『ナイトライダー ハイジェネレーション』 作 ガース「ガースのお部屋」




○ 地下鉄・メトロレッドライン駅・ホーム
  電車が止まり、ドアが開く。
  乗客が一斉に降りて、ホームを埋め尽くす。
  溢れる乗客達の合間を縫って走り出す少女、テイミー・ウェイバリー(14)。
  赤いハンチング帽をかぶり、チェックのワンピース姿。キャメルのショルダーバックを肩にかけている。
  バスケットボールのようなものを両手に持ちながら、階段を駆け上るテイミー。
  女子トイレに駆け込む。

 

○ 同・女子トイレ
  静かに中に入るショート・カットの女・ベティ・コール(28)。青いサングラスに、黒のライダースーツを身に着けている。
  ベティ、スーツから小銃を取り出し、サイレンサーを取り付ける。
  4つのブース。左から順番にドアを開けて行く。
  1つ目、誰もいない。
  2つ目、3つ目・・・も誰もいない。
  4つ目を開くベティ。その瞬間、機関銃のような猛烈な銃声が響き渡る。
  弾丸で体を蜂の巣にされ倒れるベティ。
  4つ目のブースに隠れていたテイミー。
  体をぶるぶる震わせている。
  テイミーが両手で持っているバスケットボールの両側から砲身のようなものが伸びている。
  しばらくして、その砲身が短くなり、ボールの中に格納される。
  ボールから女性的な電子の声が聞こえる。
電子の声「さあ、早く」
  テイミー、頷くと、女を跨いでトイレから走り去る。

 

○ ロサンゼルス・ダウンタウン
  歩道を全速力で走っている男。
  トーマス・フェントス(31)。短髪。上下黒の革ジャンとズボン姿。
  トーマスを追って走っているマイク・トレーサー。
マイク「止まれ、トーマス」
  トーマス、構わずセントラルマーケットの駐車場に駆け込んで行く。
  右耳に取り付けているワイヤレスイヤホンに指を当てるマイク。
マイク「キット、トーマスがマーケットに向かっている」
キットの声「30秒で到着します」
マイク「遅い」
キットの声「私を駅前に止めるからいけないんです。今、観光客の団体が横断歩道を渡っていて、前に進むことができません」
マイク「パトカーになるなり、ターボブーストを使ってもいいから、急げ」

 

○ セントラルマーケット
  陳列棚の合間を駆け抜けるマイク。
  突き当たりで立ち止まる。
  ペットフードの棚の前。
  小さな男の子の頭に銃口を当てているトーマス。
  男と向き合うマイク。
マイク「子供を離せ」

 

○ ナイト3000車内
キット「緊急事態ですか、マイク」
  赤外線透視の機能を使うキット。
  フロントガラスにマーケット店内の様子が映し出される。
  マイクがトーマスに話しかけてる。

 

○ セントラルマーケット
トーマス「疫病神に会っちまうなんて。全くついてないぜ今日は」
マイク「また俺に捕まえてもらいたいんだろ?だったらそこで大人しくしてろ」
  引き金に指を当てるトーマス。
  マイク、右耳につけているワイヤレスイヤホンに聞こえるように話す。
マイク「賞金稼ぎから強盗に職替えか、会う度にランクが下がるな」
トーマス「うるせえ!」

 

○ セントラルマーケット・駐車場
  駐車スペースを出て、店の前に行くナイト3000。
  店の入口の前に立ち止まる。
  ナイト3000のスキャナーがうなる。


  
○ セントラルマーケット
  突然、店内の明かりが消える。
  闇に包まれる店内。
  あたふたするトーマス。
  マイク、素早くトーマスに駆け寄り、取っ組み合う。
  凄まじい勢いのパンチをトーマスの腹に食らわし、右腕をひねり上げる。
  銃を落とすトーマス。
  逃げる男の子。
  激しく抵抗するトーマス。マイク、トーマスを床にねじ伏せ、身動きが取れないようにする。
  店内に灯りが点る。
  周りにいた客達、マイクの見事な捕り物を見て拍手喝采。
  照れるマイク。
マイク「どうも・・・」

 

○ 同・駐車場
  店の前に二台のパトカーが止まっている。
  マーケットの出入口からマイクとトーマスが一緒に出てくる。
警官「ご協力感謝します」
マイク「市民の義務です」
  トーマスと話すマイク。
マイク「おまえと一緒にいた女は、どこに行ったんだ?」
  トーマス、マイクを無視し、警察に喋り出す。
トーマス「腕が痛い。救急車を呼んでくれ」
マイク「救急車?」
  マイクを睨みつけるトーマス。
トーマス「こいつに腕をねじられて。もしかたら骨が折れたかもしれない」
マイク「大袈裟だな」

 

○ ナイト3000車内
  バイオセンサーでトーマスの体をスキャンするキット。
  フロントガラスにトーマスの全身のX線画像が映る。
  右腕の部分をアップ。

 

○ セントラルマーケット・駐車場
  ナイト3000からキットの声が聞こえる。
キット「骨に異常は見られません」
  キットの声に驚くトーマス。
マイク「だってさ」
トーマス「誰だ今の声は?」
マイク「俺の知り合いのお医者さん」
  トーマス、警官に訴える。
トーマス「激しい痛みでさっきからズキズキしてる。動かなくなったらおまえらが責任とれよ」
  中年の警官Aがマイクに話し出す。
警官A「念のため、医者に連れていきます」
  うんざり顔のマイク。警官にトーマスを引き渡す。
  警官に左腕を捕まれ、連行されるトーマス。マイクの顔を見ながら、ニヤニヤしている。


  
○ ナイト3000車内
  運転席に乗り込むマイク。
マイク「やれやれ」
キット「重要参考人を易々と警察に引渡して良かったんですか、マイク」
マイク「仕方ないだろ。怪我人の芝居をされちゃ色々とやりにくいしな」
キット「これからどうしますか?」
マイク「パトカーについて行こう。医者の診断を受ければ、すぐに嘘がばれる」
  エンジンをかけるマイク。

 

○ セントラルマーケット・駐車場
  クリーンなエンジン音を鳴り響かせながら、駐車場を出て行くナイト3000。

 

○ 国道・北方面
  見渡しの良い直線道路。
  トーマスを乗せたパトカーが走っている。
  その後ろを追って走るナイト3000。

 

○ ナイト3000車内
  ナイトインダストリーズ・衛星監視室(SSC)のオペレーター卓の座席に座っているサラ・グレイマンの姿が
  フロントガラスのウインドゥ画面に映し出されている。
サラの声「メトロレッドライン駅のトイレで女が銃殺された」
マイク「メトロレッドライン?三十分前にその駅でトーマス達を追っていたけど」
  フロントガラスに、女の無惨な遺体の写真が映し出される。
マイク「こりゃ酷い。機関銃で蜂の巣か・・・トーマスと一緒にいた女に間違いない。名前は?」
サラの声「複数の身分証明証を持っていて、いろんな偽名を使っていたみたい。女の体内から15mm口径の特殊弾が見つかった。
 海洋調査員のジェイクが殺された時に使われた弾丸と同じよ」
マイク「3人目の犠牲者か・・・」
サラの声「気になることがもう一つ。事件現場で少女が目撃されてるの」
マイク「少女?」
サラの声「歳は、14、5歳ぐらい。ハンチング帽と眼鏡、それと、バスケットボールのようなものを持っていたらしいわ」
マイク「トイレでシュートの練習でもしてたのか?」
キット「トイレにはゴールポストがあるのですか?」
サラの声「10分前にあなたと話がしたいっていう男の人から連絡があったわ」
マイク「誰?」
サラの声「声を聞いた感じでは、かなり高齢の人よ」
マイク「名前は?」
サラの声「聞く前に電話が切れてしまったの。だから、ゾーイに男が連絡してきた場所を調べてもらった。ロス市内のイースト・ファースト通りの公衆電話」
マイク「今時公衆電話かい?」
キット「我々がいる場所からかなり近い場所です」
マイク「わかった。探してみる」
サラの声「くれぐれも道草しないでね、マイク」
  サラの画面が消える。
マイク「俺がいつ道草したよ」
キット「午前中に海岸でビキニのお姉さま方に声をかけていませんでしたっけ?」
マイク「あれは仕事の一環。トーマスを見かけなかったか話を聞いてただけ」

 

○ 交差点
  信号が赤に変わる。
  停止線に沿って止まるパトカー。
  パトカーの後ろに止まるナイト3000。
  暫くして、赤いリムジンバスが猛烈なスピードでパトカーの前を横切って行く。
  ナイト3000のスキャナーが唸る。

 

○ ナイト3000車内
キット「マイク、さっき通り過ぎたバスですが、かなりのスピードが出ていました。それに、車内からの異常な高音をキャッチしました」
マイク「高音?」
キット「記録した音声を再生します」
  フロントガラスに音声スキャンの波形データの画面が映し出される。
  音声を再生する。
  乗客の女性達の悲鳴のようなものが聞こえる。
マイク「バスを追うぞ」
キット「トーマスはどうするんです」
マイク「警察に任せる」

 

○ 交差点前
  信号が青に変わる。
  走り出すパトカー。
  ナイト3000、アタックモードにトランスフォームしながら左折し、猛スピードで走り出す。

 

○ ナイト3000車内
  急加速し、グングンスピードが上がっている。
キット「あと800mでバスに追いつきます」
  前を見つめるマイク。
マイク「いたぞ。あのバスだ」
  加速しながら、ふらふら蛇行しているリムジンバス。
  バスのテールランプが赤く光るのを確認するマイク。
キット「ブレーキの故障ではないようですね」
マイク「運転手の居眠りか、あるいはバスジャックかも」
キット「今、音声モニターが銃声のような音をキャッチしました。やはり、バスジャックのようです」
マイク「増幅パルスを送ってブレーキをコントロールできないか?」
キット「可能ですが、あのスピードで急ブレーキをかけたら、中の乗客が危険です」
マイク「よし、前に出るぞ」

 

○ 国道・西方面
  さらに加速するナイト3000。
  左側のレーンに入る。暴走するバスを横切り、バスの前に回り込む。
  スピードを落とし、バスの進路を阻むナイト3000。
  バスが激しくクラクションを鳴らす。

 

○ ナイト3000車内
  フロントガラスにバスの様子が映し出されている。
マイク「バスを安全に止められるスピードになったら、パルスを出せ」
  突然、バスが急ブレーキで立ち止まる。
  画面を見て、唖然とするマイク。
マイク「もう出したのか?」
キット「いいえ。バスが急ブレーキをかけたんです」
  ブレーキを踏み込むマイク。

 

○ 国道・西方面
  華麗に180度ターンするナイト3000。
  そのまま、バスの前に近寄り、立ち止まる。
  ガルウィングのドアを開けるマイク。
  車から降り、バスに駆け寄る。
  バスの扉が開いている。
  バスの中に乗り込むマイク。

 

○ リムジンバス・車内
  運転席の近くに立ち、銃を構えるマイク。
  通路に犯人と思しき男がうつ伏せで倒れている。
  銃をしまい、男を確認するマイク。
  乗客がその様子を見守っている。
  目の前にいるベレー帽をかぶった絵描き風の若い男に話しかけるマイク。
マイク「何があった?」
男「この男が突然銃を発砲して、バスを乗っ取ったんです。背の高い高齢の男の人がこの男を取り押さえようとして揉み合いになって・・・」
マイク「その人はどこ?」
男「慌ててバスを降りて、出ていきましたよ」
  マイク達の様子を見ているバスの運転手ゲイリー・モハラ(35)。
  ゲイリー、制服のポケットからスマホを取り出す。
  スマホのカメラレンズをマイクに向け、シャッターボタンを押す。

 

○ 国道・北方面
  走行しているパトカー。
  暫くして、赤色のSUV車が猛スピードでパトカーの後ろに迫ってくる。
  対向車線に出て、パトカーと並走するSUV。
  パトカーに乗る二人の警官がSUVを見ている。
  SUVの助手席の窓が開く。
  黒い能面をかぶった男がマシンガンの銃口をパトカーに向け撃ち始める。
  パトカーの運転席の窓が割れ、運転していた警官が銃弾を浴びる。
  後部席にいる警官。銃を抜き、応戦しようとするが、すぐに銃弾を浴び、息絶える。
  パトカーの前に回り込むSUV。パトカーを塞き止める。
  パトカーからが降りるトーマス。
  そそくさとSUVの後部席に乗り込む。
  猛スピードで走り去るSUV。

 

○ SUV車内
  後部席に座るトーマス。
トーマス「俺まで殺す気か?もっと丁寧にやれ」
  運転している男。黒い能面をはずす。
  助手席に座っていた男も能面を取る。
  ブロンドの短髪のハンサムな顔の男・アレク(29))がトーマスに向かって喋り出す。
アレク「ボスの命令がなけりゃ、お前は今頃あの世にいた」
トーマス「兄貴分の俺に向かって、何だその態度は?」
アレク「一度ぐらい兄貴らしいことしてから言えよ」
トーマス「なに!」
  アレクの胸倉を掴もうとするトーマス。
  アレク、すかさず上着のポケットから銃を出し、トーマスの額に銃口を当てる。
アレク「おまえは、俺に借りを作ったんだ。わかってるのか?」
  引き金に指を当てるアレク。
  トーマス、観念した様子で、
トーマス「くそっ。それより、ベティから連絡は?」
アレク「まだだ」
  不機嫌な顔を浮かべながら、シートに深くもたれるトーマス。

 

○ 国道
  交差点を曲がり、北上するナイト3000。アタックモードの状態で走っている。
マイク「パトカーの現在位置は補足できているか?」
キット「ご心配無用です」

 

○ ナイト3000車内
  フロントガラスに地図の画面が映し出されている。パトカーの位置を示す赤い点が止まったままになっている。
キット「まもなく追いつきます」
  怪訝な表情を浮かべるマイク。
マイク「ちょっと待て。道の真ん中にパトカーが止まってるぞ」
キット「変ですね。すでに警察署に到着していると思っていたのですが」
  前を見つめ、愕然とするマイク。
  蜂の巣にされて止まっているパトカーを見つける。
マイク「あれじゃ、一生警察署に辿りつけないな・・・」

 

○ ロサンゼルス・郊外
  人里離れた農村地帯。
  長い一本道をゆっくり走っている黄色いタクシー。

 

○ タクシー車内
  後部席に乗っているテイミー。
  両手で大事そうに白い金属型のボールを持っている。
  バックミラーでテイミーの様子を見るドライバーの男。
ドライバーの男「バレーでもやるのかい?」
テイミー「あっ、これ弟のプレゼント」
ドライバーの男「やけに大事そうにしてるから。そうか誕生日か」
テイミー「そうなの」
ドライバーの男「いくつだい?」
テイミー「七歳」
ドライバーの男「俺にもそれぐらいの息子がいるけど、ボール遊びをしたがる年頃だよな」
  テイミー、嘘をついている自分に嫌悪し、口ごもる。

 

○ ロサンゼルス・郊外 ウインドファーム地帯
  巨大なプロペラがたくさん回っている。 畑の前に立ち止まるタクシー。
  車から降りるテイミー。
  走り去って行くタクシー。
  テイミー、周りを確認すると、ボールに向かって喋り出す。
テイミー「喋っていいわよトッピー」
  ボール、反応なし。
テイミー「もう誰もいない。ここなら平気」
  突然、電子音の声が鳴り響く。
電子の声「ここがテイミーの住んでいる場所?」
  首を横に振るテイミー。
テイミー「前におばあちゃんの家がここにあったの。でもおばあちゃんが死んで、家も取り壊されたの」
電子の声「これからどこに行くの」
テイミー「小さい頃遊んでた秘密の場所があるの。そこに案内するわ」
  プロペラのそばの細い通りを歩き出すテイミー。

 

○ ナイトインダストリーズ・衛星監視室(SSC)
  360度回転するジャイロスコープのようなゲージの中に停車しているナイト3000。
  レーザースキャンされ、ボディチェックを受けている。
  オペレーター卓の前で話すマイクとサラ。
サラ「だから道草するなって言ったのよ」
マイク「目の前でバスジャックが起こってるのに、見過ごせって言うのか?」
サラ「それは私達のミッションには関係ないでしょ」
マイク「必ず見つけてやるさ」
サラ「いつまでに?」
マイク「1時間くれ」
サラ「無理に決まってる」
  二人の前にやってくるビリー。
ビリー「まあまあ落ち着いてよ二人とも。デートを待たされてイライラしているJKみたいだよ、サラ」
サラ「昔待たされたことがあるわ」
ビリー「まじで?」
サラ「水族館に行こうってあなたが誘ったのに、約束の時間を二時間もオーバーしてのこのこやってきて、謝りもしなかった」
  ビリー、笑いを堪えている。
マイク「そんなことあったっけ?」
サラ「あなたは覚えていなくても、待たされたほうはちゃんと覚えているものよ」
ビリー「この際だから、またデートしたらどう?水族館で」
  一瞬顔を合わせた後、互いに顔を背けるマイクとサラ。
マイクとサラ「(同時に)ありえない」
  ナイト3000のほうへ歩いて行くマイク。
  オペレーター卓の座席に座るサラ。
  眼鏡をかけて、データのチェックを始める。
  二人の様子を見て、ため息をつくビリー。
  ビリーのそばにやってくるゾーイ。
ゾーイ「また見せつけられちゃったわね」
ビリー「僕達もああいう会話やってみる?」
ゾーイ「ベティの身辺調査は終わったの?」
ビリー「まだ途中だけど」
ゾーイ「だらだらしないで」
  立ち去るゾーイ。
ビリー「なんか悪い事言った?」

 

○ ナイト3000車内
  運転席に座るゾーイ。
  ハンドル周りのスイッチ類を見渡し、タブレット端末にチェック内容を記録している。
ゾーイ「他に調子が悪いところはないキット」
キット「いいえ。ゾーイのボディチェックはいつも完璧です」
ゾーイ「お世辞がうまいわね。私は情報分析の担当だからこういうことはまだ慣れてないけど、あなたがそう言うなら少しは腕が上がったのかもね」
キット「マイクと比べれば、雲泥の差です。この間もガソリンゲージのチェックを怠って、危うくガス欠になるところでした」
  運転席のドアの前に立っているマイク。
マイク「泥臭くて悪かったな」
ゾーイ「あら、マイク。聞いてたの?」
マイク「チェックを見落としいる箇所があるぞゾーイ。キットのお喋りが日に日に酷くなってる」
ゾーイ「それは、キットが優秀な人工知能だからよ。何も喋らなくなったら、困るでしょ?」
マイク「でも、余計なことグチグチ言うのは、良くないね」
ゾーイ「キットは正直者なのよ」
キット「そうです。あなたのありのままをお伝えしているだけです」
マイク「それが余計なんだよ」
  マイクのそばにやってくるサラ。
サラ「一時間前にあなたに会いたいって言って電話をかけてきた男の人からまた連絡があったわ」
マイク「場所は?」
サラの声「サンタモニカで有名な高級バーガーショップ」
マイク「わかった。行ってみるよ」

 

○ 高級ホテル・プール
  ビキニの美女達がプールサイドで戯れて いる。
  リクライニングチェアに寝そべるセレブ級の美女達。
  その横のチェアに寝そべるサングラスをかけた肥満の男クラール・ラスフォード(47)。
  髪は薄い七三分け。髭を生やしている。
  美女達のお尻を眺めニヤニヤしている。
  クラールの前に立つアレクとトーマス。
  クラール、二人を見て、ため息をつく。
アレク「トーマスを連れてきました」
クラール「おまえは下がれ」
  頭を下げ、足早に立ち去るアレク。
  トーマスをまじまじと見つめるクラール。
  そばに置いていたテンガロンハットを持ち、頭にかぶる。
クラール「誰に追われていたんだ?」
トーマス「マイク・トレーサー。以前奴に捕まったことがあります」
クラール「ジェイクの時は、うまくやったのに。腕が鈍ったのか?それとも、私の見込み違いだったのか?」
トーマス「ベティは・・・戻ってますか?」
クラール「女は死んだ」
  愕然とするトーマス。
トーマス「どこで?」
クラール「駅のトイレで蜂の巣にされた。例のボールにな」
  怒りに震えるトーマス。
トーマス「くそっ!」
クラール「博士と50万ドルの賭けをしているんだ。私が負けたら、おまえらには、当分の間ただ働きしてもらうことになるぞ」
  肩を落とすトーマス。
クラール「さっさとあの娘を見つけ出さないから、恋人を失うはめになるんだ」
トーマス「まだロス市内にいるはずです。もう少し時間をください」
クラール「ガキはアレクが探す」
  クラール、テーブルに置いていたスマホを持つ。
  トーマスにスマホで撮影されたマイクの写真を見せる。
クラール「おまえは、この男を始末しろ」
  驚くトーマス。写真を指差し、
トーマス「その写真、どこで?」
クラール「さっきゲイリーが送ってきた。奴のバスに乗り込んできたそうだ」

 

○ 農村地帯
  八十年以上前に建てられた古い小屋。
  今にも崩れそうな雰囲気。
  遠くから小鳥のさえずりが聞こえてくる。
  小屋の庇の下に立っているテイミー。両手で白いボールを持っている。
テイミー「あなたっていろんなボールになれるのね」
電子の声「今のところ、バレーボールとバスケットボールにしかなれない」
テイミー「何で武器がついてるの?」
電子の声「私にもわからない」
テイミー「どう。ここなら誰も来ない」
  白いボールから電子の声が流れる。
電子の声「ここがあなたの遊び場所?」
テイミー「小さい頃、親戚の子とよく遊んだわ。まだ残ってて良かった」
電子の声「これからどうするの?」
テイミー「今日は、ここに泊まるつもり。そのためにコンビニでたくさんパンを買い込んだのよ」
電子の声「一人で寂しくないの?」
テイミー「どうせ家に帰っても誰もいないし。トッピーがいれば別だけどね」
電子の声「トッピー?」
テイミー「前に飼ってた小鳥の名前。外で遊んでたらいなくなっちゃったんだ」
電子の声「パパとママはいないの?」
テイミー「パパは仕事で夜遅くまで戻ってこないし、ママは、二年前に交通事故で死んだ。私は毎晩自分で食事を作って絵を描いて寝るだけ」
電子の声「絵を描いてるの?」
テイミー「あなたと初めて出会った時もあそこで山の絵を描いてたの」
電子の声「ここで描くの?」
テイミー「タブレット置いてきちゃったから今は描けないけど、明日画材道具一式買い揃えて、あなたを描いてあげる」
  小屋の中に入って行くテイミー。

 

○ サンタモニカ市内「オーシャン・バーガー」店前
  店の前に止まるナイト3000。
マイク「中を見てくる」
  車から降りるマイク。
  階段を駆け上り、店の中に入る。
  暫くして、ナイト3000の前に青いジーパンに黒の革ジャンを着た長身の男が近づいてくる。左手にハンバーガーの入った袋を持っている。
  ドアノブを何度も引き、扉を開けようとする男。
キット「どれだけ頑張っても無理ですよ。あきらめなさい」
男「俺のことを忘れちまったのか、キット」
キット「どうして私の名前を?」
  男の顔がドアの窓に映る。男は、マイケル・ナイト。
  年老いたが、身なりは若々しい。
マイケル「しばらく見ないうちにボディまで変わったのか」
キット「私のボディは最初からマスタングですが」
マイケル「昔のことは、忘れちまったか。30年も経ったんだ。無理もないか」
キット「マイクのお知り合いの方ですか?」
マイケル「そんなところだ。ジュニアはどこに行った?」
キット「ジュニア?」
  ×  ×  ×
  バーガー店から出てくるマイク。
  階段を駆け下り、ナイト3000に乗り込む。

 

○ ナイト3000車内
  運転席に座るマイク。
マイク「誰もいなかったぞ。ただのいたずら電話じゃないのか」
  後ろからマイケルの声が聞こえる。
マイケルの声「あの店は、マッシュルームとソースの味が最高だぞ」
  後ろを見て、驚くマイク。
  後部席に座り、チーズバーガーを頬張っているマイケル。
マイク「マイケル・・・」
マイケル「久しぶりだなマイク」
キット「私の中での食事は厳禁だと言ってるのに、言うことを聞いてくれないんです。なんとかしてくださいマイク」
マイク「どうして後ろに?」
キット「後ろのほうが落ち着くんだそうです」
マイケル「キットの前でバーガーを食うとグチグチ言われるんでな」

 

○ ロス市内・大通り
  片道三車線の道路。真ん中のレーンを軽快に走るナイト3000。
マイケル「しばらく来ないうちに、随分街の雰囲気が変わったな」

 

○ ナイト3000車内
マイケル「なんてったってロスは15年ぶりだからな」
  マイク、憮然とした様子。
マイケル「ナイト財団を辞めてからずっと山に引きこもってたんだ」
  マイクの顔を見つめるマイケル。
マイク「山暮らしに飽きて、ここにやってきたってわけ?」
マイケル「まあな。二代目マイケル・ナイトを襲名したんじゃなかったのか?」
マイク「でも、初代が戻ってきたし。ややこしくなるから、またマイクに戻さないと」
マイケル「なあ、ジュニア」
マイク「ジュニア?もしてかして、俺のこと?」
マイケル「わかりやすいだろ?ところでジュニア、三代目はまだか?」
マイク「会ってからまだ10分も経たないのにもうそんな話?」
マイケル「そろそろ孫の顔を見たくてな」
マイク「結婚もまだなのに」
マイケル「フィアンセがいるんだろ?俺は財団にこき使われている間に、婚期を逃したからな」
マイク「母さんは、最初の相手じゃなかったんでしょ?」
マイケル「・・・ああ。ジェニファーの前に別の婚約者がいた。だが、結婚式の当日、殺し屋に撃たれて死んだ。俺の身代わりになってな」
マイク「余計なこと聞いちゃったかな・・・」
マイケル「気にするな。もう昔のことだ」
キット「マイク、ロス市内のマーケットで強盗事件が起きたようです。犯人は、セントラルマーケットに立てこもった男と似ていると言う情報が入っています」
マイク「まさか、トーマスじゃないだろうな?」
キット「ツイッターに出回っている現場の写真です」
  フロントガラスに、スーパー内で主婦を人質に取っているトーマスの写真が映し出される。
マイク「何考えてるんだ、あいつ・・・」
キット「新しい情報が入りました。男は、何も盗まず人質を解放したそうです。白のCRVに乗って、港の方角へ逃走中です」
マイケル「一体何の事件を追ってるんだ?」
マイク「説明は後。マイケルは何しにここへ?」
マイケル「その説明も後にしよう」
  アクセルを踏み込むマイク。

 

○ ロス市内・港
  ヨットハーバーや、街角ショップ、カフェなどが並んでいる通りを走り抜けるナイト3000。
  白いCRV車を追跡するパトカーの後ろに近づく。

 

○ ナイト3000車内
マイク「よし、追いついた」
マイケル「マイクロジャムで犯人の車のタイヤをパンクさせるんだ」
キット「マイクロジャム?」
  ボタンを探しているマイケル。
マイケル「ボタンはどこにあるんだジュニア」
マイク「俺がやるから、黙って見てて」

 

○ ロス市内・港
  突然、スピンして立ち止まるCRV。
  車から降りるトーマス。
  機関銃の銃口をパトカーに向け、撃ち始める。
  急ブレーキで立ち止まるパトカー。
  パトカーのボディに無数の穴が空いている。
  パトカーの4輪のタイヤ全てに穴が空き、パンクする。
  トーマス、パトカーの後ろからやってくるナイト3000に向かって、機関銃を発射する。
  機関銃の弾を余裕で跳ね返すナイト3000。
  唖然とするトーマス。弾がなくなると、機関銃を捨てて、古い倉庫のほうに向かって走って行く。
  立ち止まるナイト3000。

 

○ ナイト3000車内
マイク「ちょっと待ってて」
マイケル「俺も手伝うぞ」
マイク「一般市民を巻き込むわけにはいかないからね」
  車から降り、トーマスを追って走り出すマイク。


  
○ 倉庫街
  狭い通り。全速力で走っているトーマス。
  トーマスを必死に追うマイク。

 

○ 倉庫の中
  扉を蹴り開け、両手で銃を構えるマイク。
  所狭しと積まれた廃材の合間を静かに歩くマイク。
マイク「出てこい。トーマス」
  マイクの右横に積まれていた廃材が突然崩れる。
  マイク、急いで廃材の合間から抜け出そうとする。
  しかし、一本の腐った鉄廃材がマイクの左脇腹を直撃。うつ伏せで倒れるマイク。
  廃材の下敷きになり、身動きが取れなくなる。
  マイクの前にあらわれるトーマス。
トーマス「よくもベティを殺ってくれたな」
  顔を見上げ、トーマスを睨みつけるマイク。
マイク「メトロレッドラインで死んだ女のことか?」
トーマス「おまえが邪魔しなければ、あいつは、死なずにすんだ」
  トーマス、そばに置いていたポリタンクを持ち、ガソリンを撒き散らす。
マイク「ベティを殺した犯人は、海洋調査員のジェイクを殺したやつと同じやつだ」
トーマス「そんなことどうでもいい。今から地獄に行くおまえには関係のない話だ」

 

○ ナイト3000車内
  待ちくたびれているマイケル。
マイケル「キット、何か曲をかけてくれないか」
キット「お気に入りのジャンルは?」
マイケル「俺の好みの曲を忘れたのか?」
キット「今の私のパートナーは、マイクです」
マイケル「そうだったな。じゃあ、当ててみろ」
キット「当ててみろと言われましても」
マイケル「おまえのセンスに任せるよ。さあ」
キット「わかりました。では・・・」
  フロントガラスに「MUSIC PLAYER」の画面が映る。「80's」のフォルダが開かれる。
  スピーカーから80年代の懐かしいロック・ミュージックが流れ出す。
  思わず、叫ぶマイケル。
マイケル「ウオウ。そうそう、これこれ。よく覚えてたな」
キット「あなたの若い頃に流行っていた曲をチョイスしたみただけです」
マイケル「ところで、トーマスって男は一体何者なんだ?」
キット「以前、マイクが捕まえた男です。武器密売人のスカイラーという男の下で働いていた武器の運び屋です」
マイケル「マイクのいる場所を特定できるか?」
  キットのスキャナーが唸る。
  フロントガラスにGPSの座標軸が表示される。
キット「近くの倉庫で二人の人間の生命反応があります。ガソリンの匂いをキャッチしました」
マイケル「ジュニアは、コムリンクを持っているのか?」
キット「コムリンクとは?」
マイケル「連絡用の腕時計のことだ」
キット「通信機器のことですか。ワイヤレスイヤホンがありますが、持っていかなかったので連絡はとれません」
マイケル「まずいな」
  運転席に移動しようとするマイケル。
  エンジンが自動的にかかる。
キット「運転は結構です。私がやります」


○ 倉庫の中
  ガソリンを撒き終えると、ポリタンクを投げ捨て、ジッポライターの火をつけるトーマス。
トーマス「じゃあな」
  観念して、目を瞑るマイク。
  倉庫のシャッターを破り、猛スピードで突進してくるナイト3000。
  振り返り、ナイト3000を見つめるトーマス。
  トーマス、慌ててジッポライターを撒いたガソリンの上に落とす。
  炎が燃え広がり、マイクのほうに向かっている。
  ナイト3000のボディの下から白い煙を噴射させる。

 

○ ナイト3000車内
  ジュニアの様子を見つめ、心配顔のマイケル。
マイケル「キット、CO2だ!急げ」
キット「すでに消化剤を撒いています」

 

○ 倉庫の中
  白い煙が辺りを覆い始める。
  マイクに迫っていた炎が鎮火する。
  煙を浴びてむせているトーマス。
  立ち止まるナイト3000。
マイケル「おまえは、トーマスを捕まえろ」
  車から降りるマイケル。
  走り出すナイト3000。
マイケル「ジュニア!」
  ジュニアの元に駆け寄るマイケル。
  廃材を持ち上げ、マイクの体から取り去る。
  マイクを抱き上げるマイケル。
マイケル「しっかりしろ、ジュニア」
マイク「絶妙のタイミングであらわれるね」
  マイク、痛みを堪え微笑む。
  逃げているトーマス。
  トーマスの進路を塞ぐナイト3000。
トーマス「どけ、糞車」
  ナイト3000に突進するトーマス。
  ナイト3000、「BLACK ICE」の機能を作動させる。
  車体の下から液体窒素が流れ出す。
  液体窒素が辺りに広がり、一瞬で固まる。
  凍結した地面の上を勢い良く滑り、転がるトーマス。
キット「酷い言われようだ」
マイケル「キット、早くこっちに来い。マイクを病院まで運ぶんだ」
キット「しかし、まだトーマスを確保していません」
マイケル「いいから早く」
  勢い良くバックし、マイケル達の前に向かうナイト3000。


  
○ ロス市内・ケイツー・メモリアル病院・一般病室
  ベッドで眠っているマイク。
  ベッドの前に立っているマイケル。
  心配そうにマイクを見ている。
  部屋に入ってくるサラ。
  マイケルの隣に立つ。
マイケル「君がジュニアのフィアンセ?」
サラ「幼馴染みです。今は、ナイトインダストリーで一緒に働いています」
マイケル「今さっき手術が終わったところだ。左側の肋骨3本のうち1本は折れたが、あとの2本はひびが入った程度だそうだ」
サラ「さっき担当医に聞きました。完治するのに一ヶ月はかかるって」
マイケル「すまない」
サラ「どうして謝るんです?」
マイケル「トーマスを逃がしてしまった」
サラ「気にしないで」
マイケル「トーマスは、あらかじめあの倉庫で下準備をしていた。あそこにマイクを誘き寄せたんだ」
サラ「マイクを殺すためにわざわざ強盗事件を起こしたって言うの?」
マイケル「外で話そう」
  頷くサラ。
  二人で一緒に部屋を出て行く。

 

○ 同・通路
  歩いているマイケルとサラ。
サラ「あなたがマイクの代わりに?」
マイケル「ジェニファーの葬式でマイクと初めて会った時、俺はあいつにこう言ったんだ。「前に進め」ってな。あいつにナイト財団の仕事を勧めたのはこの俺だ」
サラ「だからといって、あなたが責任を感じることはないですわ」
マイケル「それに今まで何一つ親らしいことをしてこなかった。率直に言うと、助けてやりたい」
サラ「でも、あなたは、ナイト財団を何十年も前に辞めているし、ブランクが長すぎる」
マイケル「年寄りにミッションは任せられないって言うのか?」
サラ「その不安もあるし、それに、私達は、あなたのことをまだよく知らない」
  立ち止まる二人。
マイケル「俺は、ナイト財団の創始者だったウィルトン・ナイトから新しい人生と、ドリームカーを与えられた」
サラ「ナイト2000のことですか?」
  頷くマイケル。
マイケル「ウィルトンの遺言を守り、俺は、キットと共にたくさんの悪党を相手に戦った」
サラ「あなたの偉大な功績は、知っています。だけど、あの車は、ナイト2000じゃありません」
マイケル「君とお父さんが共同で開発したんだろ」
サラ「父は死にました」
マイケル「・・・それは知らなかった」
サラ「ナイト3000は、父と私が作り上げた最高傑作です」
マイケル「俺には、扱えないっていうのか?」
サラ「・・・」
マイケル「キットの扱いは、俺が一番わかってる。これからそれを証明してやるよ」
  勇ましく歩き出すマイケル。
  マイケルを追って歩き出すサラ。
サラ「そんなこと認めるわけには・・・」
マイケル「このままトーマスを逃がすつもりか?それとも今から他の有能な若いエージェントを雇うのか?」
サラ「・・・一つだけトーマスについて重要な情報があります」
マイケル「なんだ?」
サラ「トーマスと殺されたベティは、恋人関係だったの」
  サラ、持っていた写真をマイケルに渡す。
  写真を見るマイケル。
  ハワイのビーチで撮影されたトーマスと  ベティのツーショット写真。
マイケル「この写真はどこから?」
サラ「ベティが持ってた携帯から見つかった。日付は、2014年8月13日になってた」
マイケル「他には?」
サラ「これ一枚だけよ」
マイケル「一つお願いがある。いや二つか」
サラ「何?」
マイケル「息子のことを頼む。それと俺の言うことを聞くようにキットを手懐けてくれないか」

 

○ 古小屋・中
  折りたたみ式のデスクライトを古いテーブルの上に置いている。
  黙々とパンを食べているテイミー。
  テイミー、足元に置いていた白いボールをテーブルの上に置く。
テイミー「ねえ。聞いていい?」
電子の声「はい」
テイミー「あなたはどこで生まれたの?」
電子の声「私の製造日は、シークレットになっている」
テイミー「私には教えられないの?」
電子の声「そうプログラムされているの」
テイミー「あなたを作った人は誰?」
電子の声「それもシークレット」
テイミー「じゃあ、あなたはどうして女の子みたいに喋るの?」
電子の声「私は、女の子のような喋り方をしているの?」
テイミー「ええ」
電子の声「男らしいとか女らしいとか、私には理解できない」
テイミー「中性っぽいのかな。でも、私には、女の子の声に聞こえる」
電子の声「私には、まだ他にやれることがあるはずだけど・・・」
テイミー「何か思い出したの?」
電子の声「テイミー。私のどこかにセカンダリープログラムのメインスイッチがあるはずなの。探してくれない」
  ボールを持ち上げるテイミー。ボールの表面を入念に調べる。
  ボールのある部分が透明になっている箇所があることに気づくテイミー。
  テイミー、その透明になっている部分を強く押してみる。
  奇妙な機械音が鳴り、突然、ボールが青白く発光し始める。
電子の声「セカンダリープログラム起動・・・」
  ボールの両側からアンテナのような板がスッと伸びる。
テイミー「トッピー?」
電子の声「私の名前は、リオット」
テイミー「リオット?」
リオット「私が生まれた場所は、シアトルのウォーレンメカニクス研究所」
テイミー「自分のこと思い出したのね」
リオット「待ってテイミー。誰かがここに近づいてくる」
テイミー「誰?」
  ボールが青白く発光する。
リオット「私の中にある発信器から出ている電波を辿っている。テイミー、至急発信器を外して」
テイミー「どうやってはずすの?」
  ボールの小窓が開く。赤く点滅している小型の箱のようなものが見える。
リオット「赤く光っているのが発信器。早くそれを抜いて」
  テイミー、発信器を抜き取る。

 

○ 古小屋の前
  近づいてくる二人の男。
  アレクとボイド。
  アレク、スマホの画面に地図を表示させている。
  地図に、信号を示す赤い点が点滅している。
ボイド「どうなんだ?」
アレク「間違いない」
  ボイド、右手に銃を持ち、古小屋の入口に向かう。

 

○ 同・中
  扉を蹴り開けるボイド。
  勢い良く倒れる扉。
  足音を立てながら、ゆっくりと前に進むボイド。
  真っ暗な奥の部屋へ進む。
  赤いレーザーポイントを光らせるボイド。
  スマホのフラッシュライトアプリを起動させ、部屋に光を当てる。
  奥の部屋には、誰もいない。
  部屋の隅に千切れたカーペットで塞がれている箇所がある。
  カーペットをめくり上げるボイド。
  カーペットの下に大きな穴が空いている。
  苦虫を噛むボイド。

 

○ 農園
  広大に広がる野菜畑の中を走るテイミー。
  時々後ろを振り向いている。
テイミー「どこまで走るの?」
リオット「男達はまだ小屋の近くにいる」

 

○ 畦道
  道の真ん中に止まっている一台のSUVに近づくテイミー。
リオット「これに乗って」
テイミー「でも私、運転できない」
リオット「大丈夫。私に任せて」

 

○ SUV車内
  運転席に乗り込むテイミー。
  ボールが青白く発光する。
  車のエンジンがかかる。
リオット「シートベルトをつけて」
  慌ててシートベルトをつけるテイミー。
リオット「発進します」
  シフトレバーとアクセルが勝手に動き 出す。

 

○ 農道
  走るアレクとボイド。
  急発進するSUV。
  アレク、車に銃を向け、撃ち続ける。
  高鳴る銃声。
  SUVの後部に何発か弾が当たる。
  そのまま、走り去っていくSUV。
  足を止めるアレクとボイド。
アレク「あのガキどこで運転覚えたんだ?」
ボイド「本人に聞けよ」

 

○ ロサンゼルス・ダウンタウン
  フリーウェイを軽快に走るナイト3000。
マイケルの声「意外に快適な走りだ」

 

○ ナイト3000車内
キット「あなたも意外に運転が上手ですね」
マイケル「昔ならこんな道もっとかっ飛ばしていたけどな」
キット「何か理由でも?」
マイケル「老眼が酷くなった」
キット「サラが私の基本プログラムの一部を変更しました。マイケル・ナイト、あなたの命令を聞くように指示されています」
マイケル「よろしくな、相棒」
キット「ただ、あなたの情報は、何一つ記録 されていません。つまり、あなたがどう言う人物なのか、行動パターンが読めません」
マイケル「それはこれからわかるさ。お前と二十数年ぶりに再会できてとても懐かしい気分だが、ちょっと悲しくもある」
キット「悲しい?なぜです」
マイケル「かつてのおまえは、俺にくだらないジョークや駄洒落を一杯投げてかけてきた。今のお前は、糞真面目過ぎて、泣きたくなるね」
キット「以前のバージョンの私は、くだらないジョークや駄洒落が好きだったのですか?」
マイケル「映画やテレビが大好きでな。そこからいろんなユーモアを吸収していた」
キット「私はテレビは見ていません」
マイケル「デボンやボニーが今のおまえを見たら、がっかりするだろうな」
キット「あなたのファミリーですか?」
マイケル「お前のファミリーでもあった」
キット「私の・・・」
マイケル「手始めに、殺されたベティにことについて知りたい」
キット「ベティは、15mm口径の特殊弾を36発撃たれていました。海洋調査員のジェイクも同じ弾丸で殺されています」
マイケル「15mmの特殊弾ってもしかしてこれのことか?」
  マイケル、革ジャンのポケットから特殊弾を出す。
キット「サーチしたところ、その弾丸は、確かに例の特殊弾です。どこでそんなものを?」
マイケル「うちの近くで拾ったんだ。ベティの自宅は、どこにある?」
キット「それはまだ判明していませんが、二日前まで利用していたホテルの名前はわかっています」
マイケル「よし、そこに行くぞ」

 

○ グランゲートホテル・701号室・寝室
  ベッドの下に隠していたスーツケースを取り出すトーマス。
  ベッドの上でスーツケースを開き、ベティの荷物を荒らす。
  ポシェットの中からハワイ行きのチケットとクレジットカードを出し、ジャンバーのポケットに入れる。
マイケルの声「まさか、こんなところで会えるとはな」
  振り返るトーマス。
  目の前にマイケルが立っている。
  マイケル、トーマスの腕を捻り上げる。トーマスのジャンバーのポケットから銃を取り出し、トーマスに銃口を向ける。
マイケル「なぜマイクを襲った?」
トーマス「あいつのせいでベティが殺されたからさ」
マイケル「ベティと一緒に何を探してた?」
トーマス「あ?」
マイケル「じゃあ、こっちから言おうか。赤いハンチング帽をかぶった中学生ぐらいの女の子じゃないのか?」
  動揺するトーマス。
マイケル「ベティは、あの女の子が持っていたバスケットボールに殺された」
トーマス「頭おかしいのか?爺さん」
マイケル「息子を狙うよう指示されたのは誰なんだ?」
トーマス「あいつ、あんたの息子か。おまえも息子と同じ目に合わせてやりたかったぜ」
マイケル「取引しよう。俺の質問に正直に答えたら、お前を見逃してやる」
トーマス「まじかよ?息子があんな目に遭ったのに」
マイケル「俺はおまえほど執念深くないんでな」
トーマス「・・・ハワイに行ってベティの墓を立ててやりたい」
マイケル「質問に答える気はあるのか?」
  頷くトーマス。
マイケル「お前の親玉は誰だ?」

 

○ ナイト3000車内
  街の通りを走行中。
  フロントガラスに映る事業者リスト。
  写真をサーチ中。
  ある男の顔が映し出される。
キット「クラール・ラスフォード。マイアミの大富豪で、2年前にリムジンバス事業に参入し、「ラスフォード・ビッグラインズ」と言う
 名のバス会社を設立しています」
  フロントガラスにラスフォード・ビッグラインズのウェブサイトが映し出される。
  サイトを眺めるマイケル。
マイケル「これはなんだ?」
キット「ラスフォード・ビッグラインズのウェブサイトです」
マイケル「ウェブサイト?」
キット「会社の概要や路線案内を閲覧することができ、チケットの予約も簡単にできます」
マイケル「思い出したぞ。そうだ、間違いない」
キット「どうしたんですか?」
マイケル「昨夜、この会社のバスを利用した。お手頃の料金で、シートは、革張りで寝心地が良く、サービスも充実。コーヒーを3杯もおかわりした」
キット「コーヒーを飲みすぎると、カフェイン依存症になり、睡眠の低下や自律神経の乱れ、さらには、高血圧の恐れも・・・」
マイケル「飲んだのは、昨夜だけだ。普段は飲まない。会社はどこにある?」
キット「グランド・アベニューの一角にあり ます」
マイケル「よし、最短距離を出せ」
  フロントガラスにロサンゼルスの地図が映し出される。現在地から目的地までの経路が表示される。
キット「3分で到着できます」
マイケル「ここから35キロ近くあるぞ。スーパー追跡モードはあるのか?」
キット「なんですかそれは?」
マイケル「最高時速480kmで走ることができる奇跡のシステムさ」
キット「私のアタックモードなら、それ以上で走れます」
マイケル「アタックモード?なんだそりゃ」

 

○ ロサンゼルス市・市道
  走行するナイト3000。
キット「トランスフォーム、スタート!」
  ナイト3000がアタックモードに変形する。
  車内からボディを見回しているマイケル。
キット「これがアタックモードです。どうです?」

 

○ ナイト3000車内
マイケル「ボンネットから出っ張ってるアレ はなんだ?」
キット「3連吸気ポッド。後輪のインチアップ、ドアはガルウィングに変わっています」
マイケル「これで3分で行けるのか?」
キット「はい。では行きますよ」
  超加速するナイト3000。
  絶叫するマイケル。

 

○ ロス市内・ケイツー・メモリアル病院・一般病室
  目覚めるマイク。
  ベッドのそばに座っているサラ。
サラ「やっと起きたわね」
  サラを見つめるマイク。
マイク「ここはどこだ?」
サラ「病院。あなたは怪我をしたの」
マイク「そうだ。俺は、トーマスを追って  いた。マイケルは?」
サラ「そのことだけど、実は・・・」
  起き上がろうとするマイク。
  しかし、あまりの痛みのため起き上がる  ことができない。
サラ「肋骨を折ってるのよ」
マイク「話さなくてもわかるよ。俺の代わり にあの事件を調べているんだろ」
サラ「引き止めようとしたけど、あなたと同じで、言っても聞かない人だったわ」
マイク「今どこにいるんだ」
サラ「一応、ゾーイ達がサポートについてる」
マイク「この痛みは、いつになったら取れる?」
サラ「全治一ヶ月よ。しばらく動けないわ」
マイク「あの人はもう歳だ。昔のようにはいかない」
サラ「それは私も話した。でも、あなたを助けたいって言ったの」
マイク「マイケルは、何かを隠してる」
サラ「どういうこと?」
マイク「なんとなく感じるんだ。このタイミングでロスに出て来たことも妙にひっかかるし」
  不安げな表情を浮かべるサラ。

 

○ ラスフォード・ビッグラインズ・駐車場
  十数台の高級なバスがずらっと横並びしている。
  駐車場に入るナイト3000。
  ノーマルモードに戻っている。
  5階建ての本社の前に立ち止まる。

 

○ ナイト3000車内
マイケル「よし、キット。おまえは、しばらくここから離れてろ」
キット「何をするつもりですか?」
マイケル「ちょっとした作戦」
キット「作戦?」
マイケル「お前は、ラスフォードたちに面が割れてるからな」
キット「ならば良い方法があります」

 

○ ナイト3000のボディの色が黒から青色に変わる
キット「降りて確認してみてください」
  車から降りるマイケル。仰天している。
マイケル「おまえ、マジシャンにでもなったのか?」
キット「他にシルバー色も用意していますが、どうしますか?」
マイケル「この色で十分だ」
キット「ところで、さっき聞き忘れていましたが、トーマスはどうなりました?」
マイケル「奴なら今頃檻の中だ」
キット「どうやって説得したんです?」
マイケル「あいつと話していた最中に、FBIがやってきたんだ」
キット「あなたが呼んだんですか?」
マイケル「偶然さ」

 

○ ラスフォード・ビッグラインズ・4F社長室
  革張りの高級なシートにふんぞり返っているラスフォード。
  テンガロンハットをかぶり、ベージュのスーツ姿。葉巻を吹かしている。
  デスクの電話が鳴る。
  電話に出るラスフォード。
ラスフォード「なんだ?」
  受付係のダイアンの声が聞こえる。
ダイアンの声「マイケル・ナイトと言う方が社長にお会いしたいと言ってます」
ラスフォード「そんな名前には聞き覚えないぞ」
ダイアンの声「バスケットボールの件でお話があると仰っていますが」
  険しい顔つきになるラスフォード。
ラスフォード「わかった。通せ」
  携帯を切るラスフォード。
  入口の扉が開く。
  中に入ってくるマイケル。
ラスフォード「何の御用ですかな?」
  ラスフォードのデスクの前に立つマイケル。
マイケル「今朝起きたメトロレッドラ   インの銃撃事件のことを調べていましてね」
ラスフォード「ああ。マシンガンのようなも ので女性が殺されたあの・・・。酷いテロでしたな」
マイケル「トーマス・フェントスのことはご存知ですね?」
ラスフォード「警備部門に確かにそういう名前の者がいますが、奴は、サボり癖がありましてね。
 もう三日も無断欠勤していて連絡が取れない状態でして」
マイケル「今朝死んだベティ・コールとトーマスは、恋人関係で、あなたの依頼を受けてあるものを探していたそうですね」
  ラスフォード、葉巻を灰皿に押し付ける。
ラスフォード「あるものとは?」
マイケル「そのバスケットボールとそれを持っている女の子」
  険しい顔つきになるラスフォード。
  ラスフォードに名刺を差し出すマイケル。
  名刺を見るラスフォード。
ラスフォード「ナイト探偵事務所?」
マイケル「この話の続きが知りたいなら、私の事務所に電話をしてください。お待ちしています」
  マイケル、一礼し、部屋を出て行く。
  立ち去るマイケルを鋭い目つきで見ているラスフォード。
  ドアが閉まる。
  ラスフォード、デスクの電話の受話器を上げ、登録ナンバーのボタンを押す。
ラスフォード「アレクか。今どこにいる?」
アレクの声「今タクシーで移動中です」
ラスフォード「車はどうした?」
アレクの声「それが・・・あのガキに奪われ てしまって・・・」
ラスフォード「誰が運転してるんだ?」
アレクの声「わかりません。たぶんガキが・・・」
ラスフォード「今、マイケル・ナイトと言う男がやってきた。ガキとボールのことを知ってるようだ」

 

○ ラスフォード・ビッグラインズ・駐車場
  ナイト3000の運転席に座っているマイケル。

 

○ ナイト3000車内
  ラスフォードの電話を盗聴し、二人の会話を聞いているマイケル。
アレクの声「じゃあ、ガキは、そいつのとこ ろに・・・」
ラスフォードの声「さっさと戻ってこい。このあほどもが」
  電話を切るラスフォード。
キット「どうやら、作戦は成功したようですね」
マイケル「ラスフォードが連絡した相手の居場所はわかったか?」
キット「サンフェルナンド付近を車で移動中です」

 

○ ラスフォード・ビッグラインズ・駐車場前
  駐車場を出て、通りを走り出すナイト3000。
  駐車場前の道路際に止まっていたシルバーのセダンがナイト3000の後を追って走り出す。

 

○ 同・4F社長室
  上着の内ポケットからスマホを出し、電話をかける。

 

○ シアトル・ウォーレンメカニクス研究所・所長室
  デスクの電話が鳴る。
  受話器を取り上げ話し出すアビゲイル・グレイリー博士(32)。白衣姿。
  赤毛でポニーテールの髪型をした中年の女性。眼鏡をかけている。
アビゲイル「もしもし」
  受話口からラスフォードの声が聞こえる。
ラスフォードの声「見つけたぞ」
アビゲイル「場所は?」
ラスフォードの声「今日の夕方までに届けてやる」
アビゲイル「なら、あの倉庫に持ってきて」
ラスフォードの声「約束どおり、報酬は、キャッシュで頼みますよ博士」
アビゲイル「面倒だけど、現金主義のあなただから仕方ないわね」
ラスフォードの声「じゃあ」
  電話が切れる。

 

○ ラスフォード・ビッグラインズ・4F社長室
  スマホをポケットにしまうラスフォード。
  部屋に入ってくるゲイリー。
  ラスフォードの前に立つ。
ラスフォード「どうした?ゲイリー。今日は非番じゃなかったのか?」
ゲイリー「さっき社長が会っていたあの男、知ってますぜ」
ラスフォード「何者だ?」
ゲイリー「俺のバスに乗ってた。バスジャック犯を捕まえた男ですよ」

 

○ シアトル・ウォーレンメカニクス研究所・開発室・オフィス
  扉を開け、中に入るアビゲイル。
  ロボット開発用の設備が所狭しと並んでいる部屋。
  五角形型のロボット掃除機がアビゲイルの足元で動き回っている。
  作業台に試作用掃除ロボットの部品がいくつも並んでいる。
  工具を使い、ロボットの回路を調整している開発担当部長のブラス・ポーター(30)。
  ブラスに話しかけるアビゲイル。
アビゲイル「どうしたの?」
ブラス「少し動きに問題があって。取引先からクレームが来たんです」
アビゲイル「原因は?」
ブラス「プログラムにミスがいくつかあったので、今直しているところです」
アビゲイル「新製品のプレゼンは三日後よ」
ブラス「心配ありません。そっちの準備はすでに整えてあります」
アビゲイル「クレーム処理は、ジョニーに任せたらどうなの?」
ブラス「あいつ昨日、自宅の階段で転んで今日は休んでいるんです。だから僕が代わりに」
アビゲイル「後でジョニーに、私に連絡するように言っといて」
ブラス「わかりました」
  奥に進むアビゲイル。
  所長専用のプライベートルームのドアを開ける。

 

○ 同・所長専用プライベートルーム
  中に入り、電灯を点けるアビゲイル。
  コンピュータが置いてあるデスクの座席に腰掛ける。
  コンピュータの電源を入れる。
  デュアルディスプレイの画面に『SYSTEM UP』の文字が表示される。
  暗号ナンバーを打ち込む。
  通信会話用のウインドウが表示される。そこに文字を打ち始めるアビゲイル。
  画面のコメント欄
  「リオット。アビゲイルよ。応答して」

 

○ コンビニ・駐車場
  真ん中のスペースに止まっているSUV。


  
○ SUV車内
  助手席のシートにポツンと置かれている白いボール。
  突然、白いボールが赤く発光する。
リオットの声「アビゲイル・・・」

 

○ シアトル・ウォーレンメカニクス研究所・所長専用プライベートルーム
  コメントを打ち込むアビゲイル。
  画面のコメント欄。
  「今どこにいるの?」
  しばらくして、返信が来る。
  「ウィルシャー通り マルカイマーケット駐車場 車の中」
  文字を打つアビゲイル。
  「他に誰かいる?」
  返信が来る。
  「少女がいる」
  「誰があなたのセカンダリープログラムを起動した?」
  「テイミー」
  「今そこにいる?」
  「いない」
  眼鏡を外し、ポニーテールをほどくアビゲイル。鋭い眼光になる。
  文字を打つアビゲイル。
  「ターシャリプログラムを起動させる」
  「テイミー 戻る」

 

○ コンビニ・駐車場
  SUVの運転席に乗り込むテイミー。右手に大きな袋を持っている。

 

○ SUV車内
  運転席ら座るテイミー。
  助手席に袋を置き、中からマッシュポテトとストローのついたコーラ入りのタンブラーを出す。
  タンブラーをカップホルダーに置き、ポテトを食べ出す。
テイミー「充電は終わった?」
  白いボールからコードが飛び出し、センターコンソールのUSBとつながっている。
リオット「まもなく終了」
テイミー「私も今から充電するから。そうだ」
  袋の中から絵の具、筆、パレット、スケッチブックを取り出す」
テイミー「約束したでしょ。あなたを描くの」
リオット「テイミー、そろそろ出発してもいい?」
テイミー「どこに行くの?」
リオット「私の生まれた場所」
テイミー「シアトルの研究所?」
リオット「そうです」
テイミー「あなたを作った人と会ってみたい」
リオット「シートベルトをつけて」
  食べながら、シートベルトをつけるテイミー。

 

○ コンビニ・駐車場
  バックして駐車スペースから出るSUV。
  駐車場を出て、通りを走り去って行く。

 

○ パシフィック・コースト・ハイウェイ
  太平洋沿いの曲がりくねった道が続く。片側一車線の道路。
  スピードを上げ走行する青色のナイト3000。
キットの声「マイケル、シルバーのセダンに尾行されています」
マイケルの声「おそらく、ラスフォードの手下だ」
  ナイト3000の後を追うシルバーのセダン。

 

○ ナイト3000車内
  通信回線のアラームが鳴る。
  フロントガラスにSSCのオペレーター席に座るゾーイとビリーが映し出されている。
ゾーイの声「聞こえますか、マイケルさん」
マイケル「君たちは?」
ゾーイの声「SSCでオペレートを担当するゾーイです」
ビリーの声「同じくビリーです」

 

○ ナイトインダストリーズ・衛星監視室(SSC)
ゾーイ「あなたの行動は、全てこちらの専用衛星でモニタリングしています」
ビリー「僕らは、捜査支援を担当するメンバーなんです」
ゾーイ「私の担当は、情報分析。マイクはいつも私達と連携して行動しているの」
マイケルの声「それで?」
ビリー「できれば、その・・・現状を報告してもらえると・・・」
キットの声「マイケルの言動や行動は、全て私のハードディスクに記録済みです。今からデータを送りましょうか?」

 

○ ナイト3000車内
マイケル「俺が今まで喋ったことを全て録音していたのか?」
キット「サラの指示です」
マイケル「冗談じゃないぜ」
ゾーイの声「私達の仕事は、あなたの身を守ること」
ビリーの声「ラスフォード・ビッグラインズの駐車場を出てからずっと北上しているけど、いったいどこに向かっているんですか?」
マイケル「悪いが今忙しくてな」
ビリーの声「どうして?」
マイケル「キット、通信を切れ」
ゾーイの声「駄目よキット」
キット「サラにマイケルの指示に従うようにプログラミングされています」
  通信を遮断するキット。
  急ハンドルを切るマイケル。

 

○ 華麗に180度ターンするナイト3000
  そのまま、セダンに向かって突進する。

 

○ ナイト3000車内
キット「どうしてUターンするんです?」
マイケル「奴らとコミュニーケーションをとろうと思ってね」
キット「話が通じる相手とは思えませんが」
マイケル「まあ、見てろ」

 

○ ナイトインダストリーズ・衛星監視室(SSC)
  ため息をつくゾーイ。
ゾーイ「あーもういや」
ビリー「何か言えない事情があるんだよ、きっと」
ゾーイ「テキーラ飲みたい気分になってきちゃった」
ビリー「仕事中はまずいよ」
ゾーイ「ねえ。一緒に海行かない?サーフィン教えてあげる」
ビリー「職場放棄かい?」
ゾーイ「早く現場に出たいなあ・・・」
ビリー「僕は、ここのほうが落ち着くけど・・・」
  呆れた顔を浮かべるゾーイ。
  ぼそっと呟く。
ゾーイ「だから出世しないのよ」
ビリー「今なんか言った?」

 

○ パシフィック・コースト・ハイウェイ
  急ブレーキをかけ、道路を塞ぐように立ち止まるナイト3000。
  ナイト3000の前でピタッと立ち止まるシルバーのセダン。
  車から降りるマイケル。
  セダンから二人の男が降りてくる。
  マイケル、金髪のがたいのいい男にボディブローを浴びせる。
  ナイト3000のスキャナーが唸る。
キットの声「あの年齢で格闘とは・・・」
  もう一人のオールバックの黒髪、細身の男が後ろからマイケルに襲い掛かる。
  キット、咄嗟にクラクションを鳴らす。
  マイケル、後ろにいる男に気づく。男の腹を肘で突き、背負いを投げをする。
  マイケル、金髪の男の腕をひねり上げる。
マイケル「ああ、腰が痛い。なぜ俺をつけていた?」
男「なんのことだ」
マイケル「とぼけても無駄だぞ。ラスフォードに指示をされたんだな?」
男「誰だそいつ」
マイケル「キット、こいつらの顔をスキャンしろ」

 

○ ナイト3000車内
  フロントガラスに犯罪者リストが表示され、サーチされる。
  顔認識プログラムの画面に金髪の男の顔のアップが映る。
  やがて、犯罪者リストの男の顔が一致する。
キット「その男は、リッキー・フレイル。過去に強盗容疑で逮捕歴があります」

 

○ パシフィック・コースト・ハイウェイ
マイケル「もう一人は?」
キットの声「ダニエル・マービン。過去に傷害・殺人未遂、婦女暴行の罪で刑務所に服役しています」
マイケル「二人の勤め先は?」
キットの声「共に、ラスフォード・ビッグラインズの警備係です」
  リッキーを睨みつけるマイケル。
マイケル「まだ白を切るつもりか?」
  リッキー、観念した様子。
リッキー「あんたから娘とボールを取り返してこいって、そう言われた」
マイケル「娘の名前は?」
リッキー「さあな」
マイケル「あのボールは、どこで作られたものなんだ?」
  リッキーにもう一発お見舞いするマイケル。
リッキー「シアトルのどこかの研究所だ・・・ウォーレンなんとかっていう・・・」
  マイケル、リッキーから手を離す。


  
○ ナイト3000車内
  運転席に座るマイケル。
マイケル「シアトルにある頭にウォーレンがつく研究所を探してくれ」
  フロントガラスに検索画面が表示される。
キット「見つかりました。ウォーレン・メカニクス研究所」
マイケル「何を作っている所だ?」
キット「掃除用のロボットの開発をしているようです」
マイケル「掃除用・・・ね」
キット「何か気になることでも?」
マイケル「家出人を調べられるか?」
キット「警察のデータベースとアクセスして、情報を検索することができます」
マイケル「特徴は、赤いハンチング帽に、ピンクのデニムのジャケット、白のズボン、眼鏡をかけていて、絵のうまそうな14、5歳ぐらいの少女だ」
  フロントガラスに「捜索人データベース」の画面が表示され、サーチが始まる。
キット「その特徴と一致するデータが見つかりました」
  テイミーの写真とデータが映し出される。
  それを見つめるマイケル。
キット「名前は、テイミー・ウェイバリー。ソルバング出身。三日前、登山に行くと言って一人で出かけたまま行方不明になっています」
マイケル「家族構成は?」
キット「テイミーは一人娘。母親は、二年前に車の事故で亡くなっています。父親は、鉄道車両工場の製造部門の責任者です」
マイケル「父親に会いに行くぞ」
キット「あの男達はどうするんです?警察を呼びましょうか?」
マイケル「どうせ俺たちに追いつけやしないさ。ほっとけばいい。最短距離で頼む」
キット「では、アタックモードで行きましょう」

 

○ アタックモードにトランスフォームするナイト3000
  轟音を唸らせながら、パシフィック・コースト・ハイウェイの曲がりくねった道を一気に駆け抜けていく。

 

○ ケイズ鉄道車両車工場
  工場の建物の前に、マイケルと作業着を着た中年のラリー・ウェイバリーが話している。
ラリー「娘が?」
マイケル「お嬢さんは、危険なボールを持って当てもなく逃げ回っている。一刻も早く見つけ出さないと命が危ない」
ラリー「この通り、今、納期が迫っていて手が離せない状態でして。あの子とは、ここ一ヵ月、顔も合わしていないし、話もしなかった。
 あの子が行きそうな場所と言われても全く見当が・・・」
マイケル「本当に何も?」
ラリー「死んだ妻に任せっ切りでしたし、私には全然なついてくれなくて」
マイケル「放浪癖があることも知らなかった?」
  険しい顔つきで頷くラリー。 
ラリー「私の努力が足りなかったんです。もっとあの子と一緒にいてやる時間を作ってやっていれば・・・」
マイケル「戻ったらそうしてあげてください」
ラリー「えっ?」
マイケル「大丈夫。見つかりますよ、必ず」

 

○ ロス市内・ケイツー・メモリアル病院・一般病室
  マイクのベッドの前にやってくるサラ。
  ベッドにマイクがいないことに気づき、慌てて部屋を出て行く。

 

○ ナイトインダストリーズ・衛星監視室 (SSC)
  血相を変え、ゾーイの前にやってくるビリー。
ビリー「まずいよ、ゾーイ」
ゾーイ「どうしたの?」
ビリー「今、サラから連絡があった。マイクが病院から消えちゃったみたいなんだ」
ゾーイ「うそー」
ビリー「マイクが行きそうなところって・・・」
ゾーイ「それは、間違いなくマイケルのところよ」
ビリー「でも、情報端末も持っていないし、居場所を知る方法がないよ」
ゾーイ「あるわ」
ビリー「どんな?」
ゾーイ「ここよ。この監視室」
マイクの声「その通りだ」
  二人の前にあらわれるマイク。
ゾーイ「マイク!」
マイク「マイケルは、今どこにいるんだ?」
ビリー「その体で合流するつもり?」
ゾーイ「無茶よ」
マイク「ナースに痛み止めを打ってもらったから、しばらくは平気さ」
ビリー「スーパーマンじゃないんだからさ。やめたほうがいいって」
マイク「そもそもこれは、俺が扱っていたミッションだ」
ゾーイ「サラが許さないわ」
マイク「頼むゾーイ」
ビリー「キットは止められないよ」
マイク「どうして?」
ビリー「サラがキットのプログラムをいじったんだ。マイケルの指示に従うように」
マイク「キットは今どこにいる?」
  大型画面に西海岸地域の地図が映し出される。
  キットの居場所を示す赤い点滅が表示される。
ゾーイ「アタックモードを使用して高速で北上しているわ」
マイク「どこに向かってる?」
ビリー「聞き出そうとしたんだけど、結局何も教えてくれなかった」
マイク「このGPS信号を追う。端末を貸してくれ」
  ビリー、操作卓に置いてある携帯端末をマイクに手渡す。
ゾーイ「ビリー!」
ビリー「確かにマイクの意見も一理ある。いくら昔ナイト財団で働いてたからと言っても、あの歳だよ。命を落とす危険だってあるよ」
マイク「悪いなビリー。後でまた連絡する」
  早足で二人の前から立ち去るマイク。
  マイクを静かに見守るゾーイとビリー。

 

○ 路上
  歩道を歩くマイク。
  後ろからやってきたタクシーに気づき、手を上げる。
  しかし、乗車拒否して走り去っていくタクシー。
  しばらくして、ダークブルーのアルファロメロがマイクの後ろに接近する。
  マイクのそばに立ち止まるアルファロメロ。
  マイク、怪訝な表情で車を見つめる。
  運転席の窓が開く。
  運転手は、サラ。
サラ「こんなところで何してるの?」
マイク「リハビリがてらのお散歩」
サラ「親子で私を困らせたいわけ?」
マイク「キットのプログラミングを変えたそうだな」
サラ「キットと仲良く仕事してもらうために、仕方なくよ」
マイク「キットは俺の車だ。今すぐ再プログラムし直してくれ」
サラ「今?」
マイク「マイケルを止められるのは君だけだ」
サラ「じゃあ運転して」
  助手席に移るサラ。
  運転席に乗り込むマイク。
  ノート型の端末を開くサラ。
サラ「以前使った追跡アプリをアップロードし直さないと」
マイク「間に合うといいけど・・・」
  アクセルを踏み込むマイク。
  急発進するアルファロメロ。

 

○ パシフィック・コースト・ハイウェイ
  猛スピードでくねった道を走り抜けるナイト3000。

 

○ ナイト3000車内
マイケル「ウォーレンメカニクス研究所まであとどれぐらいだ?」
キット「この調子で進めば、約2時間半でシアトルに到着します」
マイケル「こうなりゃ俺が直接研究所に忍び込んで、奴らの本当の目的を見つけ出すしかない」
キット「何か作戦はあるのですか?」
マイケル「今思案中だ」
  キットのシステムが突然シャットダウンする。
  フロントガラスに警告が表示される。
  アタックモードからノーマルモードに戻るナイト3000。
  フロントガラスに映るスピードメーターの数字がみるみる下がっていく。
マイケル「何が起きた?」
キット「・・・」
マイケル「答えろ、キット!」
キット「ナイトインダストリーの強制終了プログラムが作動しました」
マイケル「どういうことだ?」

 

○ パシフィック・コースト・ハイウェイ
  道端に立ち止まるナイト3000。

 

○ ナイト3000車内
キット「あと10秒で私のメインシステムがシャットダウンされます。システムが回復するまでしばらくここで待機してください」
マイケル「いつ回復するんだ?」
キット「わかりません。サラに聞いてください」
マイケル「サラがお前のメインシステムを止めたのか?」
キット「はい」
マイケル「こんなところでガス欠じゃあるまいし」
キット「しばらくの間お別れです・・・」
  キットの電源が落ちる。
マイケル「おい、キット。返事しろ!」
  ダッシュボードを叩くマイケル。
  ナイト3000の車体の色が青から黒に戻る。
  二本のスキャナーの赤い光が静かに消える。

 

○ シアトル・ウォーレンメカニクス研究所前
  建物の前に立ち止まるSUV。

 

○ SUV車内
  運転席に置かれているリオット。
  助手席でリオットの絵を描いているテイミー。
リオット「到着したわ」
テイミー「完成したよ、ほら」
  テイミー、リオットに絵を見せる。擬人化された美しい女性の絵である。
テイミー「どう?うまいでしょ」
リオット「それが私ですか」
テイミー「あなたがもし人間だったら、こんな感じの女性かな」
  辺りを見つめるテイミー。
テイミー「ここがあなたの生まれた場所?」
リオット「そうです。私は、ここで製造されたのです」
  テイミー、リオットを持ち上げる。
  車のドアロックを解除しようとするテイミー。
  しかし、ロックは、固定され、ドアが開  かない。
リオット「許してテイミー。あなたとは、ここでお別れをしなければならない」
テイミー「どういうこと?」
  運転席の窓の前に女が立っている。
  女を見つめるテイミー。
  女は、アビゲイル。ほくそ笑んでいる。

 

○ パシフィック・コースト・ハイウェイ
  立ち止まるナイト3000。
  マイケル、必死に運転席のドアを開けよ  うとしているが開かない。
  ため息をつくマイケル。
  マイケル、運手席のドアの窓を殴る。
  窓が粉々に割れる。
  唖然とするマイケル。
マイケル「防弾じゃなかったのか・・・」
  後ろの方向から車のエンジン音が響いてくる。
  窓枠から顔出し、後ろを確認するマイケル。
  赤いリムジンバスが猛スピードで接近している。
  気まずい表情を浮かべるマイケル。
  マイケル、急いで車の中に身を隠す。
  ナイト3000の前で急停止するリムジンバス。
  運転席からゲイリーが降りてくる。
  ナイト3000の運転席のドアの前に立ち、銃を構えるゲイリー。
  ゲイリーを見つめるマイケル。
マイケル「おたく、どこかで見た顔だな」
ゲイリー「車から降りろ!」
マイケル「思い出した。昨夜乗ったリムジンバスの運転手・・・」
ゲイリー「俺もおまえのこと覚えてるよ。バスジャック犯を一発で伸したじいさんだったな」
マイケル「どうして俺の居場所がわかった?」
ゲイリー「リッキーがおまえと殴り合いした時に・・・」
  ゲイリー、マイケルの革ジャンのポケットから小粒の盗聴器を取り出す。
マイケル「あの二人の仇を取りに来たってわけ?」
ゲイリー「さっさと降りろ」
マイケル「悪いが、厳重にロックされていて」
  運転席のドアノブを掴み、何度も引くゲイリー。
マイケル「ほらな、言ったとおりだろ?」
ゲイリー「ふざけんな。ロックをはずせ」
マイケル「出れるもんなら、とっくに出てる」
  ゲイリー、マイケルの顔に銃口を向ける。
ゲイリー「もういい。ここをおまえの墓場にしてやる」
  覚悟を決め、目を瞑るマイケル。
  銃声が轟く。
         

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