『メトロジェノン/シーズン2 エピソードV
TENA CODE015 「ノベル・フューエル」

BY ガース『ガースのお部屋』

○ 鉄橋を渡る特急列車
  大きな川に架けられた長い橋を高速で通り過ぎている。

○ 特急列車内・3両目
  両側に2席ずつ配置されたシートに座る乗客。
  後列の窓側の席に座っているボブカットの少女。オレンジ色のウインドブレーカーを着ている。
  少女の隣に座る中年のサラリーマン風の男。
  横目で少女の頬についた傷をジロっと見ている
  下を向いている少女。
  男、少女の短パン下の太ももをやらしい目つきで見つめている。
  突然、女が声を出す。
少女「おじさん」
  男、ハッと目を背ける。
少女「おじさん」
  男、わざとらしく少女と顔を合わす。
男「はい」
少女「私の足、何かついてる?」
男「別に見てないよ…」
  男を見つめる少女。
  少女、ウインドブレーカーのポケットから赤いボールペンを出し、ボタンを何度もカチカチと押し始める。
少女「ずっと見てたじゃん」
男「気のせいだよ。自意識過剰だろ?」
  少女、突然、強面になり、ボールペンを男の右腿に突き刺す。
  悲鳴を上げる男。
  乗客がざわめき始め、一斉に少女の座席に注目する。
  少女、今度は、男の右目を狙って、ボールペンを突き刺そうとする。
  大きく振りかざした少女の腕を何者かが掴む。
  少女の前に立っている北 一真(31)。
  北を睨みつける少女。
少女「離せよ!」
北「百合川莉果だな」
  少女は、百合川莉果(ゆりかわりか)(17)。
  莉果の腕を掴んだまま、立ち上がらせる北。
  莉果、北の手を振り払い、北の心臓目掛けて、ボールペンを突き刺そうとする。
  北、莉果の腕を捻り、ボールペンを取り上げる。
北「お父さんの事で聞きたいことがある」
  ふくれっ面をする莉果。

○ 倉庫地下・JWA(対外政策情報機関)本部・集中治療室
  ベッドで眠る椎名歩(あゆむ)(56)。人工呼吸器を器官挿官されている。
  ベッドのそばに立つ女性オペレート員の波本エナ(25)。
  呼吸器のモニターを監視している。
  扉が開く音。
  ベッドの前にやってくる坂崎千春(25)。
  エナのそばに立つ坂崎。
坂崎「容態は?」
エナ「予断を許さない状況よ」
坂崎「なんでこんなことに…」
エナ「至近距離で心臓の下部を撃たれて、出血もひどかったのに…担当医もこの状況で
 命をとりとめたのは、奇跡に近いと言っていたわ」
  椎名をしばらく見つめると、足早に立ち去る坂崎。
エナ「もう行くの?」
坂崎「荒崎を探す」
エナ「副総監がもうすぐ本部に到着するのよ」
坂崎「俺に出迎えろって言うのか?」
エナ「単独行動なんかしていたら、担当からはずされるわよ」
坂崎「…わかった。先に行く」
  部屋を出て行く坂崎。
  エナ、憂いの表情。

○ マンション2階・201号室・真坂の家
  テーブルで弁当を食べている真坂茂(7)。
  トイレの水が流れる音。中から真坂和久(32)の声が聞こえる。
真坂の声「おい、茂、トイレットペーパー持ってこい!」
  茂、立ち上がり、洗面所に行く。
  洗濯機のそばを確認する茂。
茂「ない!」
真坂の声「…じゃあ、ティッシュペーパーでいいよ」
  茂、部屋を隅々探し、ティッシュペーパーの箱を見つける。しかし、空である。
茂「ティッシュもない!」
真坂の声「おまえの鼻紙でいいや」
茂「さっき使った」
真坂の声「…表のスーパーで買ってきてくれよ」
茂「わかった」
  慌しく玄関に向かう茂。

○ 同・表
  ドアを開ける茂。
  目の前に北が立っている。
北「こんにちは」
  茂、怪訝な表情。
北「お父さんいる?」
茂「いるけど…今…」

○ 同・トイレ内
  ズボンを下ろし座ったままの真坂。
  いらいらしている。
  扉をノックする音がする。
真坂「もう買って来たのか?はえぇな」
  鍵を開けようとする真坂。
  外から北の声がする。
北の声「俺だ」
  動きを止める真坂。
真坂「…その声」
北の声「話しがある。緊急の用件だ」
真坂「…今ペーパー待ちなんだけど」
北の声「知ってる。でも聞いてくれ。総監が危険な状態なんだ」
真坂「えっ?」
北の声「TENAの元幹部の金木と言う男が荒崎の釈放を要求してきて、総監は、それを聞き入れたが、
 金木の指示で荒崎が総監を銃で撃った」
真坂「金木?」

○ 同・トイレ前
真坂の声「金木ってやつ…生きてるのか?」
北「おまえ、何か知ってるのか?」
真坂の声「…何回言ったらわかるんだ。無関係の人間をいつまでも巻き込むな」
北「おまえが半年前に調べていた件、今なら再調査できる」
真坂の声「何の話だ?」
北「真坂…」

○ 同・トイレ内
真坂「もう忘れた。何も覚えちゃいねぇよ」
北の声「総監も苦渋の決断だった。上から圧力をかけられていたんだ」
真坂「自分のポジションを守るために、俺を切っただけだろ。あの人は、変わったんだ」
北の声「そうじゃない」
真坂「とっとと出て行け」
  扉をノックする音がする。
  キレる真坂。
真坂「しつけぇな!」
  鍵を開け、ドアを開く真坂。
  外に茂がトイレットペーパーを持って立っている。
  唖然とする真坂。茂からトイレットペーパーを受け取る。
真坂「さっきここにおじさんがいただろ?」
茂「今帰ったよ」
  立ち去る茂。
  首を傾げる真坂。
  ドアを閉め、尻を拭く。

○ 同・リビング
  テーブルで上級にぎり寿司を食べている茂。
  トイレの水の音が鳴り響く。トイレから出てくる真坂。茂の様子を見つめ、
真坂「おまえ、それ…」
茂「お兄ちゃんからもらった。お父さんのもあるよ」
  真坂、寿司を取り上げ、
真坂「こんなもん食うな!」
  真坂、ゴミ箱の前に立ち、寿司を捨てようとするが、寸前で躊躇する。
  茂の様子を窺う真坂。
  茂、悲しそうに俯いている。
  ため息をもらす真坂。

○ マンション前
  低音のクリーンなエンジン音を鳴り響かせながら、出入り口の前にやってくるB―COA。
  階段を降り、ゆっくりとB―COAに近づく真坂。煮え切らない様子。
  B―COAの運転席から北が降りてくる。
北「珍しいな。おまえの方から俺の携帯にかけてくるなんて…」
  北と対峙する真坂。
真坂「人の子供買収しやがって」
北「買収?人聞き悪いこと言うな」
真坂「いいか、本当にこれが最後だ。今後は、一切関わらないからな」
北「寿司の事なら気にするな。あれは、知り合いの寿司屋の親父からもらったものだ。生ものは、苦手なんだ」
真坂「あんなもので俺達を釣ろうとしやがって、ふざけんな」
北「おまえ食わなかったのか?」
真坂「…」
  ニヤリとする北。
真坂「何をすりゃあいい?」
  助手席に目をやる北。
  北の目線の方向を見つめる真坂。
  B―COAの助手席に座っている莉果。
  下を向いたまま、微動だにしない。
北「あの娘のボディガード」
真坂「何者だ?」
北「百合川莉果。さっき話した金木の娘だ」
真坂「なんで、俺がボディガードを?」
北「電車内で傷害事件を起こしていたところを捕まえた。キレやすいタイプみたいだ。
 金木の情報を聞き出すつもりだったが、梃子摺ってる」
真坂「取調室で尋問攻めにしろよ」
北「それができるなら、とっくにそうしてる」
真坂「やばいことでもあるのか?」
北「副総監だ。今日から総監の代わりに本部を指揮することになっている」
真坂「あの髭野郎、まだいるのか。おまえとは、相性悪かったっけ、確か…」
北「副総監に陣取られると、何かとやりづらくなりそうだから、早い目に手を打とうしとしたのさ」
真坂「娘から親父の情報を聞き出して、どうする気だ?」
北「それは…」
  B―COAのボディ全部に設置されているスピーカーから、メインコンピュータ『シェンズ』の声が聞こえる。
シェンズ「本部から連絡が入っています」
北「ほら、来た」

○ 倉庫街付近・道路
  道路脇に立ち止まるB―COA。
  助手席から、北が降りている。

○ B―COA車内
  運転席に座っている真坂。
  莉果は、後部席に移っている。
  助手席の窓枠から中を覗き込む北。
北「後は、よろしく頼む。会議が終わり次第、また連絡する」
真坂「マジで今日一日だけだぞ」
北「わかってる」
  助手席のドアの窓が自動で閉まる。北の前から走り去って行くB―COA。
  北、顔を引き締め、倉庫が連なる通りを歩き出す。

○ JWA本部
  入口のドアが開く。黒いスーツに身を包み、がっしりとした体型、髭を蓄えた男・副総監の
  浅海(あさなみ)浩太(48)、続いて坂崎とエナが中に入ってくる。
  室内で作業に当たっていたオペレーター員達が一斉に手を止め、副総監のほうを見つめる。
浅海「その場で少し聞いてくれ。今日から椎名総監の代理を務める事になった。午後1時から
 第3ミーティングルームで特別会議を開く。井畑、山崎、篠本、坂崎、君達には、会議に出席してもらう」
  一瞬、顔を歪める坂崎。
浅海「波本、北は、どこに行った?」
エナ「外出中です。もう間もなく戻ってきます」
浅海「戻ってきたら、至急、私のところに連れて来てくれ」
エナ「わかりました」
浅海「挨拶は以上だ。各自、任務に戻れ」
  オペレータ員達、一斉に仕事を始める。
  総監室へ向かう浅海。
  坂崎とエナ、浅海の後をついていく。

○ 住宅街
  交差点を左に曲がり勢い良く走るB―COA。

○ B―COA車内
  ハンドルを握る真坂。
  バックミラーを覗き、後部席に座っている莉果を見つめる。
  下を向いたままの莉果。
真坂「腹減ったか?」
莉果「…」
真坂「なんか食わなきゃ、話す気力も出ないだろ」
莉果「…」
  真坂、辺りを見回す。
真坂「シェンズ!」
  コンソールのモニターにポニーテールの女のCGイメージが映る。人工頭脳「シェンズ」が話しを始める。
シェンズ「何かご用ですか?」
  莉果、シェンズの声を聞き、顔を上げる。
真坂「近くに良い店がないか、探してくれ」
シェンズ「あなたに合った店なら、500m先にあります」
真坂「500m?もうすぐじゃん」
  フロントガラス越しに見える外の景色。
  コンビニの看板が見えている。
  真坂、看板をまじまじと見つめ、
真坂「もしかして、あれのことじゃないだろうな?」
シェンズ「これまでのデータを分析した結果、あなたが『食事』または、『飯』のキーワードで向かった場所は、
 コンビニエンスストアが99%で圧倒的だったわ」
真坂「いつのデータだよ、それ?」
シェンズ「半年前です。一年分のあなたの行動履歴が残っているの」
真坂「そんなの今すぐ削除しろ」
シェンズ「勝手に削除は、できない」
真坂「部外者は、黙ってろってか」
シェンズ「北さん、あなたと性格が似てきた。昔は、感情を表に出す人じゃなかったのに、
 最近は、車の中でよくぼやいているわ」
真坂「面白いじゃねぇか。今度、車内カメラでその様子を撮影しといてくれよ」
シェンズ「そう言う冗談は、好きになれないわ」
  後ろから莉果の声が聞こえる。
莉果「誰と喋ってるの?」
  バックミラーを見つめる真坂。
真坂「おっ、やっと口を聞いてくれたぜ」
莉果「ねぇ、今誰と喋ってたの?」
真坂「彼女と世間話でもしてやれよ」
シェンズ「…」
  モニターの映像が消える。
真坂「おい、シェンズ、しかとしないで何か喋れ!」

○ 倉庫地下・JWA本部・総監室
  デスクに座る浅海。
  しばらくして、北が中に入ってくる。
  浅海の前に立ち、一礼する北。
北「ご挨拶遅れました」
浅海「挨拶は、後だ。それより、現状報告を聞きたい」
北「何の任務についてでしょうか?」
浅海「君が今担当している任務についてだ」
北「荒崎の件なら、坂崎と波本に聞いてください。私は、その時、政府に依頼されて最新システムの
 輸送業務に当たっていたので」
浅海「総監が撃たれた後、君が一時的に本部の指揮系統を兼任していたそうだな」
北「たった一日です。荒崎に関連する情報は、まだ何も掴めていません」
浅海「今朝は、どこにいた?」
北「…今朝?」
  北の顔を見つめる浅海。
浅海「今日は、この時間に出勤することになっていたのかね?」
北「はい。昨日から、熱が上がりまして、病院に…」
  豪快に笑う浅海。
浅海「体調を崩しているのか。季節の変わり目だからな。私も風邪を引きたいのに、中々引かなくて」
  浅海の笑いにげんなりする北。
浅海「2、3言っておく。これからは、単独で行動する事は、禁止だ。それから報告義務は、怠るな」
北「お言葉ですが、一人で動いた事なんて…」
浅海「君の仕事ぶりについては、総監からよく聞いていた。半年前、君のパートナーだった男についてもだ。
 総監代理を務める以上、部下の性格や行動を的確に把握しておかなければならんからな」
  電話が鳴り響く。受話器を上げ、話し出す浅海。
浅海「はい…ん…わかった。適任者をそっちに送る」
  受話器を置く浅海。
浅海「特殊ガスを使った強盗事件が連続で3件発生した。犯人は、TENAのメンバーであることが
 確認されている。至急現場に向かってくれ」
北「わかりました」
  北、踵を返し、部屋を出て行く。
  浅海、北の背中を怪訝に見つめている。

○ 同・本部前・通路
  ドアがスライドして開く。北が出てきて、通路を歩き出す。北を追いかけてくるエナ。
エナ「北さん」
  北の横に並んで歩くエナ。
北「どうした?」
エナ「ちょっと聞きたい事が…」
北「何だ?」
エナ「誰がB―COAを運転しているんですか?」
  立ち止まる北。エナもつられて足を止める。
北「これから話すことは、副総監には、黙っていて欲しい」
エナ「…」

○ ショッピングモール・地下駐車場
  だだっ広いコンクリートで覆われたフロアにずらりと並ぶ車両。その中にB―COAの姿がある。
  真ん中付近の駐車スペースに前向きで止まっているB―COA。
  助手席に莉果が座っている。

○ B―COA車内
  莉果、左手でドアをまさぐり、ドアのロックを探している。
  ドアの電子パネルを触る莉果。『ROCK』の赤い表示を見つめる。
  何度もドアに体当たりし、開けようとする莉果。しかし、ドアは、微動だにしない。
  スピーカーからシェンズの声がする。
シェンズ「クライム・ディフェンスシステムが作動しているの。そんなことしても体を痛めるだけよ」
  辺りを見回す莉果。
莉果「誰?」
  コンソールのモニターにポニーテールの女のCGイメージが映る。
シェンズ「私は、この車を管理しているの」
莉果「あなた、人間じゃないの?」
シェンズ「以前の私は、JWAの一員だった。でも任務中に殉職して、この車の頭脳として蘇えったの」
莉果「そんなことできるの?」
シェンズ「あなたの知らないところで科学は、日進月歩しているわ」
莉果「このCGは、あなたが人間だった頃をイメージして作ったものなの?」
シェンズ「よくわからない。総監の趣味かもしれないわ」
莉果「総監?」
シェンズ「私の父の事よ」
莉果「お父さん、偉い人なんだ」
シェンズ「あなたの父親は、何をしているの?」
莉果「聞かないで」
シェンズ「どうして?」
莉果「頭がおかしくなる。あいつのことを思い出すと…」
シェンズ「好きじゃないの?」
莉果「遊んでもらった事一度もない。小さい頃からいつも自分の部屋にこもって、臭いものばかり作ってた」
シェンズ「でも、あなたのことは、嫌いじゃないでしょ?」
  莉果、頬の傷を指で押さえ、
莉果「この傷、小4の時、あいつにつけられたの。ボールペンでさ。勝手に部屋に入っただけで…」
シェンズ「整形手術を受けてみたらどう?今の技術なら、そのぐらいの傷、すぐに直せるわ」
莉果「消したくないの…」
  真坂が店の出入り口から姿をあらわす。
  莉果、真坂に気づき、また、口を閉じる。
  電子音が鳴る。運転席のドアのロックが解除される。
  運転席に乗り込む真坂。と同時に、モニターが消える。
真坂「お待たせ」
  真坂、右腕に持った袋からハンバーガーを取り出す。
真坂「悪いが飲料水は、持ち込み禁止だ。後で、自販機で何か飲ませてやるよ」
  莉果にハンバーガーを差し出す真坂。
  莉果、下を向き、また俯く。
  溜息をつく真坂。
真坂「俺の子供が娘じゃなくて良かった…」
  通信のアラームが鳴り響く。
シェンズ「北さんから連絡です」
  スピーカーから北の声が聞こえる。
北の声「ちゃんと仕事してるようだな」
真坂「後でギャラの請求するからな」
北の声「B―COAを返してもらいたいんだ。任務で必要になった」
真坂「おいおい、この子と二人っきりにさせる気か?丸腰だぞ。金木に狙われたらどうする?」
北の声「心配するな。金木は、彼女が俺達と一緒にいる事を知らない」
真坂「いつ迎いに来るんだ?」
北の声「また連絡する。それまで頑張ってくれ」
真坂「頑張ってくれって…おまえ…」
  通信が切れる。

○ ショッピングモール・地下駐車場
  車から降りる真坂。
  助手席のドアを開け、莉果の腕を掴む。
真坂「車がいるんだってさ。悪いけど、降りてくれ」
  莉果、真坂の手を振り払い、自分で車から降りる。
真坂「いいぞ、シェンズ。しっかり仕事して来い」

○ B―COA車内
  システムボードの『AUTO ADVANCE』のボタンが青く発光する。
  「M」型のハンドルが袋状に縮み始める。パルス音が鳴り、エンジンが始動する。

○ ショッピングモール・地下駐車場
シェンズの声「あなたも頑張って」
  駐車スペースを出て、走り去って行くB―COA。
  B―COAを見つめ、呆然としている莉果。
莉果「どうして?」
真坂「何が?」
莉果「だって勝手に…」
真坂「器用だろ?」
  莉果の背中を押し、歩き出す真坂。

○ 空港周辺
  ジャンボ機が滑走路に向かって下降している。ジェットエンジンの轟音が鳴り響く。
  空港沿いの道路脇に止まっている黒いセドリック。

○ セドリック車内
  運転席に座る中年の男・二上喜助(43)。スーツ姿。
  助手席に座る若い女・薗沢和実(24)。ライトベージュの作業着を着ている。茶髪のセミロング。
和実「そろそろ大丈夫じゃない?」
二上「念には、念をだ」
  和実、足元のスポーツバックを膝に乗せ、バックを開ける。
  中には、100万円の札束がぎっしり詰まっている。
和実「これだけあれば、もう十分よ。研究費の元は、十分に取り戻せたでしょ?」
二上「まだTENAが肩代わりしてくれた費用を取り戻した程度に過ぎない」
和実「この辺は、もうやばいわ。別の場所へ移動しましょう」
  二上、腕時計を見つめ、
二上「それにしても遅いな…」
和実「もう一度連絡したら」
  二上、スーツの内ポケットから携帯を取り出し、電話をつなげる。
  ふと、バックミラーを見つめる和実。
  バックミラーに写るB―COA。急スピードでこちらに接近している。
和実「何あの車…」
  二上、後ろを覗き込むと、慌てて、エンジンをかける。
二上「クソ!」
  アクセルを踏み込む二上。

○ B―COA車内
  フロンガラス越しにセドリックが勢い良く走り出すのが見える。
  ハンドルを握る北。
北「気づかれた。COBスタンバイ!」
  フロントガラスが紫色に変色し、ガラスにスクリーンが投影される。方眼軸が浮かび上がると、
  前方を走る高級車を捕捉する十字の点滅が表示される。
  北、ハンドルに設置されている『COB』のボタンを押す。

○ B―COAの前バンパー両側の窪みからオレンジ色のボールが2つ同時に発射される。
  ボールは、高級車の後ろの両側のタイヤに当たり、ガム状にへばり着く。
  暫くして、小さな爆発が起こり、タイヤがパンクする。

○ 空港周辺・道路
  バランスを失い、激しく蛇行しているセドリック。
  突き当たりのガードレールを突き破り、コンクリートの壁に激突する。
  立ち止まるB―COA。車から降りる北。
  銃を構えながら、高級車に近づいて行く。
  突然、運転席のドアが開き、二上が姿をあらわす。
  二上、黒いライターのようなものを北に向け、何かを噴射しようとするが、北が寸前、銃を撃つ。
  その場に崩れる二上。
  助手席のドアが開く。和実がスポーツバックを持ちながら、走り出す。
  北、和実に銃口を向け、撃つ。
  弾丸は、和実の手元に当たる。
  和実、スポーツバックを落とす。
  慌てて、戻り、バックを拾い上げようとする和実。北が銃を構えたまま近づいていく。
北「その金は、もう使えない。大人しくしろ」
  悔しそうにしかめっ面をする和実。

○ 葵港・第3臨海埠頭
  古びた倉庫が立ち並ぶ通り。
  スピードを上げて走行するB―COA。
  とある倉庫の前に立ち止まる。
  倉庫のシャッターが開くと同時に、ゆっくりと中に進む。

○ 倉庫地下・JWA本部・ガレージ
  大型エレベータの扉が開く。中で止まっていたB―COAが外に出て、円盤状の薄い鉄板の上に止まる。
  運転席から降りる北。
  
○ B―COA車内
  後部席に二上と和実が座っている。手錠をかけられている
  外から二人を見つめる北。
  運転席のシートを倒す北。
北「降りて来い」
  二上が車から降りる。
  和実も降りようと腰を上げた時、作業着の胸のポケットに入っていた黒いケースが落ちる。
  ケースは、シートの下を転がり、助手席のシートの下に潜り込む。
  和実、それに気づくが、拾おうとせず、不敵な笑みを浮かべながら、車を降りる。

○ 倉庫地下・JWA本部・ガレージ
  通路の出入り口からエナと数人の監視員が歩いて、北の前にやってくる。
北「二上喜助と薗沢和実。取調室に連れて行け」
  監視員達、二上と和実の両側に立ち、腕を掴んで二人を連行する。
エナ「こんなに早く拘束できるとは、思いませんでした。さすがですね」
北「銀行の防犯カメラの映像で二人の特徴と、車の車種を割り出せた。それと、B―COAの
 ハイウェーブサーチのおかげで、逃走経路をすぐに特定できた」
エナ「三日前、衛星の映像に少し電波障害が出ていたんですが、今日は、問題なく機能しているようですね」
北「とくに、気になる障害は、見当たらなかったけど」
エナ「念のため、後でチェックしておきます」
北「頼む」
  北、通路のほうに向かって歩いて行く。
  エナ、B―COAの運転席ら乗り込む。

○ B―COA車内
  コンソールパネルの動作チェックを始める。
エナ「聞こえる。シェンズ」
シェンズ「はい」
エナ「今からボディチェックを開始するわ。準備は良い?」
シェンズ「車内で異常物を確認しました。助手席のシートの下です。至急チェックしてください」
  エナ、一度車から降りて、シートを倒し、
  後部席に入る。
  屈んで、助手席のシートの下に腕を入れる。
  暫くして、紫色の煙が噴出。
  エナ、大きな悲鳴を上げ、車から降りる。
  エナの腕が黒ずみ、石のように硬化し始める。

○ 同・取調室
  北とテーブルを挟んで二上が向かい合って座っている。
北「おまえと金木は、8年前まで石油化学メーカーのTD産業の社員だった。未来型の都市ガス開発の
 実験中に、イソブタンによる爆発事故を引き起こし、部下の社員1人の命を奪った罪で、5年間服役していた」
  ニヤける二上。
北「金木と一緒に石化ガスを作ったのか?」
二上「『マリンR』は、私の長年の夢だ」
北「生きた人間を石にするのが、おまえの夢なのか?」
二上「あれは、単に人間を石にするだけのものじゃない。石化した人体を溶かし、燃料として、
 利用できる究極のエコ兵器だ」
北「エコ時代に最適な殺人兵器ってわけか。誰の指示で強盗事件を起こした?」
二上「誰の指示も受けていない。全て私自身でやった事だ」
北「完成したばかりのガスを使いたくて、うずうずしていたのか?新しい物を使いたがる子供みたいに…」
二上「確かに実験材料は、欲しかった。莫大な研究費がかかったからな」
北「実験結果がわかる上に、金まで手に入って、一石二鳥か。でも自分が捕まるリスクまでは、
 計算できていなかったようたな」
二上「おまえが邪魔しなければ、パーフェクトだった。だが、まだ、諦めていない」
  不敵な笑みを浮かべる二上。
  二上を睨みつける北。
  扉が開き、中に入ってくる坂崎。
坂崎「すいません…至急話したい事が…」
  北、立ち上がり、坂崎と一緒に部屋を出て行く。

○ 同・取調室前
  ドアの前に立ち、話をする北と坂崎。
坂崎「波本がB―COAのメンテナンス中にマリンRを浴びてしまって…」
北「どんな状態だ?」
坂崎「右腕が肘まで石化しています。他の部位には、異常は、見られません」
北「B―COAの中になんでマリンRが?」
坂崎「助手席の下にライターのようなものが落ちていて、そこからガスが噴出したそうです」
  険しい表情になる北。
坂崎「今、担当員が車内のガスを抜く作業に当たっています。早く石化を解く方法を見つけないと、
 手遅れになります」
北「おまえ、薗沢和実の尋問に当たれ」
坂崎「はい」
  坂崎、一礼すると、そそくさと立ち去って行く。

○ 同・取調室
  部屋に入ってくる北。
北「うちの車にガスを仕掛けたな」
  憮然とする二上。
北「俺の部下が、おまえのガスの犠牲になった。これで満足か?」
二上「私には、関係のない話だ」
北「石化を解く方法は?」
二上「そんなものはない。一度石化した人体は、30分で壊死し、そこから徐々に溶け出して、
 二度と再生することはない」
北「さっき、諦めないと言ったな。俺と取り引きしないか?」
二上「どう言う事だ?」
北「石化を解く方法を教えてくれたら、釈放してやってもいい」
  神妙な面持ちの二上。

○ 同・第2取調室
  テーブルの前に座っている和実。項垂れ、無表情。
  坂崎が和実と対峙している。
坂崎「何のために車にガスを仕掛けたんだ?」
  和実、暫くして、薄笑いを浮かべ、
和実「いい気味。爆笑だわ」
坂崎「なに?」
和実「作業着のポケットに入ってたケースがたまたま落ちただけ。わざとじゃないわ」
坂崎「嘘をつくな」
和実「腕が石化したくらいで何なのよ。五体満足でも、動けなくなった仲間を何人も見てきたわ」
  坂崎の携帯電話のバイブが振動する。
  坂崎、ディスプレイの表示を確認すると、立ち上がり、部屋を出て行く。

○ 葵港・第3臨海埠頭
  岸壁に立つ坂崎。携帯で話している。
  相手の声は、金木 光久(45)。
金木の声「やはりそうですか。あの二人は、そちらにお世話になっているんですね」
坂崎「あんたあの二人を知ってるのか?」
金木の声「ええ。今回の件は、私が依頼したものですから」
坂崎「マリンRの開発にも関わっているのか?」
金木の声「私だけじゃありません。他のメンバーも複数絡んでいる事なので…」
坂崎「目的は何だ?」
金木の声「目的を答える代わりに、あなたにやってもらいたい事があります」
坂崎「何だ?」
金木の声「二人をそこから連れ出してください」
坂崎「逃がせって言うのか。そんなの無理だ」
金木の声「真坂さんへの復讐、もうお忘れですか?」
坂崎「…」
金木の声「あなたのお父さんは、JWAに殺されたも同然。このチャンスを逃してはいけません」
  鋭い目つきになる坂崎。

○ ショッピングモール・屋上庭園
  買い物客や若いカップルが花畑の周りを歩いている。
  ベンチに座る真坂と莉果。
  真坂、暇そうに欠伸している。莉果。俯いたまま退屈そうにしている。
真坂「彼氏いるの?」
莉果「…」
真坂「俺、君のお父さんと会った事がある」
  莉果、少し顔を上げる。
真坂「電話で急に呼び出されて、知らない場所に連れて行かれた」
  突然口を開く莉果。
莉果「親を殺したい衝動にかられたこと、ある?」
真坂「えっ?」
莉果「どこで会ったの?見つけたら、あんた殺してくれる?」
真坂「俺は、殺し屋じゃない。何でそんなに親父が嫌いなんだ?」
莉果「ずっと、私達を苦しめてきたから。この世に存在しているだけで、虫唾が走る」
真坂「気持ちは、わかる。でも、君まで犯罪者になる事ないだろ」
莉果「あいつの血引いてるから。いつか私も平気で人殺しできるようになるかも」
真坂「…親父の事は、俺達が何とかする。君は、自分の事だけ考えてりゃいいんだ」
  真坂の携帯が鳴り響く。
  電話に出る真坂。
真坂「はい」
北の声「俺だ」
  思わず吐息を漏らす真坂。
真坂「…待たせ過ぎ」

○ 倉庫地下・JWA本部・ガレージ
  携帯を持って立っている北。
  北の後ろで、B―COAが数人の作業員によって、メンテナンスを受けている。
北「ちょっとトラブルがあったんだ。これから、B―COAをそっちに迎いに行かせる。
 本部に連れてきて欲しい」
真坂の声「副総監と話がついたのか?」
北「いや、まだだ」

○ ショッピングモール・屋上庭園
北の声「おまえに本部まで連れて来てもらいたいんだ」
真坂「は?何で俺が?」
北の声「今手が離せなくて。副総監のことなら大丈夫だ。B―COAの活動状況をまだ把握していない」
真坂「倉庫前まで連れて行ってやる。中に入るのは、ごめんだ」
北の声「それでいい。じゃあ、よろしく」
  電話が切れる。
  不満顔の真坂。

○ 倉庫地下・JWA本部・第2取調室前
  北と坂崎が立ち話をしている。
北「二上をこれからラボに連れて行く。薗沢を拘留室へ連れて行け」
坂崎「はい」
  立ち去る北。神妙な面持ちの坂崎。

○ 同・第2取調室
  部屋に入ってくる坂崎。
  テーブルの前に座る和実。爪のマニキュアを気にしている。
和実「まだやるの?」
坂崎「拘留室へ行く。立て」
  和実、渋々立ち上がる。

○ 同・取調室前・通路
  取調室から出てくる坂崎と和実。
  並んで歩き出す。
  監視員が坂崎の前にやってくる。
監視員「つきそいます」
坂崎「いい。俺が連れて行く」
  監視員の前を通り過ぎる二人。
  坂崎、突然、和実の耳元で呟く。
坂崎「(小声)おまえを逃がしてやる」
和実「えっ?」
坂崎「二上を連れ出しに行く間、拘留室に入ってろ」
和実「あんた何なの?」
坂崎「黙って言う事聞け」
  怪訝な表情を浮かべる和実。

○ 繁華街
 人で賑わう通り。そのそばの道を走行するB―COA。

○ B―COA車内
  ハンドルを握る真坂。
  助手席に座っている莉果。
  ずっと下を向いている。
真坂「シェンズ、何か楽しい曲かけてくれないか?」
  モニターにポニーテールの女のCGイメージが映る。シェンズが喋り出す。
シェンズ「あなたのリクエストでいいの?」
  真坂、莉果を見つめ、
真坂「なんかリクエストあるか?」
  莉果、顔を上げ、興味深げにモニターを見ている。
真坂「激しいロックのやつ」
  流行りのポップな曲が流れ出す。
真坂「なんで俺の命令を無視するんだよ?」
シェンズ「彼女のリクエストに答えたの」
  莉果、不思議そうな表情。
真坂「何もリクエストしてねぇだろ」
シェンズ「彼女のイメージで検索したら、この曲が出てきたの」
真坂「俺が部外者だからって、クソな扱いしやがって。意外と性格わりぃな、おまえ」
シェンズ「あなたよりは、マシだと思う」
真坂「今、なんて言った?」
  莉果、一瞬クスっと笑う。

○ コンビニ・駐車場
  勢い良く中に入ってくるB―COA。駐車スペースに立ち止まる。
  真坂、慌てて、車から降り、店の中に駆け込んで行く。

○ B―COA車内
  モニターを気にしている莉果。
莉果「ねぇ、聞こえる?」
  モニターの電源が自動的に入り、ポニーテールの女のCGイメージが映る。
シェンズ「はい」
莉果「あの人、何?」
シェンズ「真坂くんのこと?」
莉果「JWAの人じゃないんでしょ?」
シェンズ「彼は、仲間をTENAに殺されたの。私の父がJWAに引き入れたけど、半年前に辞職した」
莉果「どうしてまだ、いるの?」
シェンズ「彼を信頼するパートナーに呼び戻されたの」
莉果「パートナー?友達ってこと?」
シェンズ「デリカシーは、ないけど、悪い人じゃない。あなたもわかるはず」
莉果「あんた、元は、人間だったんでしょ?車の頭脳になるなんて、辛くない?」
シェンズ「平気よ。素晴らしいパートナーがいるから」
莉果「楽しそう。私も人工頭脳になろうかな…」
シェンズ「あなたにもいつか良いパートナーが見つかるわ」
  運転席に乗り込んでくる真坂。
真坂「はぁ、わりぃわりぃ。トイレ借りようとしたら、三人ぐらい待ってやがってさ。
 あっ、急いでたから手洗うの忘れた。まっ、いいか」
  ハンドルに触れる真坂。静電気が起こり、ショックを受ける。
真坂「いてぇ!何しやがる!」
シェンズ「手洗いは、忘れずに」

○ JWA・治療室
  ベッドに横たわるエナ。麻酔を打たれ眠っている。
  石化した右腕を肩に水平にしている。
  エナの前に立つ二上。その後ろに北が立っている。
  二上、鞄の中から黄色い液体の入ったガラス瓶を取り出す。瓶の蓋を開け、注射器に液体を入れる。
  エナの右腕に注射を打つ。
北「石化が解けるのにどれくらいかかる?」
二上「三時間ほどで、黒ずみが消え、また動かせるようになる」
  北と対峙する二上。
二上「次は、おまえの番だ」
北「わかってる。ちょっと待ってろ」
  部屋を出て行く北。代わりに監視員が入ってきて、二上を監視している。

○ 同・前
  北の前にやってくる坂崎。
坂崎「波本は?」
北「大丈夫だ。二上が石化を解く液体を持っていた。まだ隠れ家に残っているらしい。
 担当員を送って調べさせる」
坂崎「どうやって二上を説得したんですか?」
北「取り引きだ。奴を釈放する」
坂崎「副総監は、知っているんですか?」
北「まだだ。後で事情を説明する」
  北の携帯が鳴る。駆け足でその場を立ち去る北。
  坂崎、シメシメとした表情を浮かべる。

○ JWA・治療室
  中に入ってくる坂崎。坂崎、監視員のほうを向き、
坂崎「少しの間、外で待機してください」
監視員「わかりました」
  部屋を出て行く監視員。
  壁隅に立っている二上の前に行く。
坂崎「もうすぐ釈放されるそうだな」
  坂崎を睨みつける二上。
坂崎「女をほっといていいのか?」
二上「和実のことか」
坂崎「自分だけ、独房生活している事を知ったら、ショックを受けるぞ」
二上「どうしようもない。あんたがどうにかしてくれるなら別だが」
坂崎「石化を解く液体のある場所を北さんに教えたのか?」
二上「まだだ」
坂崎「じゃあ、それを出汁に使って、女も一緒に釈放するように条件をつけるんだ」
二上「なんで俺たちを助ける?」
坂崎「勘違いするな」
  坂崎の不気味な眼差しを見つめ、思わず目を背ける二上。
坂崎「余計なことは喋るな。いいな」
  頷く二上。
  部屋を出て行く坂崎。

○ 葵港・第3臨海埠頭
  倉庫街の通りを抜けて、JWAの倉庫のシャッター前に立ち止まるB―COA。

○ B―COA車内
真坂「着いたぞ。早く迎いに来い」
  スピーカーから北の声が聞こえる。
北の声「あと5分待ってくれ」
真坂「おい!」

○ JWA・治療室前
  歩きながら携帯をしまう北。
  治療室に入る。

○ 同・治療室
  二上と対峙する北。
北「薗沢和実を釈放しろだと?」
二上「そうだ。あいつも一緒じゃなきゃ、液体のある場所は、教えん」
北「…」
二上「悩んでいる場合か?」
  険しい顔つきになる北。

○ 同・地下3F拘留室・D―C室
  部屋のドアが開く。坂崎が中に入ってくる。
  奥の椅子に座っている和実。
坂崎「釈放だ」
  薄笑いを浮かべる和実。

○ 同・ガレージ
  大型エレベータの扉が開く。中からB―COAがゆっくりと出てくる。
  円盤状の鉄板の上に立ち止まるB―COA。
  車から降りる真坂と莉果。
  奥の通路から北と、監視員に引き連れられた二上、和実の姿が見える。
  北と対峙する真坂。
真坂「ここには、入らねぇって言ったのによ、ったく」
北「すまん。色々と立て込んでいて…」
  二上と和実、莉果の前を通り過ぎる。
  和実、振り返り、莉果をジッと見ている。
  北、監視員に話し掛ける。
北「休憩所に連れて行ってくれ。俺が戻るまでの間、よろしく頼む」
  莉果、空ろな表情で、監視員に連行される。
  二上と和実がB―COAの後部席に乗り込む。
  B―COAの運転席のドアを開ける北。
  真坂と顔を合わし、
北「お疲れだった。今度また礼をする。帰っていいぞ」
真坂「あのな…後でちょっと話したい事が…」
  車に乗り込む北。
  エンジンがかかる。回転台が動き出し、円盤と共にB―COAが回転し始める。
  疲れた顔で溜息をつく真坂。
真坂「中途半端な時間だな…レンタル屋でも行くか…」
  奥の通路の影からガレージの様子を覗く坂崎。
  真坂、坂崎と顔を合わす。
真坂「坂崎…」
  坂崎、真坂の前に歩み寄る。
坂崎「どうしてここにいるんですか?」
真坂「おまえ…俺をはめたな」
坂崎「何の事ですか?」
真坂「金木は、まだ生きてるんだろ。何のためにあんな芝居を打った?」
坂崎「僕が金木とグルだとでも言いたいんですか?」
真坂「そうじゃないのか?」
坂崎「防弾チョッキを着ていたんですよ。急いでて死体を確認できませんでしたからね」
真坂「まぁいい。これ以上は、もう深く関わりたくないからな」
  立ち去る真坂。
  真坂を睨みつける坂崎。

○ 工場街
  古い工場が立ち並ぶ通り。舗装されていない道を走るB―COA。
  鉄工所跡の建物のそばに止まるブルーのRV車。
  RV車の前に立ち止まるB―COA。
  運転席から北が降りる。
  RV車の運転席からグレーのスーツを着た髭面の男が降りてくる。
  北、男を見つめ、唖然とする。
北「荒崎…」
  サングラスを外す男。男は、荒崎 伸也(46)。
荒崎「二人を降ろせ」
  北、助手席のドアを開け、シートを倒し、後部席にいる二人を下ろす。
  荒崎と対峙する二人。
荒崎「車に乗れ」
  二人、RV車の後部座席に乗り込む。
  荒崎も車に乗り込もうとする。
北「金木の使いっぱしりか?」
  振り返る荒崎。
荒崎「そうじゃない。おまえら風に言うと、良きパートナーだ」
北「今からでも遅くない。俺たちに協力したら、命だけは助けてやる」
荒崎「おまえらの上司は、死んだのにか?」
北「総監は、生きてる」
  ほくそ笑む荒崎。
荒崎「ポケットの中にある携帯の電源が入りっぱなしになっている。俺とおまえの会話は、
 リアルタイムで金木に丸聞こえだ」
北「…」
荒崎「総監がいなくなって、また一段と間抜け度が増したな」
  車に乗り込む荒崎。
  荒崎を睨みつけている北。
  急発進するRV車。
  B―COAのそばを横切り、走り去って行く。

○ RV車車内
  ハンドルを握る荒崎。
  バックミラーに二上と和実の姿が写っている。
  荒崎に話し掛ける和実。
和実「携帯貸してくれない?金木に話したい事があるの…」
  不気味に笑みを浮かべる和実。

○ JWA・治療室
  ベッドで眠るエナ。静かに目を開ける。
  エナの前に立っている坂崎。心配そうにエナを見ている。
エナ「坂崎君…」
坂崎「どう?気分は?」
エナ「最悪よ。私の腕…もう駄目なの?」
坂崎「石化を解く液体を打ったからもう大丈夫だ」
  エナ、自分の右腕を見つめる。
坂崎「下手に動かすなよ。まだ完全に解けていないから」
エナ「なんかさ、訓練学校時代の事、思い出しちゃった。あの時も私、訓練中に腕を捻挫して、
 坂崎君が医務室まで私を運んでくれたんだよね」
坂崎「もういいよ。そんな昔話…」
  エナ、坂崎の顔をまじまじと見つめ、
エナ「同じ顔してるよ、あの時と…」
  坂崎、照れ臭そうに顔を下に向ける。
  坂崎の携帯が鳴る。
  携帯に出る坂崎。
坂崎「はい…」
  坂崎の表情が一変する。
  坂崎、慌てて、部屋を出て行く。
  エナ、坂崎の異変を感じ取る。

○ 葵港・第3臨海埠頭
  倉庫のドアが開き、姿をあらわす坂崎。携帯で話をしながら歩いている。
坂崎「娘?」

○ とある暗室
  パソコンの前に座る金木。
  ディスプレイの光を浴びながら、携帯電話で話している。
金木「ええ。そちらにいるんでしょ?百合川莉果は、私の娘です」
  携帯の受話口から坂崎の声が聞こえてくる。
坂崎の声「確認を取ってみないとわからない。俺は、その件には、関わっていないから」
金木「莉果を連れてきてください」
坂崎の声「…さっき、二上と薗沢を釈放したばかりだぞ」
金木「あの二人を釈放できたんです。娘を連れ出す事ぐらい、簡単でしょ?」

○ 葵港・第3臨海埠頭
  足を止める坂崎。
坂崎「悪いがことわる」
金木の声「そうですか。じゃあ、新型防衛システムの輸送時に、あなたがどんな行動をとっていたか、
 副総監に詳しくお話しなければいけませんね」
  坂崎、苦渋の表情。

○ JWA・休憩室
  片隅のテーブルの前に一人ポツっと座っている莉果。
  莉果のそばに立っている監視員の男。
  莉果、監視員を見つめ、大きな溜息を吐く。
  坂崎が莉果の前に近づいてくる。
  坂崎に敬礼する監視員。監視員と話す坂崎。
坂崎「波本の様子見てきてくれ」
監視員「でも、北さんに彼女を見張るように言われているので」
坂崎「北さんには、俺から話しとく」
監視員「わかりました」
  立ち去って行く監視員。
  莉果の前に立つ坂崎
  莉果、坂崎を怪訝に見つめる。

○ 同・治療室
  落ち着かない様子のエナ。
  監視員の男が中に入ってくる。
エナ「坂崎君は?」
監視員「休憩室です」
エナ「何してるの?」
監視員「百合川莉果の監視です」
エナ「どうして坂崎君が?」
監視員「私は、あなたの監視を頼まれただけなので…」
  憂いの表情を浮かべるエナ。
  暫くして、北が部屋に入ってくる。
エナ「北さん」
北「気がついたのか…」
エナ「早く坂崎君のところに行ってください」
北「どうした?」
エナ「百合川莉果と一緒にいるんです…もしかしたら…」

○ 倉庫街
  走行する白いセダン。倉庫を抜けて、一般道を走り始める。

○ セダン車内
  ハンドルを握る坂崎。莉果が助手席に座っている。
莉果「…どこ行くの?」
坂崎「北さんに頼まれてね。今日一日君を近くのホテルに泊めることにしたんだ」
莉果「いつまで私を拘束する気?」
坂崎「明日の朝、北さんが君の部屋に来て、話を聞く。それが終わったら、すぐにうちに帰れるよ」
莉果「うちには、戻りたくない」
坂崎「どうして?」
莉果「何も聞いてないの?家出中なの」
坂崎「そうか…じゃあ、その事は、改めて北さんと相談しとくよ」

○ ホテル・駐車場
  駐車スペースに立ち止まるセダン。車から降りる坂崎と莉果。玄関口に向かって歩き出す。

○ ホテル・4F
  エレベータから降りる坂崎と莉果。
  通路を歩き出す。
  莉果、突然立ち止まる。振り返る坂崎。
坂崎「どうした?」
莉果「ここ…前に来た事がある…」
坂崎「前にって…?」
莉果「小さい頃…家族と一緒に…」
坂崎「…」
莉果「嘘つき!」
坂崎「何を言ってるんだ…」
  莉果、突然、走り出し、階段を下りて行く。慌てて追いかける坂崎。

○ 同・階段
  勢い良く階段を降りている莉果。
  2F踊り場。金木が立っている。
  立ち止まる莉果。金木と顔を合わし、愕然としている。
金木「ここの事、思い出したか?莉果」
莉果「自宅が火事になって、暫くの間、ここで寝泊りしてた…」
金木「そうだ」
莉果「火事の原因を作ったのは、あんただよね。薬品の調合に失敗したって母さんが言ってた」
金木「あれが離婚する原因にもなった」
莉果「馬鹿みたい」
金木「さぁ、おいで」
莉果「いや」
金木「あいつらは、おまえを使って、お父さんを捕まえようとしているんだ。助けてくれ莉果!」
  首を横に振りながら、後退りする莉果。
  莉果、階段を上ろうとするが、坂崎が立ちはだかる。
  莉果、ウインドブレーカーのポケットに手を入れ、ボールペンを確認する。
  狙いを定めたような眼つきで階段を下り、金木に近づく莉果。
  突然、非常用の扉が開く。北が両手で銃を構えながら金木の後ろに立つ。
北「動くな、金木!」
  立ち止まる莉果。
  坂崎、北を見つめ、愕然とする。
  北、坂崎を見つめ、
北「おまえを尾行してきた。後できちんと説明してもらうぞ」
  動揺する坂崎。
  莉果、坂崎のそばを横切り、階段を上って行く。
北「坂崎!あの子を追え!」
坂崎「は…はい…」
  坂崎、慌てて莉果の後を追う。
  金木の背中に銃口を向けながら、歩き出す北。
北「こっちに顔を向けろ」
  金木、北と顔を合わす。
金木「私を捕まえる事はできませんよ」
  金木、右手の指に黒いケースを挟んでいる。北にそれを見せつける。
  立ち止まる北。
金木「この中に、マリンRが入っています。都内の映画館にこれと同じものをばら撒きました」
北「…」
金木「5分後に連絡がくる。私が携帯に出られなかった場合、仕掛けたケースから一斉にガスが噴射します」
  悔しげに銃を下ろす北。
北「二上達にやらせたのか?」
金木「そこを一歩も動いちゃいけませんよ」
  金木、ほくそ笑みながら、北のそばを横切り、階段を降りて行く。

○ ホテル・駐車場
  グレーのワゴンの後部席に乗り込む金木。
  タイヤを軋ませながら、急発進するワゴン。

○ ワゴン車内
  後部のシートに座る金木。
  ハンドルを握る和実。バックミラーに写る金木の顔を見つめ、
和実「莉果さんは?」
金木「うざい奴に邪魔された」
和実「じゃあ、会えなかったんですか?」
金木「会えたよ。まるでゾンビを見ているような目で私を見ていたけどね」
  不気味な笑みを浮かべる金木。

○ 国道
  二車線の道路。
  まだらに走る車をジグザクに追い抜き前に進むワゴン。
  ワゴンが交差点を通り過ぎると、信号が赤に変わる。交差点の右側からB―COAが現れ、
  国道を走り出す。
  加速し、ワゴンを追うB―COA。

○ B―COA車内
  ハンドルを握る真坂。助手席に北が乗っている。
真坂「しかし、人権無視もはなはだしいな。帰れって言ったり、無理矢理呼び戻したり」
北「そう言うな。本当は、好きなんだろ、この仕事」
真坂「おいおい、開き直るなよ。人の楽しみ奪っといて」
北「レンタル屋でDVDを選ぶのが楽しみなのか?」
真坂「おまえ、映画見ないのかよ」
北「スクリーン派だからな、俺は」
真坂「何気取ってんだか」
北「あまり近づきすぎるなよ。バレたら何もかもアウトだ」
真坂「部外者に運転させといて、偉そうに…」
北「シェンズ、ハイウェーブサーチの感度を最大にして、ワゴンから出ている電波をとらえろ」
  コンソールのモニターに映るポニーテールの女のCG。
シェンズ「スタンバイ、OK」
真坂「何をする気だ?」
北「金木の携帯の電波を捕らえる。マリンRを仕掛けた話が本当なら、二上が連絡してくるはずだ」
真坂「なるほど。その電波を辿って、二上の居場所を割り出すってわけね。で、『マリンR』って何?」
北「究極のエコ兵器だ」
真坂「エコ贔屓だか、兵器だか知らんが、かなりやばいモノらしいな」
  モニターに音声波形の画面が映し出される。
シェンズ「電波を捕らえました。音声を出力します」
  スピーカーすら金木と二上の会話が聞こえてくる。
  耳を澄まして話を聞く真坂と北。
金木の声「今どこにいる?」
二上の声「池袋です」
金木の声「どこまで進んだ?」
二上の声「新宿、渋谷と3箇所に配置しました」
金木の声「30分後にもう一度連絡する」
  電話が切れる。
北「シェンズ、どうだ?」
  電子音が鳴り、モニターに地図のイメージが映し出される。
シェンズ「判明しました。西池袋1丁目付近です」
真坂「金木はどうするんだ?」
シェンズ「二上が先だ」

○ 国道
  次の交差点を左に曲がるB―COA。

○ 池袋・駅前繁華街
  混雑する人ごみの中を歩く二上。
  タクシー乗り場の前に向かう。
  B―COAがロータリー交差点を通り、こちらにやってくる。
  B―COAに気づく二上。
  二上、脇道に止まっている黄色のタクシーの助手席に乗り込む。

○ タクシー車内
  二上、ジャンパーのポケットから短銃を取り出し、ドライバーの脇腹に銃口を押し当てる。
二上「早く出せ」

○ B―COA車内
  辺りを見回している北。
  映画館の看板を見つけ、
北「あれだ」
  急ブレーキをかける真坂。前のめりになる北。
北「どうした?」
  フロントガラス越しに見える道路。
  タクシーが目の前を横切り、反対車線を勢い良く走り去って行く。
真坂「…ったくマナーなってねぇな、最近のタクドラは」
シェンズ「二上を発見しました」
  モニターに繁華街周辺の録画映像が映し出される。タクシー乗り場にズームアップする。
  タクシーの前に立つ二上が映っている。
北「さっきのタクだ!」

○ 池袋・駅前繁華街・道路
  Uターンし、スピードを上げ走り出すB―COA。

○ 副都心線
  激しくクラクションを鳴らしながら、前を走る車を追い抜いて行くタクシー。
  その後を追うB―COA。
  赤信号の交差点を突っ切るタクシー。
  横から出てきた軽トラと衝突しながら、さらに加速する。
  B―COA、交差点で立ち往生する車を擦り抜ける。

○ B―COA車内
真坂「早く止めないと、ややこしいことになるぜ。COBを使うぞ」
北「待て。シェンズ、エレクトロジャミングでタクシーから出る電波を妨害しろ」
シェンズ「わかりました」
  ハンドルに設置されている『ELECTRO JAM』のボタンが光る。
真坂「そんなことしてどうする?」
北「金木と連絡を取らせないようにするためだ」
真坂「タクシーは、どうやって止めるんだ?」
北「もっと近づけ」

○ タクシーの後ろにぴったりとつくB―COA

○ B―COA車内
北「シェンズ、シールド!」
シェンズ「了解」
  センターコンソールのパネルの「SHOCK ABSORPTION SHIELD」のボタンが光る。

○ B―COAの車体の下から、シールドがせり上がる
  シールドは、車の前面を覆い、3mの高さまで一瞬にして伸びる。
  シールドから発生する磁力によって、タクシーの車体がシールドに吸い寄せられて行く。
  タクシーの後部とシールドがピタリとくっつく。
  急ブレーキをかけ、立ち止まるB―COA。
  タクシーも一緒に立ち止まる。
  車から降りる北。両手で銃を構え、タクシーに近づいて行く。
  ドライバーと一緒に車から降りる二上。
  ドライバーの首に腕を回し、ドライバーの顔に黒いケースの噴射口を向ける。
二上「私に近づくな!」
北「もう諦めろ。金木と会った時点でおまえの人生は、終わってた」
二上「皆、このガスで未来の燃料になるといい」
  タクシーの陰に隠れていた真坂が後ろから二上に飛び掛かる。
  路面に倒れる二人。真坂、二上が持っていたケースを奪い取り、すくっと立ち上がる。
  二上の前に立ち、銃を向ける北。
北「ガスをどこに仕掛けた?」
二上「知るか!」
  真坂、黒いケースの噴射口を二上に向ける。
真坂「おまえが燃料になって、社会に貢献しろよ。燃費悪そうだけど…」
  真坂、ボタンに指を当てる。
二上「わかった…全部喋る…」
  北と顔を合わす真坂。
真坂「今日の仕事は、ここまでだ」
北「悪かったな。今度また寿司奢るよ」
真坂「寿司より現金のほうが…」
北「…素直に戻って来たらどうだ?」
  真坂、煮え切らない表情。

○ ビル街・裏通り
  狭い路地を走る莉果。
  正面を見つめ、突然、立ち止まる。
  坂崎が立っている。
  坂崎、莉果にゆっくりと近づいて行く。
莉果「あんた、あいつの仲間なの?JWAのメンバーのくせに」
坂崎「JWAにもいろんな人間がいる」
莉果「クズ!」
  坂崎、憮然とした表情で、莉果に迫る。
  莉果、坂崎にボールペンを振りかざす。
  坂崎の右腕にボールペンが突き刺さる。
  苦痛の表情の坂崎。
  莉果、後退りし、そのまま走り去って行く。

○ 倉庫地下・JWA・OP室
  中に入ってくる北。
  オペレートシテスムのモニターの前で作業する男が北に話し掛ける。
オペレート員「新宿、渋谷、池袋の各映画館の捜索作業が終わったとの報告がありました。
 二上の証言通り、全てのガス装置を発見しました」
北「坂崎から連絡は?」
オペレート員「まだです。こちらから連絡しているんですが、携帯の電源が入っていないようで、
 つながりません」
北「至急探し出して、拘束しろ」
オペレート員「わかりました」
  別の男が北に声をかける。
オペレート員2「北さん、副総監…じゃなかった、総監がお呼びです」
  険しい顔つきの北。

○ 同・総監室
  デスクの前に立つ北。
  シートに深くもたれ、煙草を吸っている浅海。
浅海「坂崎が行方不明になっていると聞いたが、どういうことだ?」
北「坂崎は、金木と何らかの関係を持っています」
浅海「証拠は、あるのか?」
北「調査は、これからです」
浅海「百合川莉果を探し出し、保護したそうだな。しかし、君に、そのような任務は、与えていない。
 それと、二上と薗沢の釈放の件をどうして私に報告しなかった?」
北「金木の情報を知るために、百合川莉果が必要だったんです。釈放の件は…申し訳ございません」
浅海「椎名総監は、事後承諾を受けたかもしれんが、私は、そうはいかんぞ。今現在ここの責任者は、私だ。
 JWAのメンバーの行動は、全て私の責任になる」
北「承知しています」
浅海「これからは、勝手な行動は、慎め。今度、こんなマネをしたら、ただでは、すまさん。
 自分の立場を自覚しろ。真坂のようになりたくなかったらな」
  顔を顰める北。

                                                      ―つづく―

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