マスコミは宝?


 今回は前項の続き。

 前回、僕はマスコミについて「宝」と書いた。何事にも代えがたい「宝」である、という認識は今も変わらないが、それはなにもマスコミの報道姿勢そのものをすべて鵜呑みにしろとか、批判すべきではない、ということではない。むしろ、健全な発展のためには多いに批判すべきだとさえ思っている。

 実は、最近のマスコミの報道姿勢に関しては、ネットウヨ諸君とは別の角度ではあるが、僕も少々首をかしげざるを得ないところがあるのだ。

 ←の素晴らしい写真は、ニュージーランド在住のラクダおやじ氏が撮影された「マクノート彗星」という、近来稀に見る大彗星の姿である(氏のホームページには他にも数多くの素晴らしい写真がアップされている。興味のある方はぜひご覧ください)まさに壮麗というしかない大彗星だが、実はこの写真、今年2007年に入ってから撮影された、ごく新しいものだ。しかし、天文に関心のない多くの方にとっては、初めて見る写真ではなかろうか。少なくとも僕は、この大彗星に関するニュースをテレビや新聞で見たことが、ほとんどない(唯一の例外が、某テレビ局が追跡取材している世界一周ヨットレースで、参加者がたまたま撮影した彗星の写メールを放映した例)最近はせいぜいハッブル望遠鏡のサイトをときどき覗く程度だったので、ある方が僕の掲示板にカキコして下さるまで、この彗星の存在自体知らなかったくらいだ^^;

 この彗星、太陽に接近する途中までは日本からも見えたものの、最接近後は南半球側に回ってしまい、日本からはその巨大な尻尾の先端だけが日没後にかろうじて観測できる程度になってしまった。日本からは見えないからか、とにかく一般のマスコミはマクノート彗星に対して冷淡だ。20世紀最高の明るさと言われたイケヤ・セキ彗星にも匹敵する大彗星なのに、ほぼ完全黙殺である。

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 何を報道するか、また、しないかはあくまで局の自由裁量であり、それに対して云々することは憲法上保証された出版・報道の自由を侵すことになる、というのが前回の論調だったが、それでは2時間にも及ぶ長いニュースショーの最中に流される放送すべてが「報道」なのか、と問うてみると、やや疑問があるのも確かだ。たとえば芸能人の結婚/離婚やラーメン屋の食べ歩きなど、どちらかといえばワイドショー的なネタも、今やニュースショーの時間帯に流されることが多くなった(逆に、ワイドショーの方にはニュース解説的なネタが激増し、いまや両者のクッキリとした区別は難しい)そうしたものまでも「報道」として認めていいのかどうか。そんなものを電波に乗せるくらいなら、その分もうちょっとマトモなニュースを増やしてはくれまいか、と注文をつけるのも、やっぱり「憲法違反」なのだろうか^^;

 僕が「マスコミは宝」という理由はただひとつ、前回の結びにも書いた通り、それ以外にはわれわれに世界を知る手段がないからだ。ネットジャンキーな方たちは「オレたちにはネットかあるからそれで十分」というかも知れないが、ネットだってほとんどの情報はマスコミに依存しており、また、ネットから発信された情報はその確度を検証する手段がない。つまり、先日の納豆騒ぎみたいなことが起きても、真偽のほどはおろか、責任者の所在を確定することすら難しいのが実情だ。脅迫など明らかな犯罪性のあるカキコならともかく、デマ情報程度のものまでプロバイダがIPアドレスを公開するとは思えないからだ。逆に、たとえば天安門について中国国内でググっても、広場の風景などは出てきても、天安門事件に関連する情報は一切表示されない。グーグルは、こうした政府批判に繋がる情報を一切提供しないことを条件に、中国市場に参入したからだ。この事実だけでも、ネットを頭から信用することの危険性が判るだろう(もちろん、検索サイトを押さえたところで接続それ自体をすべてコントロールするのは難しく、だからこそ中国には数十万人ものサイバー警察隊が存在するのだが、少なくとも今のところ、情報の押さえ込みには成功しているようだ)

 総じて今のマスコミは「横並び」現象というか、民放NHKを問わず、どの局を見てもほとんど同じようなネタを選び、同じような論評を加えている(僕は毎日欠かさずフジ、TBS、テレ朝、日テレなど民放各局とNHKのニュース番組を見ているが、そのニュース選択や報道姿勢は見事なまでに似通っている。唯一テレ東のニュースショーだけは、日経新聞系列だからか、経済的側面を強調したニュース、という微妙な差を感じる程度だ)マスコミに公平性が必要なのはいうまでもないが、そもそも完全な中立はあり得ないし、総花的にそれぞれの意見を羅列するだけなら社説はいらない。社説とはそのマスコミ自身のスタンスを表明する場であり、いわば彼らの「重心点」みたいなものなのだ。もっとも、最近頻繁に報道されている他紙からの盗用事件をみるかぎりでは、今では「あれば体裁が保てる」程度のものに成り下がってしまっているようだが^^;

 さまざまな意見が飛び交い、それぞれを尊重しつつも議論を尽くすのが民主主義のあり方であり、そのためにはそれぞれが独自のポイント・オブ・ビューを持つマスコミの存在が必須なのだが、現在の「右向け右」「左向け左」状態は、どうも「日本のマスコミ」という共有幻想に全マスコミが囚われ、その基準にしたがって無難な記事を選択し、無難な論評を加えているように思えてならない(ついでにいえば、一般的には無難に思えるその基準そのものが、ネットウヨ諸君の目には横並びの「(左寄りな)印象操作」と映ってしまうのだろう)

 どうやらマクノート彗星は、そもそも共有幻想に過ぎない「基準」から「日本からは見えない」という理由だけで漏れてしまったようだ。以前のハレー彗星騒動を思い返すと(日本からも見えたにも関わらず、各マスコミは条件のいい諸外国に大勢の観測隊を送ったものだ)まさに隔世の感がある・・・。('07.03.08 記)

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