返し、自らの想定した結論へと導くテクニックは、アジテーションとしてはそこそこ有効だろうが、少なくとも「科学」を論じるときに立つべき立場ではないし、科学の側に立つ人間のすることでもない。また、上のT(Y)君にも共通することだが、あやふやな科学知識をもって他者を諌めるようなことは非常にみっともなく、恥ずべきことである。間違っても自分自身がこんな立場を取らないよう、反面教師としてしっかり記憶しておきたい(2012.02.02 記)

 

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