『80’sハンターズ』 第3話 1981年

BY ガース『ガースのお部屋』

「1981年」

 
○ 歩行者天国
  「1981年7月19日 日曜日」
  ツッパリスタイル、カラフルな衣装に身を染めた若者達がエネルギッシュに踊っている。
  ローラー族やパフォーマー達もいる。
  あちこちから聞こえてくるラジカセの音楽。
  ラジカセのカセットテープを交換しているパーマの少女。
  人並みをかきわけている高賀麗次(25)と磯山光雄(39)。
麗次「なにこの熱気・・・」
光雄「青春ストリートや」
麗次「コスプレ率高いなあ」
光雄「コスプレやない。「ブティック竹の子」のファッションや」
麗次「要するにコスプレの走りでしょ?」
  ラジカセを囲んで、集団で踊っている若い男女。

○ 歩道橋
  歩行者天国の架かる歩道橋の真ん中に、竹の子の衣装を着た男が立っている。
  男は、バグル。
  手すりに両肘を着いて、若者達のダンスを楽しんでいる。

○ 歩行者天国
  若者達に紛れ込んで踊り出す光雄。
  光雄の酷い踊りを見て、大笑いしている竹の子の女子達。
  派手なメイクとファッションをした女子達が光雄を取り囲む。
  光雄の格好を見て、腕組みしながらガンをつけている。
女の子「ちょっとおじさん」
  動きを止める光雄。
光雄「はい?」
女の子「何よ、その格好」
女の子2「やる気あんの?」
光雄「あっ、俺、ただの通りすがりやけど」
女の子「踊るのは勝手だけどさ、やるならちゃんとキメてきてよね」
光雄「すんまへん」
  光雄、しょんぼりしながら麗次のいるところへ戻る。
麗次「何やってるんですか」
光雄「この時代の女子、柄悪いわ」
麗次「踊りに来たんじゃないですよ。僕達」
  焼きそばのおいしそうな匂いを嗅ぐ光雄。
光雄「なんか腹減ってきたな」
麗次「そういえば、良い匂いしますね」
  前方にあるお好み焼き・焼きそば屋の露店を指差す光雄。
光雄「あれや」
  露店の前に群がる若者達。
  腕時計を見つめる麗次。
  時計の針は、11時51分を差している。
麗次「腹ごしらえしますか、そろそろ」
  匂いに釣られて早足で歩き出す光雄。
麗次「食い意地強い人だなほんと・・・」
  麗次、光雄の後を追う。その時、露店の周りをうろついている阪神の野球帽(2016年の)をかぶった男の子を目にする。
  店の横に立つ男の子。店主の男が作っている焼きそばをおいしそうに見ている。
  店主、男の子を煩わしく睨みつけ、
店主「坊主、買う気がないならあっちいけ」
  男の子の腹がギュルルと鳴る。
  男の子、腹を押さえながら露店から離れていく。
  麗次のそばを通り過ぎていく男の子。
  麗次、思い出したようにズボンのポケットから財布を取り出し、中から一枚の写真を出す。
  写真には、男の子とよく似た子がバットを持ち、楽しそうに写っている。
  麗次、慌てて男の子を追う。
  露店のそばで買った焼きそばをズルズル言わせながら食べている光雄。
  歩いている男の子の肩を掴む麗次。
麗次「ちょっと」
  振り返る男の子。
麗次「野村シオンくん?」
  男の子の名は、野村シオン(10)。
シオン「・・・」
麗次「探してたんだ。一緒に戻ろう」
  シオンと手をつなごうとする麗次。
  シオン、麗次の手を払い、人ごみの中を駆け抜けていく。
  シオンの後を追う麗次。
  焼きそばを食べている光雄。
  立ち止まる麗次。辺りを見回す。
  シオンを見失う。
  舌打ちする麗次。

○ 笹松コーポ2F「ナウ・ウォッチ」事務所
  ものすごい剣幕で怒号を上げる根村沙里香(17)。
沙理香「なめんなよ!」
  沙理香と向き合う光雄。しょんぼりしている。
沙理香「仕事忘れて、焼きそば3杯も食ってる場合ですか」
  隣の部屋でゲームウォッチしている麗次。
  ピコピコ音が鳴り響いている。
沙理香「相手は子供なんですよ。早く見つけないとどんな事件に巻き込まれるかわからないんですよ」
光雄「誰だって腹減るやん」
沙理香「それですよ!」
光雄「えっ?」
沙理香「シオン君がなぜ焼きそば屋の前をうろついてたか、わからなかったんですか?」
光雄「なんでや?」
沙理香「お腹を減らしてたんですよ。きっとお金も持っていないんです」
  ゲームウォッチしている麗次。敵にやられてゲームオーバー。
  壁に貼っているキャプテンハーロックのポスターを見つめる麗次。
麗次「ところで、その子、いつの時代からここに来たの?」
沙理香「2016年3月8日。シオン君の父親は、貿易商をしていてしょっちゅう出張しているそうです」
光雄「母親は?」
沙理香「離婚して、実家に戻ってるみたい」
光雄「育児放棄か?」
沙理香「そうじゃなくて。親権は、父親のほうにあるんです。母親とは、年二回の面会交流しか認められていないそうです」
  二人の前に行く麗次。
麗次「じゃあ、あの子ずっとぼっちか・・・」
光雄「おい、何でそれを先に言わんかったんや」
沙理香「私もさっき三木さんから聞いたところなんです。最初は、とりあえず子供を捜せって言われただけだったし・・・」
麗次「バグルのやつ、今度は何を狙ってるんだろ」
  光雄、何も言わず部屋を出て行く。
麗次「みっさん・・・」
  扉の閉まる音が響く。
沙理香「怒りすぎたかな・・・」
麗次「そんなことで凹む人じゃないでしょ」

○ 笹松コーポ・駐車場
  1981年型の黒いジムニーが車道に出て走り出す。

○ ジムニー車内
  運転している光雄。
  息子の裕司のことが頭をよぎる。

○ 光雄の幻想
  湖岸の砂浜。水着姿の光雄と裕司(4)がビーチボールで遊んでいる。
  砂浜の砂の上に座っている光雄の元妻・磯山京子(36)。
  カメラを構え、二人の写真を撮っている。
  ボールを投げる光雄。
  ボールが裕司の頭上を越え、水面に落ちる。
  ボールを取りに行く裕司。突然、深みにはまり、水の中に沈む。
  驚愕する光雄。
  なぜか楽しそうに笑っている京子。
  必死に走る光雄。湖に飛び込む。
  水の中に潜るが、裕司は見つからない。
  水から顔を出す光雄。京子の顔を見つめる。
  へらへら笑っている京子。
京子「あなたが悪いのよ。あなたが・・・」

○ ジムニー車内
  我に返る光雄。
  対向車線を走っている白いコルベット・スティングとぶつかりそうになる
  慌ててハンドルを切り、回避する光雄。
光雄「ああ、ちくしょー!」
  黒い雲が空を覆う。
  フロントガラスにポタポタと落ちる雨。
  やがて雨が激しくなってくる。
  ワイパーを動かす光雄。

○ 新宿・ふれあい通り
  三井ビル前の歩道を雨に濡れながら歩くシオン。
  辺りを不思議そうに見渡している。
  後方からけたたましいバイクの轟音とファンファーレが聞こえてくる。
  車道を見つめるシオン。
  横浜銀蝿の「ツッパリHIGH SCHOOL ROCK'N ROLL」が大音量で流れている。
   リーゼントにサングラス、黒い革ジャンを着た6人の男達が乗るハーレーダビッドソンと、
   シャコタンのピンクのオープンカーが走行してくる。
  シオンのかぶっていた帽子が風で吹き飛ばされる。
  シオンの緑色の髪が露になる。
  帽子は、先頭を走るバイクの男の顔面に当たる。
  派手に転倒するバイク。
  バイクから投げ出され、路面を転がる男。
  一斉に立ち止まるバイク集団。
  呆然と立ちすくむシオン。
  バイクから降りるリーゼントの男・仲島(18)。ガムを噛んでいる。
  櫛で髪をいじりながら、シオンの前に詰め寄る。
  逃げ出すシオン。
  仲島、シオンの右腕を掴む。
仲島「こら待て。兄貴が転んだの、おまえのせいだぞ」
  俯くシオン。
仲島「ガキの癖に髪なんか染めやがって。生意気なんだよ」
シオン「・・・」
仲島「さっきから何ガンつけてんだこのガキゃあ」
  オープンカーの後部席に乗っている巨漢の男・斉藤(20)。派手な茶髪のパンチパーマに剃り込みをいれている。
  隣に座るさらさらのロングヘアの女の肩に腕を回している斉藤。
  シオンをジッと見ている。
斉藤「仲島、何してんだ。さっさと行け」
仲島「あっ、はい」
斉藤「それから、さっきから冷てえんだよ。屋根つけろや」
仲島「すいません。すぐやります」
  仲島、嫌がるシオンを抱き上げる。

○ 黒い雲が消え、雨上がりの澄んだ空
  
○ 笹松コーポ2F「ナウ・ウォッチ」事務所・玄関
  電話台の上にある黒電話のベルが鳴る。
  受話器を上げる沙理香。
沙理香「もしもし。みっさん?」

○ 公園前・電話ボックス内
光雄「見つかったか?」
沙理香の声「高賀さんも探しに行ったけど連絡がないの。みっさんどこにいるの?」
光雄「外苑東通りの公園前の電話ボックス」
沙理香の声「高賀さん、秋葉付近を捜すって言ってましたよ」
光雄「秋葉好きやなあ、あいつ・・・」

○ 中央通り
  横一列に広がり、走行しているバイク集団。
  ノーヘルの者、タバコを燻らせている者、わめいている者、様々な乗り方をしている男達。
  仲島のバイクの後部席に乗せられているシオン。
  仲島の腰に両腕を回し、必死にしがみついている。
  激しく蛇行するバイク。
仲島「おらおらおら、振り落とすぞ」
  ファンファーレとエンジンの爆音がさらに激しくなる。
  
○ 甲州街道
  イチョウ並木の通り。
  縦一列に走るバイク集団とすれ違うジムニー。

○ ジムニー車内
  運転する光雄。
  迷惑そうにバイク集団を見ている。
光雄「30年後には、絶滅危惧種のくせに」
  最後尾を走るバイクを見る光雄。バイクの後ろに子供が乗っている。
  暫くして、子供がシオンだと気づく光雄。
  慌ててハンドルを回す。

○ 甲州街道
  Uターンして、バイクの後を追うジムニー。

○ ドライブイン、ゲームセンター
  店前に立ち止まるバイク集団と屋根のついたオープンカー。
  一斉にバイクから降りる男達。店の中に入って行く。
  シオン、バイクから降りる。
  シオンの前に立つ仲島。
仲島「おまえんち、どこ?」
シオン「・・・」
仲島「口ついてねえのか?唇縫ったろか?」
  二人の前を白いドレスを着た細身の女が通り過ぎる。
  女の顔を食い入るように見つめる男。
仲島「うっほ、ハクい姉ちゃん」
  男、ふらふらと女のケツを追いかけて行く。
  逃げ出すシオン。歩道を走る。
  シオンのそばに立ち止まるジムニー。
  怪訝にジムニーを見つめるシオン。
  優しい目でシオンを見ている光雄。

○ ジムニー車内
  走行中。
  助手席に座っているシオン。
  ハンドルを握る光雄。シオンの緑色の頭を見つめ、
光雄「それ、自分で染めたんか?」
シオン「友達にやってもらった」
光雄「友達って・・・バグルのことか?」
シオン「バグルのこと知ってるの?」
光雄「まあな。何で緑なんや」
シオン「バグルが好きな色なんだ。あそこで一緒に踊りを見てたら急にいなくなって」
光雄「なんでこの時代に?」
シオン「遠いところに行きたいってバグルに行ったらここに連れて来られたんだ」
光雄「学校に友達おらんのか?」
シオン「・・・」
光雄「学校・・・嫌いなんか?」
シオン「嫌い。勉強も嫌い」
光雄「俺も嫌いやった」
シオン「おじさん、この時代の人なの?」
光雄「俺は、2010年から来たんや。おまえは、2016年から来たんやろ?」
シオン「僕を捕まえに来たの?」
光雄「時の監視人てやつでな。バグルを探してるんや」
  シオン、俯き口を閉じる。
  目の前に見える駄菓子屋に目をつける光雄。
光雄「なあ、腹減ってないか?」

○ 駄菓子屋
  店頭前に立っている光雄とシオン。
  ショーケースに山積みにされているアイスクリーム。
  中からホームランバーを掴み出す光雄。
光雄「なついなあ、これ」
  
○ 光雄の回想
  10歳の光雄。丸刈りで巨人の野球帽をかぶり、ランニングシャツに半ズボン姿。
  駄菓子屋の前でおいしそうにホームランバーをなめている。

○ 駄菓子屋
  シオンの後ろに野球帽をかぶった三人の男児達がプロ野球カードを見せ合いしている。
小学生A「それなに」
小学生B「原。おまえは?」
小学生C「うわっまた江夏。かぶった」
小学生A「次、絶対福本出すから」
小学生C「掛布出たら、江夏と交換して」
小学生A「いや」
  小学生A、店主の叔母さんに30円渡し、プロ野球チップスのカードの袋を開ける。
  中から取り出したカードを見て、思わず大声を上げる。
小学生A「はずれ」
小学生B「誰?」
小学生A「門田。そっちは?」
  小学生B、袋からカードを出す。
小学生B「中畑」
小学生A「おおおー」
小学生C「江夏と交換して!」
  シオン、三人の様子をまじまじと見ている。

○ 公園
  ベンチに座る光雄とシオン。
  ホームランバーをなめているシオン。
  光雄は食べ終わっている。
光雄「この年のホームラン王は誰やったっけな・・・」
シオン「ここいつの時代なの?」
光雄「1981年」
シオン「僕が生まれるずっと前の時代なの?」
光雄「ちょうど俺がおまえの歳ぐらいやった頃や」
シオン「じゃあ、この時代のおじさんは、10歳なの?」
光雄「そう、バリバリの野球少年」
シオン「どこのファン?」
光雄「そら、もちろん巨人」
シオン「おじさん、大阪の人でしょ?」
光雄「大阪人かて巨人ファンぐらいおるがな。って、なんでわかったんや?」
シオン「その言葉遣い」
光雄「あっ」
シオン「おとうさん、子供の時大阪に住んでたから」
光雄「大阪の人なんか。話合いそうやな。大阪に行ったことあるか?」
シオン「ない。興味ないし」
光雄「通天閣とUSJぐらいしかないもんな」
シオン「USJって何?」
光雄「知らんのか」
  頷くシオン。
光雄「まあ、アメリカの遊園地みたいなもんや」
シオン「遊園地って楽しい?」
光雄「行ったことないんか?」
シオン「うん」
  気の毒そうな表情をする光雄。

○ 笹松コーポ2F「ナウ・ウォッチ」事務所・リビング
  ラジオつきのパタパタ時計が「PM3:21」を表示している。
  玄関のドアが閉まる音。
  とぼとぼと部屋に入ってくる麗次。
  突然、奥の部屋から沙理香の歓喜の声が響き渡る。
沙理香「やったあああああ」
  驚愕する麗次。
  嬉しそうに麗次の前を通り過ぎてく沙理香。
沙理香「みっさん探してきます」
麗次「どうしたの、むっちゃ楽しそうだけど・・・」
  立ち止まり、麗次と顔を合わす沙理香。
沙理香「受かったんですよ」
麗次「大学の試験にでも合格したの?」
沙理香「車の運転免許。元の時代に戻って教習所に通ってたんです。ストレート一発合格」
麗次「おおお・・・おめでとう」
沙理香「みっさんがここに連絡してくるかもしれないから、留守番しててください」
麗次「何で行くの?」
沙理香「スクーター」
麗次「車じゃないの?」
沙理香「最初から車だと緊張するから、手鳴らしにバイクで」
麗次「何買ったの? 」
沙理香「ヤマハのパセッタ!」
  ルンルン気分で部屋を出て行く沙理香。

○ 市道
  交通量の激しい通りを走っているジムニー。

○ ジムニー車内
  ハンドルを握る光雄。
  助手席に座るシオン。
光雄「思い出した。山本や」
シオン「誰?」
光雄「81年のホームラン王。広島の選手やった」
シオン「ふーん」
光雄「おまえ、野球興味あるんか?」
シオン「ちょっとだけ」
光雄「どこのファン?」
シオン「阪神」
光雄「学校で野球するんか?」
シオン「僕のクラスの男子は、サッカーしかしないし。今イメージ悪いもん」
光雄「イメージ悪いって?」
シオン「賭博問題とか覚せい剤とか。テレビは毎日そんな話題ばかり」
光雄「ほんまかいな」
シオン「この時代はどうなの?」
光雄「そりゃもう大、大人気の絶好調。テレビ中継も移動日以外は毎日延長してやっとるわ」
シオン「へー。この時代の子供は、他にどんなことして遊んでたの?」
光雄「べったん、駒回し、ラジコン、ルービックキューブ・・・」
シオン「ゲームは?」
光雄「ゲームウォッチがあったな」
シオン「ゲームウォッチ?」

○ 商店街通り・玩具店
  寺尾聰『ルビーの指環』が流れている。
  店頭のショーケースの前に立っているシオン。
  ショーケースに置かれているゲームウォッチを見つめている。
シオン「PSPじゃん」
  シオンの背後に近づく光雄。いきなりシオンの頭に阪神の野球帽をかぶせる。
光雄「おまえの頭目立つから。これかぶっとけ」
  シオン、店内に入り、他の玩具を見回している。
  ボードゲーム、模型、ルービックキュー ブ、レゴブロック・・・。
  新幹線がレールの上を走り回るプラレール。
  超合金売り場。
  ゴールドライタンを珍しそうに見ているシオン。
  光雄、シオンの様子を見ている。
  カウンターにいる店員のおじさんに話しかける光雄。
光雄「(ゴールドライタンを顎で差し)おっちゃん、あれ一つ、ちょうだい」
店員「あれって?」
光雄「ゴールドライタン」
店員「あーあ、はいはい」
光雄「プレゼント用に包んで」
  店員、シオンを一目見て、
店員「お子さんのお誕生日ですか?」
  光雄、照れ臭そうに、
光雄「まあ、そんなもんや・・・」

○ 商店街
  歩いている光雄とシオン。
  ビニール本の自販機の前に立ち止まるシオン。興味深げに見ている。
光雄「こらっ、マセガキ・・・」
  光雄、慌ててシオンの両目を手で隠す。
  向かいのパチンコ店の前に立っている看板を見る光雄。
  「ノーパン喫茶この先100m」と書かれた看板がある。
  光雄、興味深げに見ている。
   ×  ×  ×
  商店街の中を歩く光雄とシオン。
  若いカップルが肩を抱き合いながら歩いている。
  男が持っていた煙草をポイ捨てする。
  シオンの目の前に煙草が落ちる。
  辺りを見回すシオン。
  周りを歩く男達がみんな煙草を吸っているのに気づく。
  光雄、煙草を吸いながら歩くサラリーマンを羨ましそうに見ている。
  光雄の様子を窺うシオン。

○ 小学校前
  歩道を歩いている光雄とシオン。
  校舎から笛の音が聞こえてくる。
  立ち止まり、音がする方角を見ているシオン。
  足を止める光雄。
光雄「どうした?」
シオン「別に・・・」

○ 河川敷
  叢に座っているシオン。
  光雄、その場に寝そべっている。
  向こう岸のグラウンドで子供達が野球をしている。
  それをジッと見ているシオン。
光雄「そろそろこの時代飽きたか?」
シオン「・・・」
光雄「おまえが生きている時代のほうが遥かに便利な世の中やろ?」
シオン「バグルに会いたい・・・」
光雄「バグルはな。おまえが思っているようなええ奴やないんや」
  光雄、ジージャンのポケットから煙草を取り出す。中に一本もないことに気づき、パッケージをぐしゃぐしゃに丸めて捨てる。
光雄「あいつはな、いろんな時代で人に迷惑をかけてきたんや。おまえが友達と思ってても、いつか裏切られるぞ」
  光雄、ジージャンのポケットをまさぐり、
光雄「そやそや、おまえに渡すもんが・・・」
シオン「買ってくるよ」
光雄「えっ?」
シオン「煙草・・・」
光雄「変なところで気が利くな」
シオン「パパがヘビースモーカーなんだ。小さい頃、よく頼まれてタバコ屋まで買いに行ってた」
光雄「それ、俺たちの時代じゃまずい行動やろ」
シオン「コンビニで買ってたし。携帯のパパの写真見せて、了解をもらってたんだ」
光雄「そんなのありなんか・・・」
シオン「セブンスターでいいの?」
光雄「悪いな。店わかるんか?」
シオン「裏手にタバコ屋さんあったし。今の時代なら子供でも平気で買えるでしょ」
光雄「まあな」
  光雄、500円札をシオンに手渡す。
シオン「なにこれ?」
光雄「この時代の500円や」
  シオン、珍しそうに500円札を見る。

○ タバコ屋
  店の前に駆け寄ってくるシオン。
  ジュースの自販機の前に野球帽をかぶった少年(バグル)が立っている。
  バグルの後ろを横切るシオン。
バグル「楽しいかい」
  立ち止まるシオン。バグルの顔を見ると、嬉しそうな顔をする。
シオン「バグル・・・」
バグル「右手をグーにして」
  シオン、右手を力強く握る。
  バグル、握っていた右手の拳を開く。手のひらに一枚の野球のメダルを乗せている。
  マジシャンのように、一瞬でメダルを消す。 
バグル「手を開いて」
  右手を開くシオン。手のひらにメダルが乗っている。
バグル「僕達の友情の証。君にあげるよ」
  笑みを浮かべるシオン。

○ 荒川沿い・河川敷
  叢に寝そべる光雄。
  ハッと起き上がり、辺りを見回す。
光雄「遅いな、あいつ・・・」
  こちらに向かって走ってくるシオン。
  光雄、笑顔になる。
  光雄の前に立つシオン。煙草を渡す。
光雄「サンキュー。お釣りはやるよ」
シオン「いいよ。この時代には、僕の欲しいものはないし」
  シオン、ズボンのポケットからお釣りを出す。
  その時、一枚の銀色のメダルが落ちる。
  メダルを拾う光雄。
光雄「なんやこれ?」
  シオン、光雄からメダルを取り返す。
シオン「僕の大事なものなんだ」
  お釣を光雄に手渡すシオン。
光雄「なあ。おまえまだ遊園地行ったことないって言ってたよな」
  頷くシオン。
光雄「今から、行こうや」
  立ち上がる光雄。
  シオンの手を掴み、歩き出す。

○ 市道
  交通量の少ない緩いカーブ。
  一台の赤いスクーターが通り過ぎる。
  ハーフタイプのヘルメットをかぶった沙理香が乗っている。
  楽しそうに口笛を吹いている。

○ 公園前
  電話ボックスの前に立ち止まる沙理香のスクーター。
  スクーターから降り、電話ボックスに駆け込む沙理香。

○ 笹松コーポ2F「ナウ・ウォッチ」事務所・玄関
  玄関にある黒電話が鳴り響く。
  受話器を上げる麗次。
麗次「もしもし」
沙理香の声「みっさんは?」
麗次「まだ戻ってきてない」
沙理香の声「みっさんが行きそうな所探したんですけど、全然見つからなくて」
麗次「事故にでもあったのかな・・・」
沙理香の声「事故?」
麗次「あの人走り屋だから。スピード出し過ぎて、ガードレールに激突したとか、海に落ちたとかさ・・・」

○ 公園前・電話ボックス
  受話器を持つ沙理香。
沙理香「考えすぎですよ」
  遠くから救急車のサイレンが聞こえてくる。
  不安げな表情を浮かべる沙理香。
沙理香「後でまた・・・」
  受話器を置き、慌ててボックスを出る沙理香。

○ 笹松コーポ2F「ナウ・ウォッチ」事務所・玄関
麗次「沙理香ちゃん?」

○ 国道
  片側二車線の左側のレーンを走っているジムニー。

○ ジムニー車内
  ハンドルを握る光雄。
  助手席に座るシオン。
  光雄、前を指差し、
光雄「あれや」
  光雄の指差した方向を見つめるシオン。
  フロントガラス越しに後楽園遊園地が見える。
  動き回るジェットコースターを悲しそうに見ているシオン。
  シオンの表情を見つめる光雄。
光雄「なんやその顔・・・」
シオン「やっぱりいいや」
光雄「なんで?」
シオン「一人で乗ってもつまんないし」
光雄「俺も乗るがな」
シオン「えっ?」

○ 後楽園遊園地
  ステージで「太陽戦隊サンバルカン」のヒーローショーが行われている。
  サンバルカンが怪人と戦う様子を見ている大勢の子供達。
  ジェットコースターに乗る光雄とシオン。
  万歳のポーズで嬉しそうな光雄とは対称的に、シオンは、ムスッとしている。

○ 後楽園タワー・展望台
  隣に見える後楽園球場の様子を覗いている光雄。
光雄「今は試合やってないな」
  光雄の隣に立つシオン。球場のスコアボードを見ている。
光雄「あそこで半年ぐらい前にピンク・レディの解散コンサートがあったんや」
シオン「ピンクレディ?」
光雄「知るわけないか。二人組の女の子のアイドルなんやけど、おまえの時代で言うところのモモクロみたいな感じか」
シオン「モモクロは五人組だよ」
  シオン、後楽園球場の観覧席を眺める。
  バックネット裏の一番高い場所の席に、野球帽をかぶった少年(バグル)が座っている。
  少年、シオンを見ている。
  シオン、笑みを浮かべ、手を振る。
  バグル、望遠レンズつきのカメラを構える。
  展望台にいるシオンと光雄にレンズを向け、シャッターを切る。
光雄「そう言えば、お前の時代には、二人組のアイドルっておらんよな」
  慌てて振っていた手を下げるシオン。
シオン「この時代は多かったの?」
光雄「あみん・・・は、まだデビューしてないし、ベイブ・・・ウインクもまだやな。ごめん、この時代もそんなにおらんかったわ」
シオン「オニャン子がいたでしょ」
光雄「オニャン子はもうちょっと後やぞ。って、おまえなんでオニャン子知ってるんや」
シオン「前にユーチューブで見た」
光雄「顔に似合わず、アイドルオタか?」
シオン「違うよ。たまたま見ただけ」
光雄「ほんまか?」
シオン「ほんまや」

○ 笹松コーポ2F「ナウ・ウォッチ」事務所・リビング
  田原俊彦が表紙のアイドル雑誌「ザ・ベストワン」を開いて顔にかぶり、ソファで寝ている麗次。
  暫くして、電話が鳴る。
  ハッと起き上がる麗次。
  大きな欠伸をしながら、玄関に向かう麗次。

○ 後楽園遊園地・売店前
  公衆電話の前にいる光雄。
  受話器を持ち話している。
光雄「俺や」
麗次の声「みっさん。どこにいるんですか?」
光雄「後楽園遊園地。大丈夫。あいつと一緒や」

○ 笹松コーポ2F「ナウ・ウォッチ」事務所・玄関
光雄の声「晩飯食ったらそっちに戻るわ」
  腹を抑える麗次。
麗次「僕、夕飯まだなんですよ・・・」
光雄の声「帰りに弁当買って来たるわ。幕の内でええか?」
麗次「もみじまんじゅうううう!!」
光雄の声「あのな・・・」

○ 後楽園遊園地・売店前
  受話器を置く光雄。周囲を見回す。
  シオンがいないことに気づき、慌てて辺りを探し始める。

○ 笹松コーポ2F「ナウ・ウォッチ」事務所・キッチン
  冷蔵庫を開ける麗次。
  中は見事にスッカラカン。
麗次「沙理香ちゃん今日買い出しに行かなかったのか・・・」
  ため息をつき、冷蔵庫を閉める麗次。
  また、電話が鳴る。
  慌てて駆け出す麗次。

○ 病院前・公衆電話
  受話器を持って立っている沙理香。
沙理香「三カ所ぐらい病院回ったんですけど、みっさんが運ばれた形跡はありませんでした」
麗次の声「マジで病院行ってたの?」
沙理香「救急車の音を聞いたら、そわそわしてきてつい・・・」
麗次の声「みっさんは、後楽園遊園地にいるよ」
沙理香「本当ですか?」
麗次の声「シオン君と遊んでたみたい」
沙理香「えーっ!」

○ 笹松コーポ2F「ナウ・ウォッチ」事務所・玄関
  黒電話の受話器を持つ麗次。
沙理香の声「わかりました。すぐに戻ります」
  電話が切れる。
  ため息をつく麗次。

○ 春日通り
  走行している黒いジムニー。

○ ジムニー車内
  運転している光雄。
  不安げな表情で辺りを見回している。
  光雄の脳裏に、京子の声がフラッシュバックする。
京子の声「何やってるのよ!」

○ 光雄の回想
  湖岸の砂浜。
  向かい合う水着姿の京子と光雄。
  京子の隣に立つ裕司。指をくわえ、光雄をジッと見ている
京子「この子が溺れて死んでたら、どうするつもりだったの?」
光雄「すまん・・・」
京子「すまんて。ほんと、がさつなんだから」
光雄「済んだことをそんなにねちねち言わんでも・・・」
  うんざりした表情の京子。
京子「やっぱり自分の子供より、車いじりのほうが楽しいのね」
光雄「またそれか。おまえだって韓流スターにのめり込んで、裕司ほったらかしにして追っかけしとるやないか」
京子「そんなの今関係ないでしょ」
光雄「追っかけしてる間、俺がいつも面倒見てるやろ」
京子「当たり前でしょ父親なんだから。車を扱うみたいに、この子ももっと大事に扱ってよ」
光雄「やってるやないか」
京子「どうせ、この子と遊んでる時もずっと車のこと考えてるんでしょ?」
  光雄、京子の頬を叩く。
  悔しげな表情で光雄を睨み付ける京子。
京子「またぶった・・・」
  光雄、手を下ろし、俯く。
  京子、裕司と手をつなぎ、光雄の前から立ち去る。
    ×  ×  ×
  数日後。
  光雄の自宅のキッチン。
  テーブルの椅子に腰掛けている光雄。呆然と天井を見ている。
  テーブルの上に置かれた離婚届・・・。

○ ジムニー車内
  必死の形相の光雄。
光雄(N)「もう失敗はあかん。絶対あかん」

○ 土手沿いの道
  加速しながら走るジムニー。
  突然、急ブレーキで立ち止まる。
  運転席の窓を開け、川の向こう側に見えるグラウンドを見つめる光雄。
  グラウンドで子供たちが野球をしている。
  バッターボックスに立ち、バットを構えているシオン。
  シオンを見つめる光雄。
  ため息をつき、安堵の表情を浮かべる。

○ 河川敷・グラウンド
  広島の帽子を被ったピッチャーの男の子。
  勢い良くボールを投げる。
  バットを振るシオン。おもいきり空振り。
  気を取り直して、もう一度バットを構えるシオン。
  第二球。バットを振るシオン。また空振り。
  シオン、自信なさげに苦虫を噛む。
  遠くから男の大声が聞こえてくる。
光雄の声「どんまい!」
  声のほうに顔を向けるシオン。
  土手の階段に立っている光雄。
光雄「勝負は、三球目や!」
  シオン、満を持してバットを構える。
  第三球を投げるピッチャー。
  シオン、大きくバットを振り上げる。
  「カコン」と大きな音が鳴り響き、ボールが空高く舞い上がる。
  一塁に向かって走り出すシオン。
光雄「行け!全速力や!」
  走るシオン。
  三塁側を弾むボール。外野手がボールを拾い、素早く一塁手に送る。
  シオン、ベースに足を踏み入れようとした瞬間にタッチされる。
  悔しげに地団駄を踏む光雄。
    ×  ×  ×
  時間経過。
  スコアボードが点数で埋め尽くされる。
  「ホワイトドラゴンズ 0 ブラックピューマーズ 1」
  試合終了。
  シオン、楽しそうに子供達と握手している。
  シオンに歩み寄る光雄。
光雄「急にいなくなったから焦ったで」
  光雄と気まずそうに顔を合わすシオン。
光雄「おまえが打てば同点やったのに。残念やったな」
シオン「僕・・・この時代にいたい」
光雄「・・・ほんまにそれでええんか?」
シオン「うん」
光雄「この時代、そんなに楽しいか?」
シオン「友達もできたし、野球もできる」
光雄「学校どうするんや」
シオン「心配ないよ。ちゃんと通うから」
光雄「どうやって?」
シオン「何とかしてくれるって。バグルが」
光雄「何回も言うけど、あいつを信じたらろくなことにならんぞ」
シオン「僕は信じる」
  光雄から離れ、土手の階段を駆け上がるシオン。
  シオンの後を追う光雄。

○ ロング・ジョン・シルバー・店内
  全てのテーブル席が客で埋め尽くされている。
  窓側のテーブルに座る光雄とシオン。
  揚げたてのチキンに噛り付いている光雄。
  シオン、テーブルにあるハンバーガーに手をつけず、寡黙に俯いたまま。
光雄「食欲ないんか?」
シオン「ちょっとね」
光雄「おまえ、バグルとどんな話したんや」
シオン「野球とか、ゲームとか、メダルとか」
光雄「あいつも野球好きなんか」
シオン「あんな良い奴を何で捕まえるの?」
光雄「俺達がいなかったら、おまえ今頃この時代にほったらかしにされて、犯罪に利用されてたかもしれんのやぞ」
シオン「犯罪?」
光雄「自分のコレクションを集めるために、未来の人間を利用するんや」
シオン「バグルはまだ子供だよ?」
光雄「あいつは、大人や」
シオン「嘘だ」
  光雄、革ジャンの内ポケットから写真を出し、シオンの前に置く。
光雄「別の時代で撮ったバグルの写真や。見てみろ立派な大人やろ」
  写真をジッと見ているシオン。
シオン「バグルじゃないよ、こんなの」
光雄「あいつは、変幻自在なんや。普通の人間やないから騙されるのも無理はないけどな」
  うな垂れているシオン。
光雄「それより、今度俺とキャッチボールせえへんか?」
  突然、立ち上がるシオン。
シオン「トイレ行ってくる」
光雄「じゃあ俺も」
シオン「僕のこと信じてないの?」
光雄「・・・」
  シオン、トイレのある方向へ歩き出す。
  シオンの様子を心配げに見ている光雄。
  光雄の後方で女の声が聞こえる。
沙理香「それおいしいですか?」
  光雄の隣に座る沙理香。
光雄「沙理香ちゃん。なんでここに?」
沙理香「麗次さんから聞きました。もうちゃんと連絡してくださいよ」
光雄「すんまへん」
  沙理香、揚げ玉をポリポリ食べている。
沙理香「かりっとして結構いけますね。あれ、シオンくんは?」
光雄「トイレ」
沙理香「いいんですか?目を離して」
  揚げ玉にやみつきになる沙理香。
光雄「沙理香ちゃん、ちょっと見てきてくれへん?」
沙理香「私に男子トイレに入れって言うんですか?」
光雄「俺が言ったら、また何言われるかわからんし」
  沙理香、フライに噛り付きながら、
沙理香「勘弁してくださいよ」
光雄「俺のフライとポテトあげるから」
沙理香「このセット、もう一つ注文していい?」
  呆気にとられる光雄。

○ 同・男子トイレ内
  大便用のブースの中に入るシオン。
  ブースの中に野球帽をかぶった子供(バグル)がいる。
バグル「僕の頼み、聞いてくれるのかい?」
  頷くシオン。
バグル「じゃあ行こう」
シオン「表に君を捕まえようとしている奴がいるよ」
バグル「知ってる。しつこい奴らだ」
  バグル、ランドセルの中から、野球ボールを取り出す。
  野球ボールが突然緑色に光り、不思議な音色を奏で始める。
  シオン、光を見て、うとうとと昏睡し始める。

○ 同・男子トイレ前
  男子トイレの前に立っている沙理香。
  客のサラリーマン風の男が怪訝な表情で沙理香の前を通り、トイレに入る。
  恥ずかしそうに顔を俯ける沙理香。
沙理香「もう最悪」
  男子トイレから中学生ぐらいの少年が出てくる。
  少年に声をかける沙理香。
沙理香「あの・・・」
  立ち止まる少年。
沙理香「小学生4年生くらいの子なんだけど・・・中にいなかった?」
少年「一人しか見なかったけど」
沙理香「だ、だ、だ・・・」
少年「ああ、大きいほうもね」
  沙理香、慌てて男子トイレに駆け込む。

○ 同・男子トイレ内
  大便ブースを手前から順番に確認していく沙理香。
  小便器の前に立ち、小便中のサラリーマン風の男。驚いた表情で沙理香の様子を見ている。

○ 笹松コーポ2F「ナウ・ウォッチ」事務所
  テレビの画面。
  相撲のニュース。千代の富士と北の湖の取組みの映像が流れている。
  激しい押し合いの後、寄り切りで千代の富士の優勝。
  大盛況の場内。
  チャンネルが切り換わる。
  歌番組で河合奈保子が「スマイル・フォー・ミー」を歌っている。
  ソファに座り、足の爪を切っている麗次。
  黒電話が鳴り響く。
  音にびっくりして、親指の爪を切り過ぎてしまう麗次。
麗次「いてっ」

○ 同・玄関
  受話器を上げる麗次。
麗次「はい」
沙理香の声「またシオン君いなくなったの」
麗次「えっ?」
沙理香の声「トイレに行くって言って消えたの。高賀さんも探すの手伝って」
麗次「ムテキング見てからでもいいかな?」
沙理香の声「・・・」
麗次「すぐ行く・・・」

○ 東京・銀座4丁目交差点
  和光ビルの時計台の針が6時1分を指している。
  交差点の雑踏の中を歩いているシオン。
  意を決した硬い表情をしている。

○ 地下通り・コイン専門店
  店の前で立ち止まるシオン。
  店の中をジッと見た後、また歩き出す。

○ コイン専門店
  店内のラジオからゴダイゴの「ポートピア」の歌が流れている。
  ショーケースの前に立つシオン。
  ケースに中に置かれている「ポートピア81 記念メダル」を見ている。
  店員の中年の男がシオンの前にやってくる。
店員「何探してるの坊や」
 シオン、メダルを指差し、
シオン「これ・・・」
店員「ああ、それ欲しいの?」
  頷くシオン。

○ 荒川・土手の道(夕方)
  沈む夕陽。空一面オレンジ色に覆われている。
  土手に集まる麗次、沙理香、光雄。
麗次「何でここに呼んだの?」
光雄「あいつ、さっきまでここで野球しとったんや」
沙理香「野球?一人で?」
光雄「この時代の野球少年達と・・・」
麗次「いきなり野球チームに入れるなんて。わりとコミュ力ある子なんですね」
光雄「バグルの魔法や」
沙理香「つまり、バグルが野球少年達にマインドコントロールを?」
光雄「それしか考えられん」
麗次「今度のバグルの狙いは、野球に関係することなんじゃ・・・」
沙理香「中畑とか、原のサインですか?」
  光雄、ハッと閃く。
光雄「メダルや・・・」
麗次「メダル?」
光雄「あの子メダルを大事そうに持っとった。バグルとメダルの話したって言うてたしな」
沙理香「ということは、この時代で希少価値の高いメダルを狙っているんですね」
麗次「希少価値が高いものって何?」
光雄「沙里香ちゃん。この辺でメダル売ってる店わかるか?」
沙理香「私メダルコレクターじゃないし」
麗次「電話ボックスにある電話帳に載ってるかも」
沙理香「それしかないですね」
光雄「虱潰しに当たるしかないな」
麗次「ああもう腹減ってるのに・・・」
  三人、それぞれ違う方向へ走り出す。

○ 公園前・電話ボックス
  電話帳を開いている麗次。
  コイン販売店の電話番号を発見し、電話をかける。

○ ビジネス街・電話ボックス
  ビル前に3台並んでいる。
  真ん中のボックスの中にいる沙理香。
  電話帳を開いている。
  外で待っているサラリーマンがいる。
  サラリーマン、イラつきながらドアをノックする。
  沙理香、気にせず、電話帳に見入っている。

○ 東京・銀座4丁目交差点(夜)
  雑踏の中を必死に走っているシオン。
  右手にメダルケースを握っている。

○ 渋谷駅前・繁華街
  看板や街灯がライトアップされた街。
  若者達で溢れている。
  コイン取扱い店の前で、店員と話している麗次。
  話し終わると一礼し、走り出す。

○ ホットドック店前
  店でホットドックを買う麗次。
  ホットドックを齧りながら、雑踏の中を潜り抜けている。
  学校帰りのセーラー服の女子高生と肩をぶつける。
  女子高生、飲んでいたゲータレードの缶を落とす。
  頭を下げる麗次。
麗次「すいません」
女子高生「どうしてくれるのよ」

○ 自販機前
  緑色の自販機の前に立つ麗次と女子高生。
  自販機のボタンを押す麗次。
  ゲータレードの缶を取り出し、女子高生に手渡す麗次。
麗次「ごめんね」
女子高生「気をつけてよ」
  缶の蓋を開け、飲み始める女子高生。
麗次「あのさ、阪神の野球帽かぶった男の子見なかった?」
  
○ 原宿駅前・歩道橋
  走っている光雄。
  遠くから救急車のサイレンが鳴り響く。
  立ち止まる光雄。
  こちらに向かってくる救急車をジッと見ている。
  歩道橋の下を潜り、走り去っていく救急車。
  光雄の脳裏に、京子のフレーズがフラッシュバックする。
京子の声「あなたが悪いのよ。あなたが・・・」
  我に返り、また走り出す光雄。

○ 有楽町駅周辺
  解体工事中の日劇の前を駆けている沙理香。
  
○ 小学校前
  校門の前に立っているシオン。
  校舎をずっと眺めている。
  派手なファンファーレが鳴り響く。
  バイクに乗った暴走族の集団がシオンの前にやってくる。
  一斉に立ち止まる集団。
  仲島がシオンの前に近づく。
仲島「おまえ・・・昼間に会ったガキか?」
  慌てて逃げ出すシオン。
  シオンの腕を掴む仲島。
仲島「逃がすか、こら」
  不適な笑みを浮かべる仲島。

○ 小学校校舎・屋上
  暗闇にぽつんと立つ人影。
  赤い野球帽をかぶった少年(バグル)がいる。
  シオンが男達に連れて行かれている様子を見ている。

○ 秋葉原
  雑居ビルの階段降り、外に出てくる光雄。
  雑踏の中を走り出す。
  目の前にいた少年とぶつかる光雄。
  倒れる少年。
  光雄、慌てて少年を抱き起こす。
光雄「ごめんな。急いでたもんやから・・・」
  光雄、少年の顔を見つめる。
  少年はバグル。光雄は、気づいていない。
バグル「僕と同じぐらいの子供を捜してるんでしょ?おじさん」
光雄「なんで知ってるんや」
バグル「頼まれたんだ。この写真を見せられて」
  バグル、光雄に写真を見せる。
  後楽園遊園地の展望台にいる光雄とシオンのツーショットが映っている。
光雄「誰がこんな写真を・・・」
バグル「その子、暴走族に連れて行かれたよ」
光雄「ほんまか?どこに行ったかわかるか?」
バグル「六本木のほう」
光雄「おおきに」
  バグルに背を向け、走り出す光雄。
  ふと立ち止まり、振り返る。
  バグルの姿は、消えている。
  呆然としている光雄。

○ 都道319号線
  道幅一杯横一列に広がり、走っている暴走族の集団。
  仲島のバイクの後ろにまたがっているシオン。
  仲島、ファンファーレを鳴らしながら、バイクを激しく蛇行させる。
  仲島の腰を必死に握り締めているシオン。

○ 檜町公園
  公園前に立ち止まる暴走族の集団。
  一斉にバイクや車から降りている。
  仲島に捕まれ、バイクから降ろされるシオン。
  騒ぎながらぞろぞろと公園内に入っていく集団。
  そのうちの三人がはぐれて、池の前のベンチでいちゃついていたアベックを取り囲み、からかっている。
  煙草をふかしながらす缶ビールを飲んでいる斉藤。
  斉藤の前にシオンを連れて行く仲島。
仲島「ボスだ。ちゃんと挨拶しろ」
  シオン、俯いたままジッとしている。
  シオンの顔に向けて煙草の煙を吐く斉藤。
  むせるシオン。
  斉藤、シオンの野球帽を掴み取る。
  シオンの緑色の髪が露になる。
斉藤「おまえ、ガキの癖にすげえ頭してるじゃねーか」
シオン「僕の時代じゃ普通」
斉藤「僕の時代?お前何時代から来たんだ?」
仲島「21世紀からやってきたぼくドラえもん!・・・みたいなこと言い出すんじゃねえだろうな?」
  けたたましく笑い出す斉藤と仲島。
  シオンの髪をいじる斉藤。
斉藤「でも、この髪色、見たことないな。どこの美容院でやってもらった?」
シオン「自分でやった」
仲島「お前小学生だろ?こんな頭して学校に通ってるのかよ」
シオン「学校は行ってない」
仲島「登校拒否児ですよ、こいつ」
斉藤「おまえ、タイガースのファンか?」
  シオン、俯いたまま。
斉藤「俺もタイガースファン。ダチが掛布と知り合いでな。一杯サイン持ってる。欲しいか?」
  シオン、首を横に振る。
  突然、パワフルに缶ビールを握り潰す斉藤。
  シオン、それを見て少したじろぐ。
斉藤「なあ。俺達の仲間になれよ」
  驚く仲島。
仲島「酔ってるんですか?斉藤さん」
斉藤「酔ってねえよ。その歳で髪染めるなんて、中々見上げた根性だ。気に入った」
シオン「僕の友達は・・・」
  逃げ出すシオン。しかし、別の男達がシオンの前に立ち、進路を阻む。
  仲島がシオンを取り押さえようとする。
  シオン、仲島の手を噛み、反対方向へ走り始める。
  池沿いの通路を必死で駆けるシオン。
  仲島と複数の男達がシオンを追いかける。
  転倒するシオン。
  素早く起き上がる。左膝をすりむいている。
  後ろを見るシオン。仲島達が迫ってくる。
  シオンが諦めかけたその時、男がシオンの前に立つ。
  男は、光雄。
  光雄の前にやってくる仲島達。
仲島「おっさん邪魔。そこどけ」
光雄「そうはいかん」
仲島「ええ歳こいて、俺達にやられに来たのか?」
光雄「この子はな・・・俺の息子や」
  愕然とするシオン。
仲島「おっさんの子供か。あんな目立つ頭させて、子供にどういう教育してんだよ」
光雄「おまえらが人の教育を言えた義理か?鏡で自分の姿見てみい。親が泣いとるぞ」
仲島「今の一言、カチンと来た。おまえら、本気でやっちまうぞこいつ」
  仲島の周りにいた男達がパイプやチェーンを振り回す。
  シオンを立ち上がらせる光雄。
光雄「全くお気楽な時代やで。でもな、お前らの野蛮さなんてかわいいもんや」
  ライダースーツのポケットから、折りたたみナイフを出す仲島。
仲島「このおっさん、二度と立てんようにしてやれ」
  光雄に詰め寄る仲島達。
  その時、白い煙が仲島達にふりかかる。
  煙に包まれ、白い粉まみれになる男達。
  光雄達のそばに立つ麗次。
  消火器を仲島達に噴きかけている。
  光雄の腕を掴む沙理香。
沙理香「みっさん、今のうちに早く」
  光雄、シオンと手をつなぎ走り出す。
  シオン、光雄を父親のような眼差しで見ながら走っている。
  その後を追う沙理香。消火器を捨て、麗次も後を追う。

○ 笹松コーポ2F「ナウ・ウォッチ」事務所
  ソファに座っているシオン。
  隣のソファに腰掛ける光雄。
  隣の部屋の机の前に座っている麗次。
  キッチンでコップを洗っている沙理香。
  光雄達の様子を気にしている。
  重苦しい空気が漂う。
  口を開ける光雄。
光雄「今日は、楽しかったな」
シオン「・・・」
光雄「おまえも久々に遊びまくったやろ。竹の子族見たし、遊園地に行ったし、野球もしたし」
  シオン、硬く口を閉じている。
光雄「あんな不良どもに絡まれても堂々としてたよな。俺がお前やったら、今頃ションベンちびって誰かに泣きついてるわ」
シオン「本当は・・・」
光雄「えっ?」
シオン「怖かった」
光雄「おっさんやけど、俺も怖かったわ」
  シオン、ズボンのポケットから盗んだメダルケースを出し、テーブルに置く。
シオン「これ・・・」
  光雄、メダルケースを掴み、中身を確認する。
光雄「バグルに頼まれたんやな?」
  頷くシオン。
光雄「よし。これは、俺が責任持って店に返す」
シオン「警察に行かなくていいの?」
光雄「お前はまだ子供や。保護者は、この俺や」
シオン「ごめんなさい・・・」
  光雄、メダルケースをジージャンのポケットに入れる。
光雄「これでわかったやろ。あいつがどんな奴か」
シオン「でも、寂しそうだった。きっと僕と一緒で、他に友達がいないんだよ」
光雄「お前を探してる時、俺にお前の居所を教えてくれた少年がいたんや。あれたぶん、あいつやな」
シオン「バグルが?」
光雄「バグルは、本気でお前のことが好きやったんかもしれん」
シオン「もう一度、会えないかな」
光雄「残念やな。あいつはもうこの時代には、おらんのや」
シオン「どこに行ったの?」
光雄「さあな・・・」
シオン「帰るよ。僕の時代に・・・」
  シオンの頭をなでる光雄。
  
○ 荒川・河川敷(翌日・夜)
  夜空に綺麗な花火がいくつも広がっている。
  出店の通り。
  人で溢れ返っている。
  混雑の中を手をつないで歩いている光雄とシオン。
  シオンの髪色が黒色に戻っている。
  射的の店に立ち止まる二人。
  光雄、コルク銃を持ち、景品の的を狙う。 
  しかし、一つも当たらない。
  次にシオンが銃を持つ。
  一発で景品を倒す。
  苦笑いする光雄。
  土手の上で二人の様子を見ている麗次と 沙理香。ゆり模様の浴衣を着て団扇を仰いでいる沙理香。

○ 同・土手
麗次「なんか本当の親子みたい」
沙理香「自分の子供のこと、思い出してるんでしょうね」
麗次「でも、みっさんの子供ってまだ小さいんだろう?」
沙理香「2016年なら、もう8歳くらいになってるはず。年齢的には、あの子とそんなに変わらないでしょ」
麗次「会うつもりないのかな」
沙理香「親権は、母親にあるみたいですよ」
麗次「簡単に会えないのか。みっさんも」
沙理香「だからシオン君をあんなに・・・」
麗次「ポートピア81の記念メダルなんて、未来に行けば、すぐにネットで手に入るのに何でわざわざあの子に盗ませたんだろ」
沙理香「博覧会が開催しているこの時代のものが欲しかったんじゃないですか。高賀さんもこの時代のアイドルのレコードとか欲しいでしょ?」
麗次「そう言えばさ、バグルは、なんでみっさんにシオン君の居所を教えたんだろ」
沙理香「暴走族に捕まっちゃったから、さすがにバグルもまずいって思ったんじゃないですか」
麗次「ほんと不思議なやつだよな、バグルって」
  沙理香の浴衣をまじまじと見ている麗次。
麗次「それより、その格好、どうしたの?」
  立ち上がる沙理香。ぐるっと周り、麗次に浴衣を見せつける。
沙理香「これですか?三木さんからもらったんです」
麗次「髪型もなんか、聖子ちゃんカットみたいだし」
沙理香「この時代に合わせたんです。似合います?」
麗次「んーまあまあ」
沙理香「どういうことですか?それ」

○ 笹松コーポ2F「ナウ・ウォッチ」事務所
  隠し部屋(エレクトリップルーム)のドアの前に立つ光雄とシオン。
光雄「ここがおまえを元の時代に戻す部屋や」
シオン「おじさん」
光雄「なんや」
シオン「あの時、僕を息子だって言ってたけど、本気だったの?」
光雄「一瞬、おまえが息子のように見えたんや」
シオン「友達だよね、僕達」
光雄「そうや。親子のような友達や」
  笑みを浮かべるシオン。
  隠し部屋のドアが開く。
  不思議な虹色の光に包まれる部屋の中に導かれるように進む光雄とシオン。

○ 学校・グラウンド
  2016年3月10日。
  お昼休みの休憩時間。
  グラウンドの真ん中を陣取り、サッカーをしている男子生徒達。
  校舎の出入り口に立っているシオン。
  右手にソフトボールを持っている。
  サッカーをしている生徒達をつまらなそうに見ているシオン。
  シオンの肩を叩く子供の手。
  振り返るシオン。
  他のクラスの男子生徒がシオンに声をかける。
男子生徒「それ、野球のボール?」
  頷くシオン。
男子生徒「野球やるの?」
シオン「昨日やった」
男子生徒「キャッチボールやる?」
  シオン、嬉しそうに頷く。
  グラウンドの隅のほうで、楽しそうにキャッチボールを始めるシオンと男子生徒。

○ 笹松コーポ2F「ナウ・ウォッチ」事務所・リビング(夜)
  ソファに座りテレビを見ている麗次。
  イモ欽トリオが「ハイスクールララバイ」を歌っている。
  隣の部屋から現れる沙理香。
  ロング・ジョン・シルバーのフライやポテト、シーフードが乗る皿を持っている。
沙理香「みっさんは?」
麗次「出かけたみたい」
  パタパタ時計を見つめる沙理香。
  時間は、「PM9:35」を表示している。
  テーブルに皿を置く沙理香。
沙理香「こんな夜遅くにどこに行ったんだろ」
麗次「いつもの深夜のドライブだろ」
  麗次の横のソファに座る沙理香。
沙理香「やっぱり辛かったんでしょうね。シオン君には、何も言わなかったみたいだし」
麗次「言わなかったって何を?」
沙理香「この時代の思い出が消えちゃうこと」
麗次「そうか。シオン君、みっさんのことも忘れちゃうんだよな」
  ポテトをぱくぱくと食べ始める沙理香。
沙理香「バグルのことで三木さんから連絡が」
麗次「また移動?」
  頷く沙理香。
沙理香「今度は1988年」
麗次「ええー。2週間後のカセットビジョンの発売まで待ってくれない?」
沙理香「諦めが肝心ですね」
  麗次、皿を指差し、
麗次「なにこれ?」
沙理香「ロング・ジョン・シルバーのテイクアウト。お店で食べたら、ハマっちゃって」
  麗次もポテトをつまみ食いする。
麗次「中々ジューシー。これいけるわ」
  つぎつぎとポテトを摘む麗次。
沙理香「そのシーフード置いといてくださいよ。私のなんだから」
  麗次が座っているソファの上に、シオンがバグルからもらったメダル落ちている。

○ 首都高速
  流れる車のヘッドライト。
  緩やかなカーブを走っている光雄のジムニー。

○ ジムニー車内
  運転している光雄。
  ラジオが流れている。
  男性アナウンサーの声が聞こえる。
アナウンサーの声「東京都世田谷区にお住まいのラジオネーム・田原マッチちゃん9歳からお便り頂きました。
 『僕のお父さんは、単身赴任中で神戸に移り住み、もう半年ぐらい会っていません。会いたい時に会えるのが
 お父さんだと思うのですが、こんなに毎日会えないのなら、もうお父さんではなく、近所のおじさんをお父さんて呼ぼうかなって思っています』だって」
  女性のコメンテーターが話し出す。
女性のコメンテーターの声「知ってるおじさんならいいけど、知らないおじさんだったらやばいよね」
アナウンサーの声「知ってるおじさんみたいですよ。追伸がありますね。『ちなみに、そのおじさんは、巨人の原にそっくりで、
 毎日僕と一緒にキャッチボールをしてくれます。この前、巨人の野球帽を買ってくれました』って書いてあるわ。気前のいいおじさんなんですね」
女性のコメンテーターの声「そんなおじさんは、やめといたほうがいいよ」
アナウンサーの声「どうして?」
女性のコメンテーターの声「だって私、阪急の山森さんが好きだもん」 
  スタジオが爆笑の渦。
アナウンサーの声「なにいってんの、あんた」
  光雄、ムスッとした表情でラジオを消す。
  シオンが買ったタバコを一本くわえる。
  ポケットからジッポと間違えて、ゴールドライタンを出し、火をつけようとする。
  光雄、ゴールドライタンに気づき、それを静かに助手席のシートに置く。
  車のシガーライターで煙草に火をつける。
  窓を開け、しみじみと煙を吐く光雄。
光雄「俺も・・・同点狙うぞ」
  アクセルを踏み込む光雄。

○ 首都高速
  夜道を猛スピードで走り去って行く光雄のジムニー。

        

                                            ―THE END―


                                                      

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